おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
環境法令解説シリーズ、今日は、今年の4月1日から施行(しこう)されたばかりのプラスチック資源循環促進法について、事業者の責務、特に中小企業にとってどんな責務があるのかということを中心に、全体像をざっくりと解説をしたいと思います。
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プラスチック資源循環促進法とは何か?
プラスチック資源循環促進法とは何か?というのを簡単に説明します。「プラスチックって環境によくないよね」という認識が、最近高まってきているんですね。理由は大きく2つあって、一つは海洋プラスチックごみの問題です。海に流されていったプラスチックゴミが、海を汚すのはもちろんですが、生態系に悪影響を及ぼしているんですね。そしてもう一つは温暖化問題です。プラスチックはそもそも化石燃料(石油)でできていますし、そのため、燃やすと二酸化炭素を出します。これが温暖化に与える影響が無視できないと言われているんですね。
こうした環境負荷の問題から、アジア各国では、廃プラスチックの輸入を最近禁止するようになりました。実は私たちが出したプラスチックごみは、日本だけではなく、海外でも処理をしていたんですけれども、それもできなくなったんですよね。そういうわけで、国を挙げて、プラスチックごみの排出削減に取り組まなければならなくなりました。そうしたことを背景として、プラスチック資源循環促進法というのができました。・
プラスチック資源循環促進法の施行による中小企業の影響
では、プラスチック資源循環促進法の施行は、中小企業にとってどんな影響があるのかということですが、おおまかにはこの4点が関係します。ひとつずつ、要点だけを簡単に解説していきたいと思います。
プラスチック使用製品設計指針と認定制度
これは誰が関係するかというと、プラスチック使用製品の製造事業者等ですね。設計に関することなので、自社製品としてプラスチックを使うモノを作っている会社でしょうね。ボールペン作っているとか、鉛筆削り器を作っているとかですかね。こうした企業は、「プラスチック使用製品設計指針」にそった、製品の設計に取り組むべきとされました。といっても、これも努力義務で、強制力も罰則もないんですけどね。その代わりというわけではないでしょうが、「プラスチック使用製品設計指針」にそった設計をしている製品を国(大臣)が認定をするという制度が設けられます。今の時点、2022年の4月の時点では、認定基準の整備を進めている段階で、認定製品はまだ出てきていないようです。
特定プラスチック使用製品の使用の合理化
これは何かというと、例えばコンビニに買物にいって、食べ物や飲み物を買うと、ストローとかスプーンとかをもらうことがあるじゃないですか。あと、ホテルに泊まると、アメニティで歯ブラシとかヘアブラシとかがありますよね。こういうものが特定プラスチック使用製品として定められています。
これらを減らす取組をしなさいというのが、ここのポイントですね。ですのでこの責務の主な対象としては、小売業、宿泊業、飲食業、洗濯業等が中心です。こうした企業は何をしないといけないのかというと、特定プラスチック使用製品の使用の合理化に関する目標を定め、これを達成するための取組を計画的に行うことなどが求められています。具体的には、飲食店やコンビニエンスストアなどで、木製スプーンや紙ストローを提供するとか、テイクアウトの飲料の蓋をストローが不要な飲み口機能付きに変更するとか、スプーンやフォークを有償で提供するといったことを、目標を定めて取組なさいということですね。
この責務については、罰則があります。特定プラスチック使用製品を多量に提供している事業者に対しては、取組が著しく不十分な場合に、国が勧告・公表・命令等を行うことがあります。そうした命令等をうけたにも関わらず、違反した場合は50万円以下の罰金だそうです。特定プラスチック使用製品を多量に提供している事業者とは、前年度の提供量が5トン以上のことを指します。中小企業ではあまりないかもしれませんね。
製造・販売事業者等による自主回収・再資源化
プラスチック使用製品の製造、販売又は提供する事業者が対象です。自社が作ったり売ったりしたプラスチック製品を、自主回収したりリサイクルしたりしなさい、という責務ですね。一度売ったものを回収するというのは、ゴミとして回収するのがふつうですけれども、ゴミを回収するとなると、廃棄物処理法上で収集・運搬事業者という許可をとらないといけないんですよ。ただ、プラスチック資源循環促進法に基づいて国の認定を受けると、廃棄物処理法に基づく許可がなくても、使用済プラスチック使用製品の自主回収・再資源化事業を行うことができるようになるらしいです。もちろん、自社が作ったり売ったりしたもの限定なんでしょうけどね。
これは具体的にどういう活動のことを示しているかというと、小さいお子さんのいる人はご存じかもしれませんけど、マクドナルドの店舗におもちゃリサイクルボックスというものがあるんですよね。マクドナルドのハッピーセットについてくるおもちゃで、いらなくなったものを、店舗のリサイクルボックスに入れると、それを再資源化するという仕組みなんですが、こうしたものが製造・販売事業者等による自主回収・再資源化の例ですね。
排出事業者による排出の抑制・再資源化等
これはかなり多くの中小企業にも求められることです。
対象となっているのは、プラスチックごみを排出する事業者であって、事務所、工場、店舗等で事業を行う多くの事業者が対象ですね。ただし、小規模事業者は除外されます。小規模事業者というのは、製造業だと従業員数が20人以下、商業サービス業だと5人以下の小さい事業者のことです。
ほとんどの中小企業が該当しますが、具体的にはどんなことが求められているのでしょう。まず排出の抑制・再資源化等の実施ということで、プラスチックゴミ(これは産廃も含みますが)排出量を減らすこと、適切に分別して排出すること、再資源化を実施することができるものは再資源化を実施すること、再資源化を実施することができないものであって、熱回収を行うことができるものは、熱回収を行うことなどがあります。まあいわゆる3Rに近いことをやってくださいということですね。
また、多量排出事業者は責務も多くなります。多量排出事業者とは、前年度におけるプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出量が250トン以上である排出事業者のことを指します。多量排出事業者は目標を定め、目標達成のための取組を計画に行うことが求められますし、毎年度、前年度の排出量及び目標の達成状況に関する情報をインターネット等で公表するよう務めなければなりません。これには罰則もあります。多量排出事業者に限りますが、指導・助言に留まらず、勧告・公表・命令の措置の後、命令にも違反した場合は、50万円以下の罰金です。