おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
ISO14001:2015 各箇条解説シリーズ。今回は箇条6.1.3「順守義務」の解説です。具体的にはどういうものが順守義務にあたるのでしょうか。また、順守義務はどうやって決めていけばよいのでしょうか。(全2回)
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箇条6.1.3の規格要求事項(1)
それでは箇条6.1.3の規格要求事項を見ていきましょう。6.1.3は重要なパートなんですけれども、規格要求事項は短めです。まずはa)からc)までの3つをやりなさいと言っています。
a)では「組織の環境側面に関する順守義務を決定し、参照する」といっています。
環境側面の洗い出しは前回の解説でやりましたが、それに関連して順守義務を決めなさいと言っていますね。
例えばボイラーで重油を使うという環境側面があれば、重油は消防法における第4類の引火性液体にあたりますから、消防法が順守すべき法的要求事項ということになります。
また、重油を燃焼させると、二酸化硫黄や窒素酸化物、二酸化炭素が排出されるという環境側面がありますが、これについては、大気汚染防止法や省エネ法、温対法あたりに関わってきますね。
こんな感じで環境側面を参考にして順守義務を決めなさい、ということです。
もちろんすべての環境側面に対して漏れなく順守義務を決める必要はありません。
しかし、順守義務を洗い出すのは、実際はなかなか難しいですね。お客さんの要求事項だとまだわかりやすいですが、企業の行っている活動や製品、サービスにどんな法律が関係するかというのを、法律に詳しくない人が洗い出すのは結構大変です。
この辺は、本を読んだり、セミナーに行ったり、同業他社と情報交換をしたり、弁護士さんなどの法律に詳しい人に相談をする必要がありそうですね。なお宣伝ですが、当社では動画で環境法令解説をやっていますので、そうしたものをぜひ参考にしてみてください。
b)はどういうことでしょうか。これは、a)で決定した順守義務を守るために、わが社では何をするかを決めなさいということですね。
例えばさきほど、ボイラーで重油を使うという話をしましたが、消防法や条例などで決められている保管方法、運搬方法を守るということですね。また、大気汚染防止におけるばい煙発生施設としての届出や測定の義務を守るということにもあたるでしょう。
誰がやるか、いつやるか、みたいなところまで決めておいたほうが運用上はいいんでしょうね。このb)は、この次の箇条6.1.4とも関係が深そうです。
c)はどういうことでしょう。これは簡単にいうと、順守義務に関するPDCAを回すということですね。
わかりやすい例でいうと、法律や条例が改正になった時に、その情報を監視して、必要ならば、順守義務の取り組み内容や計画の見直しをして、それを維持する、みたいなことを指すでしょう。
もちろんそれも重要ですが、c)には他の観点もあります。「順守義務」という言葉が出てくるISO14001の箇条はたくさんあります。この図の赤い枠で囲まれた部分は、「順守義務」という言葉の出てくる箇条です。こうした箇条に書かれていることもしっかりと守って、マネジメントシステムを維持・改善する必要もあるでしょう。
箇条6.1.3の規格要求事項(2)
そして最後、「組織は、順守義務に関する文書化した情報を維持しなければならない。」とあります。これは順守義務一覧表のようなものを作って記録するという方法があるでしょうね。
その一覧表には、関連する環境側面や、取り組み内容も書かれていると便利ですよね。さらには順守義務は箇条9.1.2で順守しているかどうかの評価をすることになっていますから、評価結果まで書けると便利だと思います。
順守義務はリスク・機会と密接に関係がある
規格要求事項にもありましたが、順守義務はリスク・機会と密接に関係があります。法律を守らなかったり、顧客や地域住民との約束を守らなければ、大変なことになりますからね。
順守義務を洗い出す時に、漏れを完全になくすというのは難しいとは思いますが、できるだけ多くの人の知恵を集めて、何度も繰り返し話し合い、順守義務を洗い出していただくのが、大変ですけどベストなやり方だと思います。