おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
11月12日、秋の行政事業レビューが行われ、事業再構築補助金に関する点検が有識者等によって行われました。結論として、「事業再構築補助金の新規採択は一旦停止すべき」と、有識者が提言しました。行政事業レビューでの結論を文字起こしして、考察します。
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「行政事業レビュー」と事業再構築補助金について
行政事業レビューとは、行政改革推進会議の下、外部有識者が参加し公開で事業の検証を行うものです。以前、民主党政権時代に行われていた「事業仕分け」のようなものだと言えます(有識者の権限などに違いはありますが)。行政事業レビューは基本的に、見直しの余地がある事業を対象として行われるものです。この行政事業レビューで、事業再構築補助金の検証が行われましたが、事業再構築補助金は10月の「財政制度等審議会」でも問題視されるなど、いわば「目をつけられている」事業です。
秋の行政事業レビューの資料や動画等は下記から確認できます。
事業再構築補助金レビューに対する河野太郎デジタル大臣の結論
事業再構築補助金レビューに対する河野太郎デジタル大臣の結論です。以下の動画の2:31:26ごろから確認できます。
以下に、河野大臣のコメントを文字起こしします。
ありがとうございました。大変厳しいご指摘が続きまして、誠にごもっともだと思います。データの収集の部分とかですね、経産省にも、もう少し頑張ってできなければいけないものもあると思いますが、これ、真の責任ががどこにあるかというと、やっぱりコロナ禍で、政治がある程度押した部分というのがあって、こういう状況が作られているというところが、一番の責任なんだと思うんですね。だからそこはまず、この基金の成果目標は何なの?それから成果目標を達成してるかどうかを、きちんと効果検証をして、その結果というのを見て、この手法が本当に良かったのかどうなのかっていうところは、問わなければいけない。その時に問われるのは、やっぱり政治の方が責任を問われないと、経産省ばかり責めるというわけには、いかないんだと思います。
結果的に、この基金というものを、たくさん今できてますけども、その成果目標がきちんと立てられていて、それを測るためのデータ収集体制がちゃんとできていて、基金で言えば、採択をするための審査をする体制が民間に丸投げになってるんではなくて、所管の部局が何らかの形で審査をできるような体制がちゃんと作られていて、それで一定期間経ったところで、効果検証をして、続けるかどうかというのを見るということは、やっぱり大事なんだと思うんです。
それがないがゆえに結果的にこれがずっと続いていってしまって、無駄にお金が使われるということになってはいけない。昨日も、3年ぐらいで効果を検証しろということが取りまとめで言われておりましたが、やっぱり3年ぐらいのタームできちんきちんと効果検証をして、前に進む。その効果検証の体制ができないなら、そこでやっぱり1回止まってデータを収集する、あるいは審査体制がちゃんと整うかどうかというのを見るということを、やらないといけないのではないのかなという風に思います。
確かに、この基金で新陳代謝が遅れたとか、問題点は多分いっぱい、逆の意味で出てるんだと思います。採択の件数がたくさんあったがゆえに、審査ができずに、先行してやったら審査でそこの部分には金が出ないと言って、逆にこれを応募したが故に困ってる企業の話というのも複数聞いておりますから、いいことばかりでもなく、お金を配ったから良かったかというと、お金を配る事業をやったがゆえに、問題を起こしてしまっている企業というのもあるわけですし。
PDFの話もありましたけども、やっぱりデータをあらかじめデジタルで取らなければ、分析も後が大変になるわけで、それなら事業を始める前にデータを収集する体制を作ったところから始める、というようなこともやらなきゃいけませんから、これはやっぱりここで1回、これだけ指摘がありましたんで、ちゃんと効果検証をして、どうだったのっていうのをやる意味でも、どっかでやっぱりこれ立ち止まって、成果目標とそれに対する効果検証というのをやって、前に進む。コロナ禍でとにかく何が起きるかよくわからんと言って、様々、事業化の給付金を出したり、あるいはお店を閉めた飲食店に給付をしたり、ゼロゼロ融資をやったり、そういうことは何でもやろうということでやりましたが、コロナ禍終わって平常になってる今、やっぱり立ち止まるというのが大事ですから、少なくともこのコロナの対応はどうだったのか、効果はどうだったのかっていう検証をしてから、次へ行くっていうのは、これはこの事業に限らず、やっぱりやっていかなければいけないんだろうという風に思います。
そういう意味で経産省には、力仕事を頑張ってやってもらって、ある面大変だったと思いますが、ここはやっぱり政治が始めたことは、政治の責任で1回止まって、効果検証をやるっていうことは、しっかりやらないといけない時期に来てるんではないかなという風に思います。
これに付け加えるかたちで、土田慎政務官(衆議院議員。デジタル大臣政務官兼内閣府大臣政務官)は次のように述べています。
はい、ありがとうございます。今河野大臣がおっしゃった「政治の責任」という部分も、私はおっしゃる通りだという風に思ってます。それとちょっと違った観点でこの会に望む姿勢みたいな部分を、ちょっとお話しさせていただきたいと思うんですけども、事前に各委員の先生方そのデータ云々のやり取りがあったかという部分は、私存じてない部分でございますけれども、明らかにこの議論を活性化するためには、必要なデータを用意できてなかった部分があるというのは、我々行革の事務局側も、そしてまた臨んでいただく役所の皆さん側も、ちょっと重く受け止めて、次回から生かしていかないといけないのかなという風に思います。
以上の大臣コメントは、以下の3点にまとめられると思います。
- 事業再構築補助金には問題がたくさんあるが、真の責任は政治にある。
- 無駄な資金使用を避けるために、定期的な効果検証とその結果に基づいた政策の見直しが必要である。
- データ収集と審査体制の整備が不十分であるとして、これらの改善が必要である。
「政治の責任」について言及したのは驚きました。うすうすは思っていましたが、事業再構築補助金は役所の発案ではなく、政治家が「やれ」とねじ込んだ、ということなのだと推察します。それが様々な問題を引き起こした根本原因だとほのめかしているように読めます。それ以外についても、概ね有識者が提起した問題点に、河野大臣も納得をしている様子です。
事業再構築補助金レビューに対する有識者の結論
事業再構築補助金レビューに対する有識者の結論も文字起こしします。動画では2:37:53ごろからなお、ここで発言しているのは以下の3名です。
- 太田康広(慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授)
- 伊藤伸(デジタル庁参与、構想日本総括ディレクター、元内閣府行政刷新会議事務局参事官)
- 川澤良子(Social Policy Lab㈱ 代表取締役。デジタル庁 入札等監視委員会委員)
(大田)はい、事務局から取りまとめの案をいただいているんですが、私の一存でかなり書き換えました。もし他の委員の先生方、ご異論あるようでしたら、後からご指摘いただければと思います。通常の…というか、かつての行政事業レビューや事業仕分けであれば、普通は多分「廃止」という風になる事業だろうと思います。今そういう仕組みはないのでコメントとして申し上げます。申請書、財務諸表の精査、四半期のモニタリングの仕組みが確立されない限り、新規採択は一旦停止すべきである。コロナ対策としての役割は終わりつつあるので、基金は廃止しても、もしくは抜本的に事業を構築し直すべきだ。未執行の金額については一旦国庫返納してはどうか。基金として継続する必要は認められないので、通常の予算措置に戻す。以上をもって取りまとめコメントとしたいと思いますが、委員の先生方いかがでしょうか?
(伊藤)ここから1点あるとすれば、一番最初のところ「従前の基金」…先ほど少し説明もありましたけど、この補正で一応国会へ通って、別な観点でこの基金積み増しってのが決まってる部分はあるから、多分今日の議論って、今までやってきたことの効果検証はできてないっていう部分になるので、コロナ対策っていうのか「従前の部分」について今のままだったら廃止とかっていうようなことかもしれない。
(大田)はい、どこを訂正すればいいですかね?「従前の部分」についてという風に一番最初の冒頭につければいいですか?はい、ではそれを付け加えたいと思います。元々主な論点にあった執行体制の方の部分はよろしいですか?その点はいかがでしょう?執行体制?
(川澤)そうですね、審査の厳格化とデータの収集の厳格化については、引き続き十分検討が必要というところは、もしよろしければ入れていただければと思います。
(大田)はい、それを付け加えたいと思います。じゃ他、よろしいでしょうか?はい、そうしましたら、これをもちまして本テーマにおける議論を終了したいと思います。どうもありがとうございました。
(本レビューの結論部分を、筆者が赤字で強調)
この有識者の提言がそのまま受け入れられるのかどうかはわかりませんが、ただ、事業再構築補助金は10月6日に第11回公募が締め切られて以降、12回公募が始まる気配も感じられません。この行政事業レビューの前から、事業再構築補助金の継続が問題視されていて、どこからかストップがかかっているとしたら、12回公募が始まらないのも納得です。
なお、有識者の太田康広先生は、行政事業レビュー後にX(旧Twitter)で、以下のように発言をしています。「ここまで斬り込めたのは河野大臣とサポートしていただいた行革事務局のかたがたのおかげ」と書いていますので、有識者の結論が基本的には河野大臣と行革事務局に支持されていると理解してもよさそうです。
2023年度補正予算はどうなるのか
2023年度補正予算でも、中小企業省力化投資補助事業が中小企業等事業再構築基金の活用をすることになっています。これがどうなるか?は、有識者のコメントに垣間見える部分があります。伊藤伸氏が「この補正で一応国会へ通って、別な観点でこの基金積み増しってのが決まってる部分はあるから、多分今日の議論って、今までやってきたことの効果検証はできてないっていう部分になるので、コロナ対策っていうのか「従前の部分」について今のままだったら廃止とかっていうようなことかもしれない」と言っています。この発言の正確な意図はわかりませんが、ぼくの解釈としては「補正予算が国会に通っている(閣議決定されている)ので、停止にすべきなのはこれまでの事業(≒従前の部分)であって、新しい事業ではない」ということを言いたいのではないかと思っています。それについては取りまとめ役の太田康広先生も、何も言わず受け入れていました。