おはようございます。マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
10月23日の財政制度等審議会で、財務省は「ものづくり補助金」の見直しについて触れました。補助の基準や成果の評価を厳密にするようにとの意向であり、来年度以降、制度に大幅な変更が加えられる可能性が出てきました。新聞各紙の報道を検証します。
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朝日新聞「中小企業支援を厳格化意向 財務省、補助金見直し」
記事の要点
- 財務省は成果の評価基準および審査について、下記の2点を問題視をしている
- 「事業化」の基準が「開発製品の一つ以上の販売」とゆるく、妥当ではない
- 途中で投資を断念して補助金を返還する企業が毎回一定割合出ており、事前の審査が不十分ではないか
日刊工業新聞「中小向け補助金、成果目標が一部不明確 財政審」
日刊工業新聞では、ものづくり補助金に限らず。中小企業向けの補助金全般について、財務省が懸念を表明しています。
記事の要点
- ものづくり補助金に限らず、目標が達成したかどうかを、アンケートによる自己評価で判断する補助金などがある(筆者注:自己評価が成果測定方法として不適切という私的だと思われる)
- 生産性向上との関係が不明確な成果目標や、客観的な政策効果を測定できない成果目標が設定されているものが存在していると指摘
- 中小企業向け補助金は「生産性向上に意欲的な中小企業への支援に重点化」するべきと表明
日経新聞「防衛調達に効率化の余地 財制審が議論」
記事の要点
- 中小企業向けの「ものづくり補助金」では、対象企業の選定が甘く「生産性の向上に意欲的な企業への支援に重点化する」必要性を挙げた。
もともと財務省は「ものづくり補助金」の成果に懐疑的
今回は、財政制度等審議会で財務省が指摘をしたのですが、もともと財務省は「ものづくり補助金」の成果には懐疑的な立場ではないかと思います。2年前の記事ですが、財務省は「ものづくり補助金」の投資回収は1%に満たないという調査をしました。一方で経産省は、ものづくり補助金の「成果」目標を、交付企業の半数以上が事業化を達成と位置づけており(実績としても5~7割は事業化に成功していると経産省は報告している)、認識に大きな開きがありました。(財務省の「投資回収」という視点と、経産省の「事業化」という、成果を何で測るかという視点に食い違いがあります。経産省は投資回収と言うより、あくまでも経営革新による全社的な付加価値額・経常利益額の向上を目的としている)
もっとも、中小企業が5年間で数千万円規模の投資を回収するというのは現場感覚では結構厳しい条件のように思いますけどね。かといって、実態としてはそれほど革新的とはいえない取り組みにも交付決定がされているケースも散見されますし、そもそも1千万円程度で本当に「革新的」な取り組みができるのかという議論も過去にはありましたので(行政事業レビューにおける外部有識者の見解として)、財務省の指摘も当たらずしも遠からずといったところではないかという気がします。
来年度以降の「ものづくり補助金」はどうなるか?
これらを踏まえて、来年度以降の「ものづくり補助金」はどうなるでしょうか。まず、財務省も「見直し」と表現していることから、来年すぐさまに廃止になるということは考えにくいのではないかと思います。その上で、経産省が財務省の意向を汲むのであれば、予算の減額、審査基準・審査体制の見直しといった措置がとられる可能性も考えられるでしょう。
ただし2年前に「投資回収は1%に満たない」という調査を財務省がしたあとでもすぐさまに制度や予算が大幅に変わっていないところから、この意向は黙殺される可能性も否定はできません。来年度の補正予算を編成するにあたって、消費税増税後の景気対策をどう考えるかという内閣の判断(閣議決定)次第ではないかという気もします。
例年であれば、11月には各省庁が補正予算案を提出し、年末に閣議決定されるはずです。ここで明らかになる補正予算の内容で、どうなるかが明確になります。補助金の利用を検討している中小企業は、その情報を待つしかありません。