おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
2020年実施ものづくり補助金では、①給与支給総額年率1.5%以上増加と、②事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上が申請要件になっています。これを満たさない場合は補助金返還になるのですが、その返還要件を定めた「実効性担保」の項目について考察をします。(全2回のうち2回目)
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2020年実施ものづくり補助金の賃上げ要件と返還条件についての考察(実効性担保について)その1
おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。 2020年実施ものづくり補助金では、①給与支給総額年率1.5%以上増加と、②事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上が申請要件にな ...
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一人当たり賃金の増加率を用いることを認める
また、給与支給総額を用いることが適切ではないと解される特別な事情がある場合には、給与支給総額増加率に代えて、一人当たり賃金の増加率を用いることを認める。
(事務局公募要領別添3より)
これもなかなか悩ましい規定です。素直に読むと、従業員の増減があった時に、給与支給総額では賃上げの効果が測りにくいので、一人当たり賃金の増加率を使ってもよい、ということでしょう。
しかしこの一文からでは読み取れない疑問が2つあります。
- 「特別な事情」というからには、単なる従業員の増減ではない何か別のケースを想定しているのではないか
- 一人当たり賃金の増加率を用いることを「認める」ということなので、「特別な事情」であっても一人当たり賃金の増加率を「使わない」という選択肢もありうるか
ところで、これまでのものづくり補助金でも「加点項目」として、給与支給総額の増額を考慮に入れる場合がありました。その時は、雇用の増加をもって給与支給総額の増加と認められていました。しかし2020年実施ものづくり補助金で、雇用の増加による給与支給総額のアップによって、補助金の一部返還を免除されるかどうかは微妙ではないかと思います(免除される可能性もあるでしょうけど)。
従業員数の増加のケースでも「一人当たり賃金の増加率」を使うということが要求されている可能性は(この記事を書いている2月19日の時点では)ゼロではないでしょう。というのも「従業員が増えて、給与支給総額が結構あがったから、一人ひとりは賃上げしなくてもいいよね?」というのを認めてしまうと、2020年実施ものづくり補助金の目的にある「賃上げ」への対応を取りこぼしてしまうことになりますからね。
中小企業・小規模事業者等が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入等)等に対応するため、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等、及び一定数以上の中小企業・小規模事業者の新規ビジネスモデルの構築を支援するプログラムの経費の一部を補助することにより、中小企業・小規模事業者等の生産性向上を図る。
(事務局公募要領別添3 「1.補助対象事業」より)
「特別な事情」が何なのか、また従業員が増加した場合の取り扱いについては、中小企業庁にきちんと定義を明確にしてほしいところです。
事業場内最低賃金の増加目標未達成時の返還
事業計画中の毎補助事業年度終了時点において、事業場内最低賃金の増加目標が達成できていない場合に、交付決定の一部取消によって、補助金額を事業計画年数で除した額の返還を求める。
(事務局公募要領別添3より)
ここでの返還要件は、事業場内最低賃金の増加目標の未達成時ことです。給与支給総額年率平均1.5%向上のこととは違いますね。
「毎補助事業年度終了時点」とあることから、毎年の事業報告の際に、事業場内最低賃金の増加目標の達成状況の報告が必要となるのでしょう。このときのエビデンスとして、賃金台帳の写しなどの提出を求められるのでしょう。賃金台帳にある総支給額と労働時間数の数字から、最低賃金+30円を実現できているかどうかを確認することができますからね。
未達成時の返還額は「補助金額を事業計画年数で除した額の返還」です。事業計画期間が5年で、交付額が1,000万円の場合は、1,000万円÷5=200万円を、その年に返還しないといけないということですね。
しかしこの報告を毎年しないといけないというのは、かなりの事務処理負担です。これで本当に中小企業の生産性向上に役立つといえるのかという疑問が拭えません。