おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
6月18日、政府は「経済財政運営と改革の基本方針2021」(いわゆる"骨太方針")を閣議決定しました。今後の予算・政策の方向性を示す方針ですが、このなかから中小企業に関連する主だった記述を見ていきます。
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「経済財政運営と改革の基本方針2021」の閣議決定資料はこちら
中小企業の輸出等の振興
「4.感染症の克服と経済の好循環に向けた取組」のうち、「(2)経済好循環の加速・拡大 」に次のような記述があります(方針P5)。
世界経済が回復していく中で、国際経済連携を強化しつつ、中小企業の輸出や農水産物輸出の振興、インバウンドの再生、航空・空港・海事関連といった国際交通を支える企業の経営基盤強化等を通じて、外需を日本の成長に取り込んでいく。
海外展開を促進するための補助金(ものづくり補助金や事業再構築補助金のグローバル型)や、ビジネスの課題や悩みに関して、無料で何度でも専門家によるアドバイスを受ける制度など(海外展開ハンズオン支援)が既にあります。こうした制度の予算が拡充されるのかもしれません。
なお、中小企業の輸出促進については方針P16でも述べられています。昨年の「骨太の方針」では、それほど中小企業の輸出が強調されていたようには思わないのですが、2021年版では中小企業に関する記述のトップに出てくるだけでなく、2度も箇所を変えて記述されているところを見ると、いよいよ日本経済も外需頼みになってきたのかもしれません。
中小企業のDXの加速
第2章「次なる時代をリードする新たな成長の源泉 ~4つの原動力と基盤づくり~」の「2.官民挙げたデジタル化の加速」「(2)民間部門におけるDXの加速」では、中小企業のDXについて次のような記述があります。(方針P11)
地方における中小企業も含めて非対面型ビジネスモデルへの変革や新産業モデルを創出する。このため、企業全体で取り組むデジタル投資を税制により支援し、特に中小企業においては、IT導入サポートを拡充し、そのDX推進を大胆に加速するほか、標準化された電子インボイスや、金融機関による支援等も通じた中小企業共通EDI等の普及促進を図る。
これも各補助金や、IT導入の専門家派遣(中小企業デジタル化応援隊事業)、DX投資促進税制等のことを指しているのでしょう。これに加え、2023年10月のインボイス制度への移行や2024年1月のISDNサービス終了によるインターネットEDIへの移行などに何らかの措置が行われるのだと思います。
活力ある中堅・中小企業・小規模事業者の創出
第2章「次なる時代をリードする新たな成長の源泉 ~4つの原動力と基盤づくり~」の「3.日本全体を元気にする活力ある地方創り~新たな地方創生の展開と分散型国づくり~」「(2)活力ある中堅・中小企業・小規模事業者の創出」では、次のような記述があります。(方針P13)
感染症の影響下の変化に対応し、経済の底上げを図る地域を中心に、生産性向上等に取り組む中小企業・小規模事業者に対し思い切った支援を行う。支援策の申請手続の電子化、支援機関や専門家の見える化、民間の支援ビジネスとの連携による経営支援体制の整備を行う。デジタル等の無形資産投資、EC活用や信用供与等を通じた輸出などの海外展開の促進や人材の確保・育成等により、中小企業の規模拡大を支援し、活力ある中堅・中小企業等の創出を促す。また、地域の女性起業家、社会起業家等を支援するとともに、中小企業等の事業承継・再生の円滑化のための環境を整備すること等により、地域コミュニティの持続的発展を支援する。こうした中小企業支援策について効果的・効率的に行うとともに、中小企業への周知の強化を図る。
「生産性向上等に取り組む中小企業・小規模事業者に対し思い切った支援」というのは、中小企業生産性革命促進事業ではないかと思われます。この事業は昨年(令和元年度補正)から、3年分の予算を確保して複数年の取り組みを行うようになりました(基金形式にて実施)。予算の残額がどの程度なのかにもよりますが、予算に余裕があれば当初の計画通り、令和4年度以降も当該施策を行っていく可能性があるのかもしれません。
「中小企業の規模拡大を支援し」というのは、様々な議論がありますが、現政権の基本方針ですね。
最低賃金の引き上げ
第2章「次なる時代をリードする新たな成長の源泉 ~4つの原動力と基盤づくり~」の「3.日本全体を元気にする活力ある地方創り~新たな地方創生の展開と分散型国づくり~」「(3)賃上げを通じた経済の底上げ」では、次のような記述があります。(方針P13)
感染症の影響を受けて厳しい業況の企業に配慮しつつ、雇用維持との両立を図りながら賃上げしやすい環境を整備するため、生産性向上等に取り組む中小企業への支援強化、下請取引の適正化、金融支援等に一層取り組みつつ、最低賃金について、感染症下でも最低賃金を引き上げてきた諸外国の取組も参考にして、感染症拡大前に我が国で引き上げてきた実績52を踏まえて、地域間格差にも配慮しながら、より早期に全国加重平均1000円とすることを目指し、本年の引上げに取り組む。 また、本年4月に中小企業へ適用が拡大した「同一労働同一賃金」に基づき、非正規雇用の処遇改善を推進するとともに、非正規雇用の正規化を支援する。
最低賃金の引き上げも現政権の基本方針の一つです。業種によってはコロナ以前と比べて売上が半分以下になっているところもあり、債務過剰状態の中小企業も依然として多い中、最低賃金の引き上げがどこまで受容されるかは不透明です。