おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
11月4日、共同通信は『中小企業賃上げ支援に1.1兆円 経産省、2次補正予算案に計上へ』という記事を公開しました。これによると2次補正予算案で事業再構築事業に5800億・生産性革命事業に2000億が計上される見込みです。
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『中小企業賃上げ支援に1.1兆円 経産省、2次補正予算案に計上へ』の記事はこちら
補助金拡充では、新分野への展開や業態転換などを後押しする事業に5800億円、新商品開発に向けた設備投資やIT化を支援する事業に2千億円を、それぞれ充てる。賃上げを条件に補助率を高くするなどの優遇策を設ける。
前年度比較で予算減額の事業再構築補助金
この報道どおりに補正予算が成立するとすれば、事業再構築補助金は前年度(令和3年度補正予算)から300億円ほど予算が減額される見通しです。
事業再構築補助金は令和2年から実施されている事業ですが、予算額としては令和2年度第3次補正予算で1兆1,485億円、令和3年度補正予算で6,123億円、令和4年度予備費予算で1,000億円が計上されています。(『事業再構築補助金の概要(中小企業等事業再構築促進事業)第8版』p3より,中小企業庁,2022年7月1日)
事業再構築補助金は、令和2年度第3次補正予算から令和3年度補正予算にかけて、5,000億円ほど予算が減額されていますが、それでも直近公募になるにつれて採択率は高まっています。現場の実感としてもそうですが、当初よりも関心がかなり薄れていると考えられます。
中小企業生産性革命推進事業も予算は減額か
中小企業生産性革命推進事業とは、ものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金、IT導入補助金、事業承継・引き継ぎ補助金の4事業の総称です。
この中小企業生産性革命推進事業のこれまでの予算は、令和元年度補正予算(3年間で3,600億円)令和2年度補正予算(700億円+1,000億円+2,300億円)令和3年度補正予算(2,001億円)でした。(『中小企業生産性革命推進事業について』p1より,中小企業庁等,2022年6月)
令和3年度補正予算と比較すると、この度の補正予算で計上予定の2,000億円はほぼ同額です。しかし今年まで実施されていた中小企業生産性革命推進事業は、もともと3年間の基金形式として、令和元年度補正予算(3,600億円)で計上されていたものが本体です。令和3年度補正予算(2,001億円)は、通常枠の一部見直しや特別枠を創設、事業承継・引継ぎ補助金追加に伴う、いわばマイナーチェンジのための予算計上でした。
令和4年度補正に計上予定の2,000億円が基金形式になるかどうか、なるならば何年間の基金なのかはわかりません。もし令和元年度補正予算(3,600億円)と同様に3年間の基金形式だとすると、予算は6割程度にとどまることとなります。もちろん基金形式ではなく単年度の事業として行われる可能性もゼロではありません。それだとしても、予算規模は減額といってよいでしょう。(令和元年度補正予算(3,600億円)の単純計算での1年分=1,200億円+令和3年度補正予算の2,001億円で、令和3年度には想定で3,200億円/年の予算が充てられたわけですから)
しかし予算が減額になるといっても、『中小企業生産性革命推進事業について』の資料を読むと、これら補助金の令和3年度の採択金額(通常枠や各特別枠を含む)を合計しても1,700億円程度にしかなりません。実際にはこれらに事務局費がプラスされますが、もともとの基金形式でおこなったうえ、各種特別枠まで創設して追加をした過去の予算(3年間3,600億円+令和2・3年度補正で追加された7,000億円の、総計1兆円超え)のことを考慮すると、おそらく最終的には余るものと考えられます。こうした消化実績から見ると、予算が減ることは妥当なものではないかという印象もあります。
経済産業政策の軸足は経済安全保障対策へ
朝日新聞などが報じているように、経済産業政策の軸足は経済安全保障対策へと移っているのだと考えられます。その影響を受けて、中小企業政策の予算が制約的になっているのではないかと当社は勝手に推測をしています。
なお、報じられた予算はあくまでも「予算案」のようです。実際は閣議決定(8日予定)の上、国会で審議されて成立(11月中予定)されます。その過程で予算額が修正される可能性もゼロではありません。