おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
環境法令解説シリーズ、今回は「環境基本法」と、具体的な規制や罰則について定めた個別の環境法令との全体像について解説をします。(全2回)
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日本の法体系について
環境基本法の解説の前に、日本の法体系についてざっくりと解説しましょう。
まず一番上に憲法がありますが、憲法とは、日本国の基本原則を定めたもので、国がやってはいけないこと(またはやるべきこと)について、主権者である国民が定めた決まりのことです。
そしてその下にある法律とは、国民が守るルールなどを定めたものです。法律は国会が制定し、内閣が執行します。憲法が定めている決まりに反する法律を作ることはできません。
そして法律の下には、政令・省令・条例等があります。政令・省令・条例というのは、法律に基づいて国(内閣や省庁)や自治体が制定するものです。これは国会が制定するものではありません。これももちろん、憲法が定めている決まりに反する政令・省令・条例を作ることはできません。
日々の業務において順守しなければならない環境法令は、このピラミッドの図でいうと、法律と政令・省令・条例に該当します。
憲法には、環境に関連する条文はありませんし、憲法は国がやってはいけないこと(またはやるべきこと)を定めたものですから、みなさんがたの会社における日々の環境管理において、憲法を意識する必要はほとんどないでしょうね。ただ憲法は、これから解説をする環境法令の根拠の一つにもなっているという考えがありますので、憲法と環境法令は全く無関係というわけではないですね。
環境法令の全体像
では先程のピラミッドの緑の部分、国会で制定された法律に関して、環境法令の全体像を見ていきましょう。
環境法令といっても、全部で数十もの法律がありますが、それらの法律の基本となるのが「環境基本法」です。
環境基本法は、国の環境政策の基本理念が示されて、国、自治体、事業者、国民の責務が定められている法律です。具体的な規制や罰則については、この図でいうと、環境基本法の下に書かれている個別の法律で定められています。
もともと、70年代から80年代ころまでの日本の環境行政は、公害の防止と自然環境の保護が中心だったのですが、その後、世界の潮流が「地球規模での環境問題の解決」……つまり「地球を壊さないようにしよう」という考えになってきたんですね。それにともなって、環境基本法が1993年に交付されました。
環境基本法で定められた基本方針のもと、環境法令は大きく6つのカテゴリーにわけて考えることができます。まず1つ目は典型7公害対策です。7公害とは、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音、振動、地盤沈下、悪臭のことです。公害にはこの他にも、日照障害(日当たりの問題)や電波障害、放射線汚染、光の害と書いて光害などもありますが、環境基本法では最も対策を急がないといけないものとしてこの7つが対象になっています。そしてそれぞれの公害の防止のために、個別の法律が定められています。
つづいてのカテゴリーは廃棄物・リサイクルです。環境基本法の基本理念に基づいて、循環型社会形成推進基本法という法律が定められました。この循環型社会形成推進基本法が、循環型社会の形成……つまり廃棄物の処理やリサイクルなどについての基本原則を定めています。そして廃棄物関連としては、廃棄物処理法やPCB廃棄物特措法などが定められており、ここでゴミを処分するにあたってのルールや規則、罰則が定められています。また3R関連としては、資源有効利用促進法をはじめ、各種リサイクル法が定められています。3Rというのは、リデュース、リユース、リサイクルの略で、ゴミを減らす、繰り返し使う、再資源化するという意味です。
続いてのカテゴリーはエネルギー・地球温暖化対策です。環境法令において、最近では最も熱い分野と言っても良いでしょう。日本は2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指しています。国としての二酸化炭素の排出量を、2050年までに実質ゼロにしようとしています。エネルギー・地球温暖化対策としては、省エネ法や、温室効果ガスの排出抑制のための法律が昔からありますが、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、これらの法律が最近よく改正されています。
そして4つめのカテゴリーは化学物質です。この分野も21世紀になって世界的な規制の動きを見せている分野です。人や環境に有害な化学物質を規制することで、人の健康と環境を保護するという目的で、化学物質を規制するための法律が定めれています。
5つめのカテゴリーは自然環境保全です。野生生物の種の保全や自然環境の保全を目的として、環境基本法の下に、生物多様性基本法という法律が2008年に定められています。2008年以前にも日本には、「鳥獣保護法」などの法律がありました。しかし、「鳥獣保護法」はあくまで駆除や狩猟などの対象となる鳥獣に対象が限られていました。そこで生物多様性基本法は、さまざまな動植物が生きいける環境保全を含めた理念法として制定されました。
最後のカテゴリーは、ちょっと特殊かもしれません。「これが環境法令なの?」と思われるかもしれませんが、消防法や労働安全衛生法なども、環境法令の一部とみなす考えがあります。消防法や労働安全衛生法は、化学物質の規制と関連する分野だからですね。化学物質の中には、軽油や重油などの発火性のあるものや、メタノールやトルエンのように人体に影響のあるものもあります。こうした化学物質を使って仕事をしている企業は、火災の防止や労災の防止のための措置を取らなければなりません。そうした観点で、化学物質の規制と密接に関連しているからですね。
また、日本の法律ではありませんが、世界各国の環境法令も、場合によっては守る必要があります。例えばEUに製品などを輸出する際には、EUで規制されている物質をつかってはいけないというルールがあります(RoHS指令やREACH規則と呼ばれているルールです)。経済はグローバル化していますので、ケースバイケースで世界各国の環境法令も知っておく必要がありますね。