おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
今話題沸騰のビッグモーターなど、複数の企業の不祥事事例を使いながら、なぜ企業不祥事が起きるのか、その一般的なパターンについて掘り下げていきたいと思います。今回は「企業不祥事の原因」のうち、「個人的な行動・態度の問題」と「組織風土や組織構造上の問題」に的を絞って解説します。
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企業不祥事の原因(3)「個人的な行動・態度の問題」
3つ目の原因グループとして「個人的な行動・態度の問題」というものがあります。
細かい原因としてはまず「個人が自分の利益を追求する」というものがあります。横領など、個人が自分の利益を追求する行為がこれに該当します。上司や経営者などに取り入って,何らかの利益を得ようという「ごますり」もこれに該当するでしょう。
また「個人の不注意や怠慢」を原因とするものもあります。悪気はなかったがついうっかりしてしまった、というものですね。最近の事例としては、尼崎市の業務の再々委託先の社員が居酒屋で飲んだ後、尼崎市民の個人情報が入ったUSBメモリを紛失したという事件がありましたが、それはこの原因カテゴリーに分類されるでしょう。ただし、これは個人だけの責任とは言えません。こういう事態を防止するためのルールづくりや教育の責任は、当然、企業側・経営者側にあります。
最後に「知識・経験不足、技量が未熟」なことも原因です。エンジン認証不正問題を起こした日野自動車では、車両開発やエンジン開発について責任を持つ立場にあったにもかかわらず、劣化耐久試験について十分な知識がない者がいたことや、劣化耐久試験に対する理解が不足していたことが、不正の原因の一つに挙げられていました。ただしこれも個人の問題に終始してはならない問題ですね。本来は、経営者や管理職が、個人を適切に管理・教育する責任があります。
企業不祥事の原因(4)「組織風土や組織構造上の問題」
では4つ目の原因グループ「組織風土や組織構造上の問題」を見てみましょう。個人的にはこれが最も根深くて、不祥事の根本原因に近いと思っています。
まず「人間関係が優先されてルールが歪められる」という原因です。例えば「上司の指示は絶対」という雰囲気や、経営者の意向に忖度する企業風土のことですね。コンプライアンス上、不正な指示でも逆らえない文化、といいましょうか。組織に過度なプレッシャーをかけると、こうなりがちですね。
続いては「保身したい、自部門に利益をもたらしたい気持ち」です。基本的に人は、責任をとらされるリスクを回避し、自己保身をはかることを優先しがちです。程度の差はありますが、これは人間の性質のようなものなので、これ自体を直すことは難しいと思います。
さらには「問題を見て見ぬふりをする事なかれ主義」という原因もあります。事なかれ主義は保身から生まれると言ってもよいでしょう。組織には多かれ少なかれ「同調圧力」があります。保身のため「同調圧力」に屈してしまい、なにか問題があっても告発したり解決のための口火を切るということに腰が重くなります。対立や変化を恐れる文化や組織風土、と言ってもよいでしょうか。
「相互牽制の仕組みがない」という原因がありますが、これはどういうものでしょうか。相互牽制とは、重要な仕事を複数の人の間で適切に分担することです。例えば購買部門で、発注の承認をする人、発注品の検収をする人、発注先への支払をする人をそれぞれ分けるようなことを指します。つまりお金の管理を一人でやるような仕事の回し方だと不正が起きる温床になるので、それを分ける仕組みですね。こうした仕組みがないと、人事が固定化したり、業務が属人化したりして、個人が不正をしやすくなってしまいます。
続いては「上から一方的に目標を押し付けている」という原因です。業績目標などを「必達」として現場におしつけることですね。目標未達の場合に、パワハラまがいのプレッシャーを与えることでもあります。ビッグモーターの事例だと、板金塗装部門の目標として、車両修理1台あたりの単価が設定されていたんだそうです。これはあまり良くない目標設定です。というのも、車両修理1台あたりの単価は、対象車両の損傷状況によって決まるものなので、営業努力で増やせるようなものではないからです。現場が自らコントロールできないKPIを押し付けられて、プレッシャーをかけられるので、手っ取り早く単価を上げる方法として不正を選んだという側面もあったのだそうです。
「安全・品質より納期や業績を優先する風潮」ですが、これが根本原因に近いのではないかと思います。特に現場から離れた偉い人は、数字でしか物事を判断しない傾向があるので、売上とか利益などのKPIを優先しがちです。そうした経営者目線のKPIを押し通そうとするときに、安全や品質がおろそかにされてしまうのだと思います。