おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
10月11日、財務大臣の諮問機関「財政制度等審議会」が開かれ、事業再構築補助金の効果について議論されました。テレビ朝日の報道によると、委員からは「縮減するのは当然だ」という厳しい意見もあがったそうです。
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本件に関する各社報道
なおこの中のテレビ朝日の報道では以下のように報じられています。
財務大臣の諮問機関である財政制度等審議会で、コロナ禍で大きく膨れ上がった中小企業向けの補助金が議論され、「縮減するのは当然だ」など、厳しい意見が相次ぎました。
財政制度分科会の資料を読んでみた
10月11日に開かれた「財政制度等審議会」の資料が、財務省のホームページで公開されています。
これを読んでみたいと思います。
近年の中小企業対策費
要は、コロナ対応といいながらいつまでも中小企業対策費をかけていないで、早く平時のレベルまで下げなさい、と言っています。事業再構築補助金の申請件数も右肩下がりです。
足元の状況
要は「もうコロナ対策をする必要はないんじゃないのか」と、財務省は言いたいのだと思います。
中小企業対策の在り方(1):価格転嫁対策への重点化
コロナ対策ではなく、価格転嫁対策をしなさい、ということですね。事業再構築補助金ではありませんが、「中小企業生産性革命推進事業に代表される補助金については、労働生産性の向上などの政策目的に照らして効果が明らかでないものは大胆に見直すなど、改善に向けた不断の取組が不可欠。」とあり、ものづくり補助金などの効果にも疑問が呈されています。(2年前にも似たような意見が出されているので、これはいつもの財政制度等審議会ムーブと言えるんですけどね)
【参考】企業規模別の労働生産性(2022年版「中小企業白書」より)
なんでこのグラフが参考資料としてここに入れられているかはよくわからないんですが、財政審はコロナ禍真っ只中の2020年11月25日に「中小企業は生産性が低いので新陳代謝を促進すべき」という提言を出しています。邪推するようですが、これを機に生産性の低い中小企業は集約しなさい、という提言なのだと思いますが、そうした財政審の考えがこのグラフにも見える思いです。確かに企業規模と生産性に相関関係があるのは事実ですけど、それが因果関係とは言えないと思いますけどね(中小企業を集約すれば生産性が上がるとは一概には言えない、という意味です)。企業を集約すれば生産性が上がるというのならば、ダイエーは一体なんだったのかと……。
【参考】基金としての事業再構築補助金
この資料によると、事業再構築補助金は現時点で5,600億円も予算が余っているそうです。額もインパクトはありますが、執行率も75%程度なので、当初の狙いどおりに行かなかったことは、経産省も認めざるを得ないのではないかと思います。
個人的に思うのは、事業再構築補助金は要件が細かく、かなり狭い範囲に中小企業を誘導しようという意図を感じました。その適用範囲の狭さゆえに敬遠された部分もあるでしょうし、狭さゆえに趣旨と異なる申請が増えた部分もあると思います。あわよくば補助金をもらおう、補助金で儲けようという事業者やコンサルの思惑もあったのは否定しませんが、そもそもの制度設計に無理があったのではないかと思います。
【参考】事業再構築補助金についての指摘等
これもなかなかおもしろいデータですよね。これだけ案件が似通うところから推察すると、おそらくコンサルが主導して、同じ内容の事業計画書で申請させているのだと思います。制度や要件を細かくすればするほど、事業者の対応能力を超えてしまい、結果的にコンサルの暗躍を生む温床にもなるのでしょう。
中小企業対策の在り方(2):経営改善支援や事業再生支援への重点化
経営改善支援や事業再生支援とは、平たく言うと、財政面での問題を抱える中小企業(もっとダイレクトに言うと、負債が多すぎるなど安全性に問題がある企業)を支援する施策のことです。そうした支援のほうが必要とされているのでは?と財務省は言っています。
また「信用保証付融資の代位弁済率は銀行によってバラつきが大きいが、事業者の実情に応じた支援がすべての官民金融機関で徹底されるよう、関係省庁連携した対応が必要。」というのは、あいまいな書き方をしていますが、その次のページを見ると、おそらく100%保証をやめて、平時の80%保証に戻しなさいといいたいのかもしれません。(コロナのいわゆるゼロゼロ融資も、その後のコロナ借換保証も、どちらも100%保証でしたから、それを批判しているのではないかという気がします)
で、事業再構築補助金やものづくり補助金はどうなるのか?
この財政審の資料や提言内容を見ると、大幅に縮小されてもおかしくないように思えます。しかし2021年にも同じようにダメ出しをされた事業再構築補助金やものづくり補助金は、予算を減らしながらもしぶとく生き残っていますので、どうなるのかは予測がつきません。選挙も近いという噂もありますし、この財政審の提言だけで決まるのではなく、いろんな要因で最終的には決まっていくのだと思います。