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『中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金』=経産省PR資料を読む

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おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。

11月20日、経産省は2023年度補正予算のPR資料を公開しました。その中で、補助上限額50億円の『中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金』について、資料から読み取れることを考察します。

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『令和5年度補正予算案の事業概要(PR資料)』はこちら

『中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金』資料

『中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金』の事業目的

地域の雇用を支える中堅・中小企業が、足元の人手不足等の課題に対応し、成長していくことを目指して行う大規模投資を促進することで、地方においても持続的な賃上げを実現する。

まず注目したいのは「地域の雇用を支える中堅・中小企業」という言葉ですね。中堅・中小企業には、当然首都圏や大都市圏に所在するものもありますが、わざわざ「地域の雇用」と指している点に、何かしらの意図がありそうです。経産省では2023年3月に『地域の包摂的成長-地域の活力が生み出す若者・女性の「希望」の回復と少子化社会の克服』という資料を公開しています。この資料のP23では、「地域の雇用を支える中堅・中核企業」という言葉が使われていて、若者・女性の「可処分所得」の増加に繋がる政策案について述べられています。

また、事業目的には「足元の人手不足等の課題に対応し、成長していくことを目指して行う」とも書かれています。ここには2つ論点があります。まずひとつ目は「足元の人手不足等の課題に対応」という点です。「今のままでは人手が足りない」「人を雇いたいが(地方であることや中小企業であるために)採用が難しい」ということを、補助金申請時に客観的な証拠とともに主張して、その上でかなり自動化比率の高い製造現場を構築することが期待されているのではないかと思われます。

2点目は「成長していくことを目指して」という言葉です。これはおそらく、ここ2~3年の中小企業施策テーマになっている「中小・中堅企業からの卒業」と関係がありそうです。中小・中堅企業よりも大企業のほうが生産性が高いので、大企業へと脱皮させることを狙いとして、事業再構築補助金でも「卒業促進枠」という申請類型があったことはご存知の方も多いと思います。おそらく、大規模投資を行った結果、中小企業を卒業するような事業計画(もしくは計画だけではなくコミットメント)を求められるのではないかと推察できます。

そして最後の点は「持続的な賃上げを実現する」ということです。この補助金のタイトルがそもそも『中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金』であることからも、賃上げは申請要件として必須だと考えられます。

つまり①地方の企業が、②人手不足に対応する高度な自動化を図り、③中小企業を卒業し、④賃上げを実現する、という役所の狙いが浮かび上がってきます。

『中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金』の事業概要

中堅・中小企業が、持続的な賃上げを目的に、足元の人手不足に対応するための省力化等による労働生産性の抜本的な向上と事業規模の拡大を図るために行う工場等の拠点新設や大規模な設備投資に対して補助を行う。

上記の説明は、事業目的と重複するところもありますが、「労働生産性の抜本的な向上」という記述にまずは着目したいところです。これまでもものづくり補助金や事業再構築補助金で、付加価値額が年率平均◯%以上向上するような計画を作ることが求められてきました。「抜本的な向上」というくらいですから、この補助金でも、従来の補助金以上の労働生産性向上目標を企業に課すものと考えられます。

また投資の内容については「工場等の拠点新設や大規模な設備投資に対して補助を行う」と書いていますので、建物、建物附属設備なども補助対象費用になる可能性が伺えます。

『中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金』の事業スキーム

下記のように、いったん民間企業に補助をして、そこから中堅・中小企業へ補助をする仕組みです。ここでいう「民間企業」とは、執行団体(補助金の申請受付や問合せ対応などの補助金執行業務を担う団体(事務局))のことだと考えられます。また、中堅・中小企業への補助率が1/3と書いています。様々な要件がつくかもしれませんが、補助率が1/3であれば、自腹分が2/3あるということです。

 

・補助上限額50億円

※投資下限額は10億円

※コンソーシアム形式により参加企業の投資額の合計が10億円以上となる場合も対象(ただし、一定規模以上の投資を行う中堅・中小企業がいる場合に限る。)

補助上限額が50億円というのはすごいですが、これを満額得ようと思うと、補助率が1/3ですから、150億円の投資が必要です。また投資下限額が10億円とあります。この投資総額(10億円)に土地が含まれるのかどうかは定かではありませんが(土地は十中八九補助対象外と思われる)、土地を含んでの投資で10億円の投資というのは、かなりの規模です。もちろん業種や業態、地域によるので一概には言えませんが、従業員数100人以上の会社が、まるまる引っ越しをするくらいの規模感ではないかと思います。

『中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金』の成果目標

大規模投資を通じた労働生産性の抜本的な向上と事業規模の拡大により、対象事業に関わる従業員の1人当たり給与支給総額が、地域別の最低賃金の伸び率を超える伸び率を実現する。

この「成果目標」とは、この補助金の施策としての成果目標のことだと思われます。しかしこれが施策としての成果目標でも、結果的には個々の申請企業に同等の目標達成が求められると思われます。

「従業員の1人当たり給与支給総額が、地域別の最低賃金の伸び率を超える伸び率を実現」ということですが、当社の所在する兵庫県では、この10月に最低賃金が960円から1,001円にアップしました。増加率は4.27%です。ということは、兵庫県に所在する企業の場合、従業員の1人当たり給与支給総額が(おそらく年率で)4.27%上昇することのコミットメントが求められるのではないかと思われます。給与支給総額ではなく従業員の1人当たり給与支給総額ですので、これは相当な賃上げ規模といえるでしょう。

どこかの産業の狙い撃ち施策ではないか

この資料を読んで最初に思ったのは、こうした要件を満たせる中堅・中小企業は相当限られるのではないかということです。ここから先は根拠のない邪推ですが、2023年度補正予算案13兆円のうち、約1.8兆円を半導体産業への支援が占めています。前例がないほど、国は半導体産業への支援に肩入れをしていますが、この『中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金』も、そうした半導体産業を下支えする中堅・中小企業が主眼に置かれたものかもしれません。半導体工場は地方に点在していますし、地方の若者を製造業で雇用するためには待遇の改善が欠かせませんからね。こうした「国策」が背景にある補助金ではないかと、勝手に想像をしています。

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