おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
ものづくり補助金17次締切で公募されている「省力化(オーダーメイド)枠」では、設備投資前と比較して労働生産性が2倍以上となる事業計画を策定することと、事業計画期間内に投資回収可能な事業計画を策定することが要件となっています。具体的に数値で算出をしなければならないのですが、具体的にどうすればいいでしょう?今回は、投資回収可能かどうかの計算方法に関して、人件費単価の考え方と事業計画書への書き方について考察します。
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この記事に関するお断り
この記事は、事務局に問い合わせをすることなく、ぼくの独断と偏見で書いていますので、鵜呑みにはしないでください。もし事務局に問い合わせをして、この記事と異なる説明があった場合には、事務局のほうを信用してくださいね😊
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ものづくり補助金省力化(オーダーメイド)枠の労働生産性と投資回収年数の計算方法を具体的に考察する(1)
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ものづくり補助金省力化(オーダーメイド)枠の労働生産性と投資回収年数の計算方法を具体的に考察する(2)
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ものづくり補助金省力化(オーダーメイド)枠の労働生産性と投資回収年数の計算方法を具体的に考察する(3)
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ものづくり補助金省力化(オーダーメイド)枠の労働生産性と投資回収年数の計算方法を具体的に考察する(4)
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人件費単価はどうやって求めらたらよいか
投資の目的や効果によって「人件費」をどこまで捉えるかはわかる
人件費単価の求め方は、なかなか悩ましいでしょう。というのも、この度のオーダーメイドの機械装置やシステムを投資する目的や効果によって、人件費をどこまで捉えるかは変わるからです。
例えば、オーダーメイドの機械装置やシステムによって、製造業の現場の省人化が図れるのであれば、現場の人件費(つまり労務費)に重点を置いて人件費単価を出すべきです。目的や効果が現場作業に特化しているのであれば、現場の直接工の単価を出すことが合理的ですし、現場作業だけではなく現場管理の省力化や低減にまでつながるのであれば、直接工と間接工をあわせた人件費単価を求めることが合理的だと思います。(例えば新生産プロセスで不良が大幅に削減できるので、品質管理部門が担っていた不良対策コストが減るというような場合や、生産管理部門が担っていた工程管理の手間も減るというような場合は、間接工の人件費も含めるというイメージです)
また、オーダーメイドの機械装置やシステムによって、営業や事務部門の省人化やコスト削減まで意図するのであれば、販管費における給与も含めて人件費を算出するべきだと思います。
経営の意思決定の効率化やコスト削減にまでつながるのであれば役員報酬まで含めることもできそうですが、ものづくり補助金の投資でそこまでの効果が見込めるというのはちょっと考えにくいと思います。ぼくの経験則ですが、一般的に役員報酬は、特定のプロジェクトや部門レベルの投資回収期間の計算には直接関係しないことが多いと思います。
人件費単価の求め方
人件費の範囲が決まれば、人件費単価を求めるのは簡単です。以下のような考え方でよいでしょう。
- 製造業の現場の省人化中心ならば、現場の直接工の労務費÷直接工の人数
- 製造業の現場と現場管理の省人化中心ならば、(現場の直接工+間接工の労務費)÷直接工と間接工の合計人数
- 製造業の現場と現場管理の省人化だけでなく営業や事務部門の省人化まで図れるならば、(現場の直接工+間接工の労務費+営業・事務部門の給与等)÷直接工と間接工と営業・事務部門の合計人数
なお、これらの人件費には、法定福利費や福利厚生費まで含めるのが妥当だと思います。
人件費単価の計算例
製造業の現場と現場管理の省人化まで行えるというケースで、計算例を見てみましょう。製造業の現場と現場管理の省人化まで行えるというケースでは、以下の考えで人件費単価を求めるんでしたね。
- 製造業の現場と現場管理の省人化中心ならば、(現場の直接工+間接工の労務費)÷直接工と間接工の合計人数
現場の直接工+間接工の労務費は、一般的には製造原価報告書における労務費の総額と考えてよいと思います。この労務費が48,000,000円だとします。(法定福利費や福利厚生費も含んでいると仮定しています)
そして直接工と間接工の合計人数が8人だった場合、一人あたりの年間の人件費単価は6,000,000円/年になります。
人件費単価の計算では、これを時給に換算します。なぜ時給に換算するかというと、前回の記事で削減工数を時間(人時)で計算したからですね。
6,000,000円/年で、年間の操業日数が240日だとすると、1日あたりの人件費が25,000円です。1日の労働時間が8時間であれば、時給換算で3,125円/時になりました。
投資回収期間の内容と根拠は事業計画書にどのように書くべきか
では前回と今回の記事で計算した内容は、どのように事業計画書(その1)に書くべきでしょうか。これも「事業計画における付加価値額等の算出根拠」という参考様式に指定があります。そこには以下のように書いています。
人件費単価については、補助事業にかかる年間の人件費を、事業実施前の補助事業の総工程数で割ることによって算出します。補助事業による削減工数に人件費単価を乗じた数値が、年間の投資回収額となりますので、「それぞれの数値をどこから持ってきて」「どのような根拠でこれらを計算したのか」「どうしてその削減が可能なのか」等を分かりやすく説明してください。
今までの記事と、上記の指定を踏まえ、ぼくならば以下のように書きます。
本事業では、◯年目(202◯年◯月期)に投資回収が可能です。なお自動化により不良対策コストやシフト管理コストも減るので、間接工人件費も計算に含めました。ロボット・AI・センサでの自動化と多台持ちにより、5名/日かかっていた作業が2名/日で運用できるため、削減が可能です。
具体的な労働生産性の計算過程は「その3」(P9)に示します。
(以下は「その3」に記述)
項目 数値 算出根拠 投資額 50,000,000円 ㈱◯◯の見積額(税抜)より 年間削減工数 5,760人時 本文中より月間削減工数は3人月。年間では3✕12=36人月。月20日操業、1日8時間勤務として、36✕20✕8=5,760人時 人件費単価 3,125円/時 製造原価報告書の労務費(48,000,000円)÷1日労働時間8時間÷年間操業日数240日÷現場従業員数(8名)で計算。 投資回収年数 2.78年 投資額÷(削減工数×人件費単価)
電子申請の入力フォームへの記述方法
なお、その1やその3に根拠を書くだけではなく、電子申請の入力フォームに以下の情報を記入する必要もあります。
補助事業の年間人件費 | 48,000,000 |
補助事業の当初の作業工数(筆者注:おそらく設備投資前、つまり基準年度の作業工数) | 15,360 |
年間1工程あたりの人件費単価 | 3,125円 |
当該補助事業の投資額 | 80,000,000円 |
補助事業による削減工数 | 10,000 |
投資回収年数(当該補助事業の投資額÷(年間1工程あたりの人件費単価×補助事業による削減工数) | 2.56年 |
すごく気持ち悪いのは、上記の表にも見えますが、事務局の資料などでは工数と工程という言葉を混同して使っていることですね。本来は工数と工程というのは異なる考え方です。しかしどうも事務局の資料では同じ概念として扱っているようです。こういう言葉は、社会通念上一般に理解されている用法で使ってほしいですよね。
でも、これまでこのブログの記事を読んでくださった皆さんには、それぞれの項目にどういう数字を入れるべきかはおわかりいただけるかと思います。