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補助金審査での事業計画書の使い回しをAIで検出するって本当にやるつもりなの?

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おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。

1/21の日本経済新聞記事に、事業再構築補助金の運用見直しに関連して「補助金審査での事業計画書の使い回しをAIで検出する」という趣旨のことが書いてありました。ものすごく違和感を覚えたので愚痴ります。

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日本経済新聞1/21『中小企業の業態転換、補助金の支給・審査厳しく コロナ特例廃止』の記事はこちら

AIで計画書の使い回しを見抜く!?

AIで計画書の使い回しを見抜くことについては、本記事の以下の部分にかかれています。

補助金目当ての安易な申請を防ぐため、審査体制も強化する。サウナやシミュレーションゴルフなど代行業者を使った類似の事業計画が目立っていた。

特定分野に申請が集中した場合に、これを検知するシステム審査を厳格にする。AIを活用して類似案件を摘出する精度を上げ、代行業者による計画書の使い回しを見抜く。

(引用元:日本経済新聞1/21『中小企業の業態転換、補助金の支給・審査厳しく コロナ特例廃止』)

代行業者による計画書の使い回しはもってのほかです。ぼくが把握している限りでも、ものづくり補助金の初期のころ(平成26~27年度あたり)にも、そういう代行業者は存在していましたので、昔からこういう問題はあったんでしょう。それがコロナ禍で補助金バブルになったので顕在化した、ということだと思います。

しかしAIで計画書の使い回しを見抜くことなんてできるのか

昔からある使い回し問題に対策を講じる必要性は理解できなくはありません。しかしAIで計画書の使い回しを見抜くことなんて、本当にできるのでしょうか。

確かに自然言語処理(NLP)で文書のテキスト内容を解析して類似性を識別し、さらには画像認識技術で文書のレイアウトや構造を解析し、類似のパターンを検出すれば、事業計画書の使い回しは、技術的には検出可能かもしれません。

しかし、べらぼうにコストがかかるのではと思います。こうした「使い回し検出システム」の開発には、データサイエンティストやエンジニアが必要です。これらの専門家の採用または外部委託には高額な費用がかかるでしょう。データの前処理も必要でしょうし、インフラとしてデータベースシステム用の高性能なサーバーやクラウドベースのストレージも必要かもしれません。事業計画書には、その企業にとっての機密性のある情報も書かれているでしょうから、セキュリティ対策も必要です。いくらかかるか想像もつきませんが、百万や二百万程度じゃ済まないでしょう。

コストを抑えるために、画像処理は無くして、単に事業計画書のタイトル(30文字程度で書くことが義務付けられている)や概要(100文字程度で書くことが求められている)だけを見て、使い回しを検出するのであれば、AIシステムは多少簡素化できそうです。でもそれだと検出精度が低くなるし、不正を行う側も対策しやすくなるでしょう。

技術的に可能なのはわかりますが、費用対効果や政策優先順位を考慮すると、そういうシステムを作る意味って本当にあるのかな?と思います。

AIを使うのであれば、もっと広い社会的課題に応用すべきではないか

たしかに補助金の事業計画書の使い回し検出にAIを使うことは、技術的には可能かもしれませんし、不正を予防する効果もあるでしょう。仮に予算化可能なコストだったとしても、AIの活用可能性を考えると、より広い社会的課題へ応用を優先すべきと思います。

自治体におけるAI活用・導入ガイドブックでは、行政機関がどのようにAIを利活用しているかの事例が載っていますが、道路管理(老朽化した路面の発見)とか児童虐待対応支援とかに用いられています。こうした課題解決にAIを使うならまだしも、人命にも安全にも福祉にも関わらない補助金の事業計画書の使い回しの検出を目的とするのは、政策としての優先度が低いと言わざるを得ません。

事業計画書の使い回しの検出にAIを使うことは、根本原因に対する対策とは言えない

そもそも使い回しのような不正が起きる原因は、補助金を公募するというシステムにあります。数万件もの事業計画書を審査するには、審査員も数百人体制が必要です。「大量の人が大量の計画書を、個別に審査する」となると、類似の案件を見つけられる可能性は薄くなるのは当然です。こうした制度の穴をついて不正が行われているわけです。その制度自体を是正せずに、使い回し検出システムを作るというのは、対処療法に過ぎません。

使い回しの件だけではありません。最近の補助金の公募要領を読むと、不正に対する警告が満載ですが、そもそも補助金制度にはプリンシパル・エージェント問題の典型的な力学を見いだすことができ、構造的に不正が起きやすいのです。

さらに補助金は、それを受け取りたいという動機を強めすぎることにも問題があります。このため一部の申請企業や代行業者、メーカー・商社が、補助金を確実に獲得するために、不正な手段を取ろうとするのです。

こうした根本的なメカニズムに手を加えるか、そもそも補助金を交付するという政策を続けてよいのかを見直さない限りは、どんなに対処療法を積み重ねても、不正がなくなることはないでしょう。

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