おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
「リスクベース思考」とはどういうもので、どのように企業の日々の仕事に組み込まれて、どういう利点があるのかを解説する連載の2回目です。今回はISOマネジメントシステムで、リスクベース思考をどのように扱うのか具体例を説明します。
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宇宙一わかりやすく解説 リスクベース思考とは一体何なのか?(1)
おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。 ISO 9001や14001では、2015年版になったときから「リスクベース思考」が強調されています。「リスクベース思考」とはどういう ...
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今回の記事の参考文献(ISO公式資料)
Risk Based Thinking in ISO 9001:2015
リスクベース思考の2つの切り口
ではここからは、ISOマネジメントシステムでは、リスクベース思考をどのように扱うのか、具体的に説明してみましょう。ISO(国際標準化機構)のホームページにある資料を見ると、リスクベースの思考には、2つの切り口があるような口ぶりで書いています。一つがシステム全体レベルでのリスクベース思考、そしてもう一つは個々のプロセスレベルでのリスクベース思考、とここでは名付けましょう。
システム全体レベルでのリスクベース思考
システム全体レベルでのリスクベース思考とは、具体的にはどういうものでしょうか。これは、システム全体にわたってリスクを考慮して取組を行っていくことです。
例えばISO9001の品質マネジメントシステムでは、新人作業者のスキル不足やお客様の「流出不良ゼロ」という要求など、組織の状況や利害関係者のニーズからリスクを特定します。
このリスクに対して、適切な作業手順の明確化、ベテランによるOJT、検査の強化などの対策を計画します。
また、ミスをどれだけ減らすかという目標も立てます。
そうしてこれらの対策を現場で実施し、結果…つまり新人のいる工程のミス発生件数が減っているのかを確認しますが、同時にお客さんの要望でもある流出不良件数がどうなったのかも見ます。
評価結果を見て、うまくいっていないことがあれば改善をします。取組の結果はトップにも報告をします。このように、リスクを特定し、評価し、対策を取り、その結果を見て次の対応を取るという一連の流れを、このようにマネジメントシステム全体に渡って取り組んでいくことが、システム全体レベルでのリスクベース思考です。
個々のプロセスレベルでのリスクベース思考
もう一つの観点、個々のプロセスレベルでのリスクベース思考では、各プロセスのリスクを評価して、適切な管理レベルを決めます。
例えばうどんを作るプロセス(つまり業務や作業)を考えてみましょう。
特に「こねる」というプロセスは、前工程の「まぜる」工程で仕上がった、ぼそぼそとした小麦粉のダマを元に作業をします。この工程では、いろいろな道具を使い、決められた作業者が、決められた作業方法で仕事をします。その結果、丸くまとまった生地ができます。これを次工程の「ねかす」工程へと送るわけです。
このプロセスが、もし、品質上とてもリスクの高いプロセス…つまりこのプロセスの結果次第でうどんの最終的な出来栄えが大きく左右されるようなプロセスなのであれば、使う道具は結構な頻度で点検したりメンテナンスしたりする必要があるでしょう。作業者も、選りすぐりの熟練作業者を確保する必要があるでしょうね。手順書も、詳細に、たくさん作ったほうがよいかもしれませんし、品質評価基準も厳格でなければならないでしょう。
一方、このプロセスがリスクの低いプロセスなのであれば、そうした準備は最低限でよいでしょうね。このように、管理レベルのメリハリを考える上で、リスクの大小を考慮する、というのが、個々のプロセスでのリスクベース思考と言えるでしょう。
次回は、リスクベース思考を取り入れることの利点を説明します。