おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
11月22日、政府は2024年の新しい経済対策を閣議決定しました。経済対策における中小企業施策について、経産省系のものを中心に、ざっと紹介します。
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国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策~全ての世代の現在・将来の賃金・所得を増やす~
経済対策本文および資料
経済対策本文
中小企業政策の全体的な方向性
この度の経済対策における中小企業政策の全体的な方向性は「賃上げのために、中小企業の生産性向上や経営革新を図る」という一点に尽きます。
これは今年からそうなったのではなく、ここ数年同様の動きです。そういう意味では、今年の中小企業政策の方向性にも大きな変更はなく、既定路線でいくということですね。
第2章第1節「1.賃上げ環境の整備」(概要)
業務改善や設備投資の支援を強化し、賃上げ(特に最低賃金の引き上げへの対応)を支援するということが書かれています。
施策例として、以下のものが挙げられています。
- 最低賃金の引上げに向けた環境整備を支援する業務改善助成金(厚生労働省)
- 事業環境変化対応型支援事業(経済産業省)
- 令和6年度税制改正で拡充した賃上げ促進税制の活用促進(経済産業省)【その他】
- 中小企業取引対策事業(経済産業省) ・価格転嫁円滑化の取組に関する調査(公正取引委員会)
- 価格転嫁対策等の広報強化(公正取引委員会)
- 下請法改正の検討(公正取引委員会)【制度】
- 近年の資材価格の高騰の影響等を考慮した公共事業等の実施(国土交通省)
- 建設産業・不動産業の生産性向上のための市場環境整備等(国土交通省)
- 中小企業の成長投資・生産性向上投資・省力化投資等の一体的な支援(経済産業省)
- 中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金(経済産業省)
- 製造業・サービス業の人手不足解消に資するロボット開発環境の構築(経済産業省)
- 地域未来投資促進法等を活用した土地利用転換手続の迅速化(経済産業省、国土交通省)【その他】
- 地域未来投資促進税制の活用促進(経済産業省)【その他】 等
- 事業承継税制の特例措置における役員就任要件等の見直しの検討(経済産業省)【税制】
- 中小企業活性化・事業承継総合支援(経済産業省)
- 「早期経営改善計画策定支援」を活用した民間金融機関による経営改善支援の促進(経済産業省)
- 民間金融機関のプロパー融資を引き出す新たな保証制度(経済産業省)
- 経営改善サポート保証制度(経営改善・再生支援強化型)(経済産業省)
- 日本政策金融公庫等による資金繰り支援(内閣府、財務省、厚生労働省、経済産業省)
- 事業再構築法制の整備(経済産業省)【制度】
- 売上100億超への成長を目指す中小企業へのファンド出資(経済産業省)
- 売上100億超への成長を目指す中小企業への設備投資支援(経済産業省)
- 国際協力銀行(JBIC)による地方創生に資する中堅・中小企業向け金融支援(財務省)
- 生活衛生関係営業物価高騰等対応・経営支援事業(厚生労働省) ・事業環境変化対応型支援事業(経済産業省)<再掲> ・小規模企業振興基本計画の変更(経済産業省)【その他】 等
このうち、前年から変更があると思われるものを中心に解説をします。
生産性革命促進事業は省力化投資と一体的に予算化されるのではないか
上記の施策例を眺めていると「中小企業の成長投資・生産性向上投資・省力化投資等の一体的な支援(経済産業省)」という記述が目に止まります。
中小企業の成長投資・生産性向上投資というのはおそらく、中小企業生産性革命促進事業(ものづくり補助金・持続化補助金・IT導入補助金・事業承継引き続き補助金の総称)で、省力化投資とは中小企業省力化投資補助金のことを指していると思われます。これの「一体的な支援」と書いていることから、これらの施策の予算が一体化されるのではないかと思われます。
実務上はあまり変更はないと思いますが、補助金の申請状況や政策の意図に応じて、一体化された予算内での配分の自由度が高まるのではないかと思います。
「製造業・サービス業の人手不足解消に資するロボット開発環境の構築」は新補助金制度ではないか
「製造業・サービス業の人手不足解消に資するロボット開発環境の構築」というのは、新補助金制度ではないかと思われます。
統合イノベーション戦略2024(2024年6月4日閣議決定)では「自動化・省力化については、単に人手不足の解消に留まらず、製造業のDX化に資するロボットシステムの研究開発の促進や導入拡大を図るとともに、国際的にロボット・AI分野の開発・実装が高速化する中で、これらの分野において、製造業のみならずサービス業を対象とした産業界や研究機関、地方公共団体等が参画するハイサイクル・イノベーション・プラットフォームを構築し、我が国の産業を牽引していく。」ことが明記をされています。
単なる省力化のためのロボット開発ではなく、もっと革新的な開発行為に対する補助金制度が作られるのではないかと予想しますが、どうでしょうか。
「事業再構築法制の整備」は事業再構築補助金の継続ではない
「事業再構築法制の整備」という言葉が見られることから、一部の補助金コンサルが「事業再構築補助金が継続されるのではないか」と予想しているようですが、これは事業再構築補助金の継続ではないと当社では考えます。
現在、債務の減免等を行う手法の一つである現在の私的整理では、全ての貸し手の同意がなければ債務の減免等の権利変更ができないという課題があります。これを、対象債権者の多数決(例えば、総議決権の2/3以上の議決権を有する対象債権者の同意)で可決できるようにする法の整備が新しい資本主義実現本部で検討されています。
事業再構築補助金については、経済対策2024の中で言及されていないことから、今後は継続しない(直近の第12回公募をもって終了)と当社では予測しています。
「中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金」は継続
今年、界隈を賑わせた「中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金」は継続するようです。これは中小企業というより中堅企業を対象とした補助金ですが、最近政府は中堅企業支援に力を入れているので、継続することは大いに予想できたことです。
3.「投資立国」及び「資産運用立国」の実現 ~将来の賃金・所得の増加に向けて~
(サイバーセキュリティ) サプライチェーン全体でのサイバーセキュリティ対策を強化するため、安全なIoT製品の流通を促進する制度や企業が業種・規模に応じ満たすべき対策の水準を可視化するための制度を整備するほか、中小企業のサイバーセキュリティの取組を促進する。
これに対して「サプライチェーン・サイバーセキュリティ対策強化(仮称)(経済産業省)【制度】」という施策例が挙げられています。これも名称こそ変わっていますが、前年の「産業サイバーセキュリティ対策の強化に向けた環境整備事業」の継続だと基本的には理解ができそうです。
農林水産物・食品の輸出額を 2030 年に5兆円とする目標達成に向けた輸出支援、中堅・中小企業の新規輸出1万者支援プログラムを通じた販路開拓支援を行う。
これもこれまでの施策の継続ですね。
第2節 物価高の克服 ~誰一人取り残されない成長型経済への移行に道筋をつける~
・ 事業者については、特別高圧やLPガスを使用する中小企業、飼料等を使用する農林水産事業者、地域観光業のほか、医療・介護・保育施設、学校施設、商店街・自治会等に対し、エネルギー価格や食料品価格等の物価高騰に対する支援
これも中小企業等エネルギー利用最適化推進事業の継続だと思われます。