おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
ISO 42001各箇条解説シリーズ、箇条4.4「AIマネジメントシステム」を詳しく解説します。マネジメントシステムとは何か?や、実際にどう設計し、運用し、維持・改善していくのかを順を追って解説します。
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ISO42001 箇条4.4の位置づけ
箇条4.4の位置づけから確認しましょう。
箇条4.3で適用範囲(スコープ)を決定した後、その範囲内で「AIマネジメントシステム」を確立し、実施し、維持し、継続的に改善せよ――というのがこの4.4の主旨です。ここでいう「確立」「実施」「維持」「改善」とは、それぞれマネジメントシステムのPDCAサイクルを回すステップそのものです。ポイントは、このサイクルをただ回すのではなく、AIシステム特有のリスクや要件に即した仕組みを最初にきちんと構築し、運用の中で検証・見直しを行いながら、信頼性を高めていくことにあります。
そもそも一般的に「マネジメントシステム」とは何か
箇条4.4の要求事項は、一つしかありません。それは、マネジメントシステムの確立・実施・維持・改善をすることですね
そもそもマネジメントシステムとは、いったい何のことでしょうか?企業では、いろいろな仕事や業務、作業が互いに関連しあって、大きな仕事を進めるためにまとまっています。
例えば製造業では、お客さんに喜んでもらえるものづくりのために、設計開発の部署があったり、製造の部門があったり、営業がいたり、総務や経理の担当者もいます。こうした人たちは、バラバラに好き勝手に仕事をしているわけではありません。営業が聞いてきた情報に基づいて製品が設計され、その設計に沿って工場で製造され、製造されたものはトラックなどで運ばれ、納品後に経理が請求書を出す――というように、すべての仕事がつながっています。
このように、いろいろな仕事や業務、作業と、それらのつながり全体を一つの“仕組み”として整えたものを「マネジメントシステム」といいます。そしてこのマネジメントシステムは、会社の目的、たとえば「お客さんのため」「社会の発展のため」「従業員の幸せのため」といったものを達成するために、整えられて、運用していくものです。
「AIマネジメントシステム」とは何か
じゃあ「ISO 42001」のAIマネジメントシステムは、どういうものなのでしょうか。これはズバリ、この図のようなものですね。
この図には、青い箱と緑の箱がありますよね。青い箱は「4.1」とか「6.1.2」などのように番号が振られています。これはISO 42001という規格が求めている管理上のプロセスを意味しています。一方、緑の箱は「データ収集」「モデル学習」「システム運用」といった、AIシステムやサービスを実際に設計・開発・運用するための技術的な業務プロセスを表しています。
このように、AIに関する仕事・業務・作業(=すなわちプロセス)をまとめたものが「AIマネジメントシステム」です。そして、それぞれのプロセスがバラバラにあるのではなく、お互いにつながりあって、一つの仕組みとして目的に向かって動くように設計されるものです。
このマネジメントシステムを構築し、運用していくことで、企業は「信頼できるAIシステムの開発・提供」や「社会的責任のあるAIの活用」といった目的に近づいていくことができるのです。そして箇条4.4の規格要求事項が求めているのが、この図のようなマネジメントシステムを作って動かしなさい、ということです。
反対に言えば、プロセスのつながりが不明瞭だったり、必要なプロセスが抜けていたりする状態では、マネジメントシステムとは言えません。そうした状態で仕事を進めるのは、いわば「場当たり的に仕事をする」ようなものです。