おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
いろんな企業で是正処置を見ていると「研修(教育訓練)を行う」というのが再発防止策として選ばれているのを目にします。ある意味「定番」なのですが、本当に研修(教育訓練)は再発防止策になりうるのでしょうか?
スポンサーリンク
そもそも「是正処置」とはなにか
本題に入る前に、そもそも「是正処置」とはなにかをおさらいしておきましょう。
品質マネジメントシステムの基本及び用語を示した規格(JISQ9000:2015)によると、是正処置は次のように定義されています。
不適合(3.6.9)の原因を除去し、再発を防止するための処置。
不適合というのが、起きてしまった何かの問題(例えば不良やクレームの発生、事故の発生など)のことですが、この原因を除去し、再発を防止するための処置(取り組み)ということですね。
「是正処置」は、起きた原因(真因)への対策でなければならない
この定義を読むと、「是正処置」は、起きた原因への対策でなければならないことがわかります。
航空機事故のことを想像してもらうとこの辺はわかりやすいのですが、事故が起きたら、事故調査委員会(日本の場合は国土交通省の運輸安全委員会)が、ボイスレコーダーやフライトレコーダーを調べたり、事故を起こした機体を調べたり、乗務員や目撃者に聞き取りをします。
そのうえで、事故が起きた原因を調べるのですが、例えば人事院のこの資料では、運輸安全委員会による原因分析について、このように記述しています。
運輸安全委員会が行う事故調査は、「誰が悪かったか」という責任追及が目的ではなく、「どうすれば事故を防げるか」という観点に立ち、科学的かつ客観的に行うとともに、組織問題などの事故の背景まで深く掘り下げて行うこととしています。
(太字強調筆者)
単に「操作をミスった」という原因にとどまることなく、その原因が起きたさらに深い原因——例えば組織や風土の問題——までも掘り下げる、と言っています。ここでいう掘り下げられた原因を一般的には「真因」といいます。この「真因」に手を打たなければ、事故などは再発の可能性があります。
例えば「操作をミスった」という原因も、深くたどっていけば「定時運行のプレッシャーがきつい職場だった」から「ちょっとの遅れをリカバリーしようと焦って」しまい、その結果「操作をミスった」という原因のつながりがありえるわけです。このときにどんなに「操作をミスらないように気をつけよう」といったところで、その根本にある「定時運行のプレッシャーがきつい職場」であることがかわらなければ「操作をミスる」ということは起こり得るわけです。したがって「安心して働ける職場」(最近のトレンドでは「心理的安全性」といいます)を作ることが再発防止策に組み込まれるべきなのです。
したがって再発防止を確実にするには真因に手を打たなければならない、ということですね。
「研修(教育訓練)」は真因に対する対策になりうるのか
ここで疑問となるのは、「研修(教育訓練)」は真因に対する対策になりうるのか、ということです。もちろんどういう原因が特定されたのかによるのですが、「研修(教育訓練)」が是正処置であるためには「研修(教育訓練)が行われていなかった」ということが真因として分析されていなければならないでしょう。
ただ、個人的実感としては、「研修(教育訓練)が行われていなかった」ということが真因となりうるかといえば、かなりのレアケースではないかという気がします。一般的に事故や不良というのは、設備などに物理的な問題があったか、確認や管理の仕組みがふじゅうぶんであったか、もしくはヒューマンエラーかで起きることが多いように思います。ヒューマンエラーも研修の有無が原因で起きるというよりは、単純作業で漫然としていたとか、変化点を見落としていたとか、納期に追われて焦っていた、というような原因で起きることが多いように思います。
無論、「研修(教育訓練)が行われていなかった」ということが真因となることは理屈の上では必ず存在します。しかし、現実には不良や事故が起きる原因はもっと混み入っているのではないかと思います。
次回に続きます。