おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村です。
ISO42001各箇条解説シリーズ、今回は箇条5.1「リーダーシップとコミットメント」について解説します。リーダーシップとコミットメントって何?どこまでをトップ自らやる必要があるの?という疑問に答えながら、実務で押さえるべきポイントをわかりやすく整理します。
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ISO42001:2023 5.1 規格の中で最も重い!?トップに求められる責任とは(1)
おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村です。 ISO42001各箇条解説シリーズ、今回は箇条5.1「リーダーシップとコミットメント」について解説します。リーダーシップとコミットメントっ ...
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規格が求めるトップの責任
規格では、トップのリーダーシップとコミットメントについて、8つのことが求められています。この8つのやるべきことは、大きく2つのグループに分けることができます。
一つは、トップが自らやるべきことです。これは、規格要求事項の文章として「~する」という書き方で終わっているものです。これについてはトップが自らやるべきことで、他の人に任せる事はできません。
一方、もう一つのグループは、トップが誰かに任せることができることです。こちらは文章の語尾が「~を確実にする」という書き方で終わっています。こちらは、トップ自らがやらずに、誰か他の人に任せてもOKです。ただ、任せっぱなしではダメで、それについてトップは自分の言葉で説明ができなければなりません。
例えばですが、AIについての方針と目標を立て、それらを戦略と一致させることは、誰かに任せることができます。一般的に目標というのは、各部門の目標は、各部門長が決めるものですよね。わざわざトップが全ての部門の目標を自ら立てるってことはないですよね。このように目標設定は任せることができるのですが、トップはそれについて説明ができないといけません。「これは各部門長が勝手に立てた目標だから、私は知りません。部門長に訊いてください」という態度はダメですよ、ということですね。
AIマネジメントシステムにおけるリーダーシップ・コミットメントの実例
では、AIマネジメントシステムにおいては、どのようなリーダーシップとコミットメントが考えられるのか、いくつかの例を説明しましょう。
まず、「周知」の観点です。トップは「AIをちゃんと管理してね!ISO 42001の要求事項を守ることは大切やで!」というメッセージを、組織内にしっかり繰り返し伝えていく、というようなことですかね。「AIはなんでもありじゃないよ!」という価値観を、社内に培うことがトップに求められます。
続いて、「支援」です。現場では判断が難しい場面があるはずです。例えばAIが性別や国籍などに偏った出力をした場合、現場では「修正すべきか、それとも許容範囲か」と判断に迷うことがあります。そうしたときに相談できる窓口を設け、必要に応じて弁護士の意見も踏まえて対応できるような社内体制を整えることも、トップの責任です。
ここまでの2つは、トップが自らやるべきことですね。
次の例を見てみましょう。これは「方針」の例です。例えば、生成AIを使ったサービスにおいて、「差別的な表現を出力しないこと」という方針を掲げて、それを示すこともトップの責任の一つです。
続いて「リソース」です。AIの開発には、人や予算、ソフトウェア、開発環境など、さまざまなリソースが必要です。現場でそうしたリソースが不足していないか、リソースがほしいというニーズがあるかを、タイムリーに把握できるような体制を構築することも、具体的な行動ですよね。
この緑の箱の2つは、トップが権限を移譲できることですが、説明責任は果たさなければなりません。
このようにして、トップはリーダーシップとコミットメントを発揮し、AIマネジメントシステムの有効性を支えることが期待されています。
箇条5.1は「ISO42001の中で最も重い」
2回にわたりISO 42001 箇条5.1の要求事項を解説しましたがいかがだったでしょうか。
今回の解説を一言でまとめると、この箇条は「ISO42001の中で最も重い」と個人的には思います。絶対に軽視はできないでしょう。
トップが積極的に関与しない、現場任せのものが、うまくいくはずありません。仏作って魂入れずという言葉がありますが、トップのリーダーシップとコミットメントは、まさにマネジメントシステムにおける魂の部分だと思います。
ここが、マネジメントシステムが有効に機能するかを決めるといっても言い過ぎではないと思いますので、しっかりと取り組んで頂きたいと思います。