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ものづくり補助金では早い締切・早い公募に申請するほうが採択されやすいのか?

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おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。

今年のものづくり補助金公募を前にして「早く申請をするほうが有利である(採択率が高い)」と喧伝するコンサルタントの発言を、ツイッターやブログ等で目にすることがあります。本当かな?という気がしたので、過去のデータから分析をしてみたいと思います。結論としては(僕の発言も含めて)コンサルの喧伝には気をつけて!ということです。

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発言の前提として、今年のものづくり補助金公募は、一度の公募で締め切りが複数回ある可能性

そもそもなぜコンサルさんたちは「早いほうが有利だよ」などと言っているのでしょうか。それは昨年12月28日、中小企業庁から公表された「事前予告」の内容に基づいていると思われます。

事前予告の告知ページの一番最後に、次のようなことが書かれています。

なお、事業者の事業実施期間を可能な限り長く確保する観点から、上記公募の際には、2か月の公募期間を設けるほか、早期に公募を締め切って審査し、採択発表を速やかに(可能ならば年度内に)行うことを検討中です。また、夏以降に2次公募を行うことも予定しています。

2カ月の公募期間を設けつつ、早期に公募を締め切るってどういうこと?と思われるでしょう。これは、平成24年度補正・平成25年度補正で行われたような、「1次公募1次締切」「1次公募2次締切」のことを指しているのではないかと僕は見ていますし、多くのコンサルさんもそのように解釈しているようです。

「1次公募1次締切」「1次公募2次締切」とは何かというと、下記の図を見てもらったらよくわかるのではないかと思います。1次公募の期間中(おそらくこれが2カ月という公募期間のこと)に、2度の締め切り日を設けるということです。同じ公募内ですので、「1次公募1次締切」に応募して不採択の人は、「1次公募2次締切」には応募はできないでしょう。

なぜこのように、2度も締め切り日を設けるのかは、中小企業庁の事前予告に書かれています。それは「事業者の事業実施期間を可能な限り長く確保する」ためですね。上記の図を見ると、1次公募1次締切は3月末に採択発表予定です。すると交付決定も、早ければ4月中から可能になると思われます。市場では、工作機械の受注がひっ迫していることから、工作機械の納期が1年近くかかるというケースが多くみられました。一方、補助金はというと、行政の予算単年度主義により、早く交付し終えないといけないことがあって、事業実施期間が短いままです。現場からは「こんな短い期間内に工作機械は入れられない」という声があがっていましたので、その対策のために、複数回の締切制度を復活させるのでしょう。

ところで、コンサルさんの分析の中には「早期に締め切る」という言葉に過剰に反応して「今年の公募期間は短い」と喧伝しているものもあります。しかし「公募期間が2ヶ月」ともはっきりと中小企業が述べています。公募期間が2カ月というのは、過去のデータを見ても標準的な公募期間ですので、今年の公募が特別に短いということはないと考えるのが自然です。ここからも「早期に締め切る」と述べている中小企業庁の意図は、公募期間そのものの長さではなく、やはり「1次公募1次締切」「1次公募2次締切」制度のことを指していると思われます。

さて本題。早い締切に応募するほうが有利なのか?

では今日の本題です。幾人かのコンサルさんが「早く応募するほうが有利」と述べていますが、本当にそうでしょうか。過去の例(平成24年度補正・平成25年度補正)を見たいと思います。1次公募1次締切を赤線で、1次公募2次締切を青線で示しています。

どうでしょうか?どちらも青線(1次公募2次締切)のほうが、採択率は高いですね。まあもっとも、平成24年度は誤差の範囲と言ってもいいと思いますが。少なくとも過去のデータからは「早い締切に応募するほうが有利」という証拠は見出せません。

1次公募と2次公募で比べてみたらどうだろうか?

どうして「早いほうが有利」などと言うのかというのは、これは僕の推測ですが、平成27年度補正での公募のイメージが、そのようなコンサルさんには強く印象に残っているのだと思います。というのも、平成27年度補正では、1次公募の採択率が32.2%だったのに対し、2次公募の採択率はたった8.4%だったからです。ここから「早いほうが採択率が高い」という固定観念が根付いたのではないかと推測します。後述しますが、平成27年度は特別な事例であったとみるべきです。

全体的なデータを見ると、必ずしも2次公募のほうが採択率が低いとは言えません。以下の年は、1次公募よりも2次公募のほうが採択率が高くなっています。

  • 平成24年度補正
  • 平成26年度補正

平成27年度補正が特別な事例ですので、2次公募のほうが採択率が低かった年は3か年ですね。そういう点では1次公募も2次公募も、だいたい拮抗しています。つまり、早いほうが有利なケースもあるし、そうでないケースもあるというのが、最も事実に近いと思います。もっというと採択率は、全体の予算額や補助率(1/2なのか2/3なのか)であったり、公募の期間や事業実施期間にも大きく左右されるので、単純に1次だから、2次だからと言い切れるものでもありません。

ところで、どうして平成27年度の2次公募はこんなに採択率が低かったのでしょうか。平成27年度補正は、当初は「原則公募は1回」と告知されていました。

しかし、予算が思いのほか余ったため、急に2次公募が7月から始まったのです。平成27年度2次公募の公募要領にもはっきりと「予算の残額でやる」と書いていますね。残額なので、全国でも100件程度しか採択しませんと、ご丁寧に書いています。ちなみにこのような理由から、この年の2次公募は事業実施期間も2ヶ月程度しかありませんでした。

このような特殊な事情であったため、採択率が8.4%と極端に落ちたのだと思います。通常の2次公募とは事情が異なる、特殊なケースとして見るほうがよいでしょう。

今年(平成31年度実施)のものづくり補助金では、早いほうが有利になるか?

では、今年(平成31年度実施)のものづくり補助金では、早いほうが有利になるでしょうか。それは今の時点ではわかりませんが、過去のデータから見ると、必ずしも早いほうが有利とはいえないということははっきりとわかります。今年は「2次公募までやります」と事前予告にも書かれていることから、平成27年度のように2次公募の採択率が極端に下がるということはないでしょうし、1次公募で予算を使い果たすということもないと思います。そういう点からも、1次公募1次締切だろうが1次公募2次締切だろうが、あまり関係はないのではないかと僕は見ています。

一つ皆さんに理解していただきたいことがあります。それは、補助金にあわせて事業のスケジュールを変えることは極力避けてください、ということです。皆さんは必要があって機械装置等を購入するのだと思います。早いほうが現場の作業も楽になるでしょうし、ユーザーの要望も早く満たすことができるでしょう。一方、資金繰りの関係などもあるので、経営としての適切な投資タイミングもあるでしょう。このような経営上、事業上の理由を優先して、いつの公募に応募するかを決めて下さい。現場が苦しんでいるのに補助金のために投資を遅らせたり、資金繰りが苦しいのに無理して早く投資することは本末転倒です。

補助金申請時期はあくまでも、事業の適切なタイミングを優先して考えてください。少なくとも、僕の言っていることも含めて、コンサルの喧伝に安易に乗せられないようにしてくださいね?

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