おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
先日公表された2019年実施ものづくり補助金1次公募分析をします。今日は個人事業者の採択動向を分析したいと思います。
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採択者に占める個人事業者の割合は6%程度
個人事業者の採択率がどの程度かを調べる方法は簡単です。ものづくり補助金の採択企業一覧表をExcelに変換して、法人番号が空欄の事業者の数を数えればよいのです。その数を採択企業の総数で割ると、採択者に占める個人事業者の割合を求めることができます。これで数えると、個人事業者の採択数は502件でした。都道府県別の個人事業者採択数も下記に記します。
総採択数 | うち個人事業主 | |
---|---|---|
北海道 | 193 | 10 |
青森県 | 38 | 0 |
岩手県 | 56 | 3 |
宮城県 | 73 | 7 |
秋田県 | 48 | 3 |
山形県 | 145 | 9 |
福島県 | 88 | 11 |
茨城県 | 206 | 21 |
栃木県 | 131 | 7 |
群馬県 | 165 | 5 |
埼玉県 | 293 | 24 |
千葉県 | 206 | 19 |
東京都 | 614 | 74 |
神奈川県 | 281 | 15 |
新潟県 | 210 | 10 |
富山県 | 126 | 9 |
石川県 | 99 | 8 |
福井県 | 85 | 1 |
山梨県 | 36 | 3 |
長野県 | 233 | 8 |
岐阜県 | 177 | 18 |
静岡県 | 362 | 27 |
愛知県 | 503 | 22 |
三重県 | 121 | 2 |
滋賀県 | 76 | 10 |
京都府 | 135 | 5 |
大阪府 | 638 | 30 |
兵庫県 | 348 | 21 |
奈良県 | 97 | 9 |
和歌山県 | 69 | 3 |
鳥取県 | 25 | 1 |
島根県 | 41 | 5 |
岡山県 | 192 | 7 |
広島県 | 202 | 14 |
山口県 | 98 | 3 |
徳島県 | 57 | 3 |
香川県 | 97 | 4 |
愛媛県 | 115 | 1 |
高知県 | 44 | 4 |
福岡県 | 229 | 23 |
佐賀県 | 53 | 6 |
長崎県 | 89 | 15 |
熊本県 | 92 | 6 |
大分県 | 82 | 6 |
宮崎県 | 94 | 3 |
鹿児島県 | 57 | 3 |
沖縄県 | 42 | 4 |
合計 | 7461 | 502 |
ただし、なぜか総採択数が7,461件になります(7,468者というのが中小企業庁・全国中央会のホームページで記された採択者数でしたが)。僕が数え間違いをしているかもしれないので、何か気が付いた方がいればご指摘ください。
過去の公募との比較
今回の公募と、過去2回の公募・締め切りにおいて調べてみました。
公募 | 個人事業者数 | 全体採択数 | 採択率 |
---|---|---|---|
H29年度補正1次 | 522 | 9,443 | 5.5% |
H29年度補正2次 | 197 | 2,452 | 8.0% |
H30年度補正1次 | 502 | 7,461 | 6.7% |
総計 | 1,221 | 19,356 | 6.3% |
そもそも日本国内に個人事業者数はどの程度あるかという論点がありますが、中小企業白書によると、2009年の時点で個人事業者数は約240万者です。これは国内の企業総数の55%を占めます。
もちろん、規模が小さいとそもそも設備投資の機会が少ないというのは大きな要因なのは間違いありません。事務処理の煩雑さや、コンサルに支払う資金の余裕の面から、はなから諦めている可能性もあります。しかし国内企業数の半数以上が個人事業者であるにもかかわらず、ものづくり補助金の採択企業のうち6%程度しか個人事業者がいないということから、「ものづくり補助金では個人事業者の採択者数は、全体の割合と比して少なすぎる」と言ってもよいのではないかと思います。
個人事業者は不利なのか?
データから見ると「少なすぎる」と言えそうですが、個人事業者はものづくり補助金の公募では不利なのでしょうか。
これは私見ですが、個人事業者が不利というより、規模の小さな事業者が不利だ、という見方もできます。どういうことかというと、ものづくり補助金の審査項目と関連があります。審査項目の中には次のようなものがあります。
技術面④ 補助事業実施のための体制及び技術的能力が備わっているか。
事業化面① 事業実施のための体制(人材、事務処理能力等)や最近の財務状況等から、補助事業を適切に遂行できると期待できるか。金融機関等からの十分な資金の調達が見込まれるか。
この項目によると、事業実施のための体制と財務状況、そして資金調達の可能性が審査されることがわかります。この3点は一般論として、規模の小さな事業者には不利と言えます。個人事業者をはじめ「体制」と呼べるだけの組織構造を持てる企業がどの程度あるでしょうか。また財務状況も、一般的には規模が小さいほど厳しいです。下記のデータは中小企業庁が発行している小規模企業白書からのデータですが、経常利益率は規模の大きさと大きな相関があることがわかります。
小規模事業者であることは加点要素にもなっていますが、このデータを見る限り、「ゲタ」として有効に機能しているとは言えないのではないかと言う疑念がよぎります。
誤解を恐れずに言うと、ものづくり補助金の審査項目は、比較的大きな規模の企業が点を取りやすく、そうでない企業は点が採りにくいという設計になっていると言えるのではないでしょうか。このあたりが理由となって、個人事業主の採択率が低く表れているのだと思われます。
個人事業者の採択事例には歯科医が目立つ
ところで、個人事業者の採択者リストを見ていて気づいたことに「歯科医が多いなあ」というものがあります。気になったので、平成29年度補正1次公募採択者数のうち、個人事業者の歯科医がどの程度あるかを手作業で数えたところ132者程度ありました。平成29年度補正1次公募採択者で個人事業者は522者ですので、実に25%程度が歯科医だったということですね。
これは必ずしも、歯科医が経営革新に積極的だということを意味しないと思っています。前述のように財務状況が審査項目になっているので、個人事業者のうち比較的財務状況が良好な歯科医の採択が、結果的に多くなっているのではないかと推察できます。
この点からも、財務状況が審査上で重視されている可能性が感じ取れますね。
不公平だ!と思われるかもしれません。僕も同じような気持ちですが、少なくともデータ・数字から言える可能性の一つとしてはこういうことだ、ということですね。