おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
12月1日、政府は成長戦略会議を開催し、実行計画を決定しました。この実行計画の裏付けは第3次補正予算であり、来年1月中の予算成立をもって執行される予定ですが、中小企業政策としてはどのようなものがあるでしょうか。連載第1回めです。
スポンサーリンク
成長戦略会議実行計画はこちら
成長戦略最大の目標は「経済成長率上昇」。そのために「労働生産性向上」を目指す
まず成長戦略が何を目指しているかを抑えておきましょう。成長戦略実行計画3ページに記述があるように、国が目指しているのは「経済成長率の上昇」です。そのためには「労働参加率の上昇」「労働生産性上昇」を目指すとあります。中小企業政策は後者「労働生産性の上昇」を目指すための手段と位置づけられています。つまり、今後行われる中小企業政策は、労働生産性の向上を目的として行われると理解してよいでしょう。ここで言う労働生産性とは、GDPを就業者数で割ったものです。
また、第4章には次のような記述もあります。
新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中、前向きな取組を行う意欲のある中小企業・中堅企業については、危機的状況に追い込まれてようやく新規事業等に取り組むのではなく、可能な限り手前のステージにおいて、規模拡大、新分野展開、業態転換を通じた生産性向上などの事業再構築に挑戦することを支援する必要がある。
(強調筆者)
政府の意図としては「前向きな取組を行う意欲のある中小企業・中堅企業」を助けます、ということがはっきり書かれています。これは、持続化給付金や家賃支援給付金のように、危機的状況にある企業をまんべんなく助けるというようなステージではもはやない、という宣言とも理解することができます。また、どういう分野を支援するかというと「規模拡大、新分野展開、業態転換を通じた生産性向上などの事業再構築に挑戦」とあります。
つまり「コロナで困っているから助けてほしい」という企業は、今後の国の支援対象の中心ではなく、GDPの押し上げに貢献するような取り組み(規模拡大、新聞や展開、業態転換)をする企業を中心に支援をするということですね。いいか悪いかは論じませんが、これが国の姿勢であることは押さえておくべき点です。
中小企業政策は、小規模事業者の淘汰を目的としないことを明言
成長戦略実行計画12ページに次の記述があります。
中小企業政策が、小規模事業者の淘汰を目的とするものでないことは当然であり、ポストコロナを見据え、中小企業の経営基盤を強化することで、中小企業から中堅企業に成長し、海外で競争できる企業を増やしていくことが重要である。
これは、成長戦略会議の民間議員である小西美術工藝社デービッド・アトキンソン氏の主張と関連があるように思います。氏は、日本の生産性の低さの原因は中小企業の数の多さにあるという持論があり、中小企業の整理統合を主張しています。菅首相がアトキンソン氏を重用していることからも、現内閣は「中小企業を潰す気なのか」と警戒する声もあり、そうした警戒の声に応えるかたちで、実行計画に「小規模事業者の淘汰を目的とするものではない」という一文が挿入されたものと思われます。
この後にも紹介しますが、淘汰を促進するというよりも、規模拡大を促進するための施策が数多く採用されています。
テレワークのための通信機器の導入
では具体的な施策を見ていきましょう。まずは成長戦略実行計画8ページに次の記述があります。
政府としては、テレワークの定着に向けて、新たなKPIを策定するとともに、中小企業によるテレワークのための通信機器の導入について支援の強化を図る。
これは厚生労働省の「働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)」のことを指しているのではないかと思われます。申請多数により、今年度の新規の申請の受付については既に終了していますが、これが補正予算により継続するのかもしれません。
中小企業の規模拡大のための税制支援
中小企業の合併を通じた規模拡大等による生産性向上を進めるため、経営資源の集約化(M&A)を税制面でも支援することが重要であり、譲渡を受ける中小企業に対し、税制上の措置について検討を行い、令和3年度税制改正において結論を得る。
具体的には、下記の記事(『中小の設備投資10%控除 M&A優遇税制創設へ』)のような施策が取られるものと思われます。
中小企業から中堅企業への成長途上にある企業についての支援
2021年の通常国会において、一定の補助金や金融支援について、中小企業だけでなく中堅企業への成長途上にある企業を支援対象に追加する法改正を検討する。例えば、製造業等(現行、資本金3億円以下又は従業員数300人以下が中小企業)、卸売業(現行、資本金1億円以下又は従業員数100人以下が中小企業)、サービス業(現行、資本金5,000万円以下又は従業員数100人以下が中小企業)、小売業(現行、資本金5,000万円以下又は従業員数50人以下が中小企業)について、資本金基準によらない支援策を設けることができるよう検討する。
中小企業は大企業と異なり、様々な優遇措置を受けることができます。この優遇措置を受けるために、あえて規模を拡大しないという企業もあります。そうした企業が規模拡大に踏みきりやすいよう、規模を拡大しても中小企業優遇策を受けられるように法改正をする動きがあります。
次回に続きます。