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エモブロ ブログ

「日本でオリンピックが放送されなかったら、今村さんはどう責任を取るつもりですか?」とNHKの人に言われた昔話

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おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。

週末のエモブロです。15年前の話ですが、トリノ五輪の中継映像伝送の仕事をしたことがあります。ジャパンコンソーシアム(実質NHK)を相手にした仕事だったのですが、ひどい追い込まれかたをして、会社を辞めるきっかけになりました。自分の気持ちの供養の意味も込めて振り返りたいと思います。

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トリノ五輪の中継映像伝送の仕事の担当者になった

当時の僕は、ドイツ系通信会社の日本法人で働いていました。折しも2006年はイタリアでトリノ五輪が開催。僕が勤めていた会社では、スポーツ大会等の中継映像の国際伝送回線を提供していたのですが、これはドイツ本社のメディアチームが直接、日本の通信会社や日本の放送連合(ジャパンコンソーシアム。実質的にはNHK)とやりとりを行っていたんですよ(僕の勤めていた日本法人は抜きにして)。しかし「オリンピック需要で売上をたてたい」という僕の会社の日本法人の社長の意向があって、トリノのときは日本法人が窓口となることになりました。

そしていろんな経緯があり、僕が日本の通信会社(KDDI)とジャパンコンソーシアムの窓口担当者になりました。本意ではなかったんですが、他にやる人がいないので(やっていた人が辞めてしまった等の理由もあって)お鉢が回ってきた、という感じでした。

しかしこの仕事はドイツ本社と日本の顧客との板挟みなんですよね。日本の顧客(特にジャパンコンソーシアム)は無茶ばかり言うんですよ。例えばですが、日本からの中継映像伝送回線をトリノのIBC(国際放送センター)まで、開会式の2週間前に開通させろという要求がありました。この2週間前というのは、国際的な基準から言うと常識はずれらしくて、ドイツ本社のメディア担当者が言うには「せいぜい2~3日前開通が普通。トリノ側も準備があるんだからそんなに早く開通できるはずないだろ」と突き放すのです。ジャパンコンソーシアム側も、こういう国際中継の仕事は長年やってきているので、おそらくそんな事情は百も承知なはずです。しかし「2週間前厳守」という要求を頑なに突きつけてくるんですよね。おそらく日本法人の力量を試していたのでしょう。

「ドイツ本社が言うには2~3日前の開通になるようです」とジャパンコンソーシアムに説明しても、もちろん聞く耳は持ちません。そういった日には「今村さんは何のために日本で窓口になっているんですか?そういう調整をするのがあなたの仕事でしょ?」と返してくるわけです。そして深夜の1時や2時ごろにまでも携帯に電話をかけてきて、進捗を報告させる始末で、完全に追い込みかけてるんですよね。挙句の果ては表題のように「日本でトリノ五輪が放送されなかったら、今村さんはどう責任を取るつもりですか?」とまでも言われました。経験も権限も何もなく、ただ「人がいない」という理由で任命された現場担当者の僕が、なぜ責任を負わねばならないのか?責任を負うべきなのは、これを決めた上の人間でしょうよ。上の人間が責任を取らず現場に詰腹を切らせるなんてことを許したら、上の人間はやりたい放題ですよ、ねえ?

あまりの追い込みにうつになる

こんな仕事に僕の精神が耐えきれるはずはありません。オリンピックが近づく2005年の暮れごろから、こうした追い込みは一層激しくなりました。ドイツ本社は「日本の顧客の要求だけに応えるわけにはいかない」と突っぱねますので板挟みです。日本法人内では、僕の名目上の直属の上司は「このオリンピックの話を俺に巻き込まないでくれ」と逃げる始末。孤立無援になった僕は、顧客との打ち合わせの席で涙が止まらなくなったり、急に体の震えが止まらなくなったり、風呂に入るのが怖くて仕方なくなりました。なんで風呂に入れないの?と疑問に思うでしょうけど、服を脱ぐということが、自分の身を守ってくれるものがなくなるような感じがして、怖くてできないんですよ。これは完全にうつの症状でした。

もうこれ以上は無理だと思った僕は、日本法人の新社長(フランス人。発端となった前社長はすでに辞めていた)に「この状況を是正しなければ今すぐ辞めて労基署に駆け込む」とけしかけ、新社長を無理やり巻き込んでなんとか乗り切りました。その間ずっと精神は不安定でしたけどね。そして諸準備がオリンピックに間に合ったのを見届けて、会社を辞めました。

自分で責任を取れる仕事でないとリスクがあると思うようになる

僕は心が狭いので、いまだにこの件を恨みに思っています。オリンピックというイベントにかこつけて売上のネタにしようと、もともとドイツ本社が中心になっていたところに日本法人として割り込もうと決めた(そして何の責任も役割も果たさずに辞めた)日本法人前社長と、それを止めなかったドイツ本国に問題があります。ジャパンコンソーシアムの追い込みのかけ方ももちろん気に入りませんが、彼らの言う「今村さんは何のために日本で窓口になっているんですか?そういう調整をするのがあなたの仕事でしょ?」というのはある意味で当たり前の反応であって、何の権限も力量もない日本法人が、窓口担当者である僕をサポートする環境整備もまったくせずに、オリンピック需要に目がくらんで売上ほしさにいっちょかみしようとしたところに根本原因があるのですよ。(まあ百歩譲って、そこまでして功をあげなければ日本法人が存続できないという、このドイツ系企業全体の組織的問題なのかもしれませんが)

本当に思い出すだけでも不快になる一件ですが、「自分の権限や力量が及ばない仕事を、売上がほしいからといって安易に手掛けてはいけない」「なにかトラブルがあったとき、自分で責任が取れるだけの権限がない仕事はヤバい」というリスク認識のようなものが養われました(だからといってこういう経験をしたことが糧になったなどといい子ぶったことを言うつもりもさらさらないんですけど)。ただ、もう二度とそういう思いをしたくないという一点で、自分で責任が取れるような自己完結性の高い仕事には何があるのか……を精神をやみながら真剣に考えて、その一つが今の僕の仕事(コンサル業)だったのです。そうしてこのドイツ系企業を辞めて、診断士の勉強を始めるようになったという経緯につながってきます。

そういう意味では、僕は「困っている誰かや、頑張る中小企業を助けるためにコンサルをしたい」というような崇高な志があるわけではありません。自分の身を守るためにはどうすればいいかといういくつかの選択肢の中から、この仕事をたまたま選んだというのが実態です。当社は「ワークライフバランスが創業の理念である」ということはこのブログでも度々書いていますが、自分のプライベートを圧迫してまでも仕事を拡大したり発展させたくないというのは、このトリノ五輪の一件が原点にあります。

そういうことを、この東京オリンピックでのゴタゴタを通じてひさびさに思い出した次第です。おそらく今回の東京オリンピックでも僕が体験したことのように、上の軽い思いつきで現場が疲弊をする、ということが相当起きたのではないかと思います。オリンピックのような金の集まる大イベントには、そういうことが起こりやすくなる魔力みたいなものがあるんじゃないかと個人的には思っています。

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