おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
12月3日、財政制度等審議会は「令和4年度予算の編成等に関する建議」を公表しました。この中で「事業再構築補助金」と「ものづくり補助金」の在り方を適切に見直していく必要があると、いわば「ダメ出し」をしています。
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財政制度審議会の資料はこちら
財政制度審議会「令和4年度予算の編成に関する建議」は下記のリンクから閲覧できます。この資料のP104~P105にかけて、「事業再構築補助金」と「ものづくり補助金」について言及されています。
また付属資料の56~57枚目にかけても「事業再構築補助金」と「ものづくり補助金」について言及されています。
事業再構築補助金に対する「ダメ出し」
まずは付属資料の56ページにある事業再構築補助金について見てみましょう。
要点は、上記の資料の冒頭にある3点ですが、2つ目から見ていきましょう。
ここに太字で「補助金依存や、適正な市場競争の阻害などが懸念される。また、補助上限が事業再構築の想定費用を上回っており、コスト意識の低下により過大投資が誘発されるおそれ」と書いてますね。
ここではダメ出しが3つ含まれているんですけど、一つは補助金依存になるんじゃないかということですね。そして二つ目は「適正な市場競争の阻害などが懸念される」とあります。
これは何かというと、例えば普通に買えば1,000万円する機械を補助金で買ったとします。事業再構築補助金では補助率が2/3とか3/4とか出ますので、。1,000万円のうち6~700万円は補助金でまかなえます。しかも先端設備の投資であれば、即時償却ができるという制度なども併用すると、会計上は設備コストを無視した値付けをやろうと思えばできるんですよね。そんなことをしちゃうと価格競争で市場が荒れてしまうんじゃないか、ということをいいたんでしょうね。
そしてここでもう一つ触れられているのは、「補助上限が事業再構築の想定費用を上回っており、コスト意識の低下により過大投資が誘発される」ということです。
これについては左下のグラフでも説明されてますけど、東京商工リサーチの調査によると、事業再構築の想定費用は、100万円から5000万円の間が一番想定費用として多い層なんだそうです。
それなのに最大1億円も交付するようだと、「そんなに必要ないけど、補助金もらえるんだったらこれもついでに買っとくか」みたいなノリで投資をしてしまうんじゃないか、ということを財務省は危惧しているようですね。
そしてこの3点目ですが、「事業再構築補助金の採択状況をみると、事業再構築ニーズの高い飲食・宿泊業の割合が相対的に低い。真に必要な先に適切な支援が行き渡るような見直しが必要。」とあります。
これも右下の図表で詳しく説明されていますけど、要は「事業再構築が必要だと思ってないところに補助金をばらまいているんじゃないか」と財務省は言いたいようですね。
飲食・宿泊業が事業再構築のニーズが高いはずなのに、そうしたニーズの薄い製造業が不当にせしめているんじゃないか、とでも言いたいようですね。もともと事業再構築補助金は、製造業が主に使っていた「ものづくり補助金」の申請要件や審査項目を踏襲していますし、設備投資によって付加価値額を高めるということが求められていますので、審査制度上は製造業と相性がまずまずいいんですよね。そうしたことを問題視しているんでしょう。
ものづくり補助金に対する「ダメ出し」
次にものづくり補助金についての資料を見てみましょう。これも要点としては2つあります。
まずひとつ目は「ものづくり補助金は中小企業の生産性向上にかかる取組を支援するものであるが、小規模事業者の採択が多く、複数回採択も相応にみられる。」とありますね。
小規模事業者はダメと言いたいのではなく、小規模企業の投資規模にあった補助上限額にしろ、といいんたいんだろうと思います。これは順を追って反しますが、まずは左側にグラフがありますが、従業員数20人以下の採択が52%を占めると赤字で書いています。
これを念頭においた上で、右上のグラフも見てみましょう。
これは何を言いたいのかというと、要は小さな企業はそんなに設備投資、それも省力化、合理化、新分野進出のための投資のニーズが小さいんだから、1000万円も交付するのはやりすぎじゃないか、ということを言いたいんだと思いますね。
こうした財務省の意見を受けてかどうかはわかりませんが、令和3年度補正予算で計上されているものづくり補助金の補助上限額は、企業の規模に応じて変わるものになるようです。経済産業省の令和3年度補正予算PR資料によると、補助上限額が750万円、1,000万円、1,250万円で、従業員規模により異なると書いています。要は小規模企業だと補助上限額が少なくなるんじゃないかと思います。
そして採択事業者にかかる過去の交付実績も、複数回採択が15%と赤字で書いています。
確かにものづくり補助金では、複数回採択者を減点するという措置が取られているので、複数回採択者は昔より減っているはずなんですけど、それでもまだ財務省が問題視しているっぽいですね。基本的には複数回採択はさせたくないんでしょうね。
最後に「本補助金が付加価値額や生産性に対して統計的に優位な影響を与えていないとの研究成果もあり」というのは、右下にかかれています。これは経済産業研究所(RIETI)のディスカッション・ペーパーを引用しています。
まあ確かにRIETIのものづくり補助金研究に限って言うと、補助金の効果が見いだせないという結論には違いがないんですが、リエティのディスカッション・ペーパーをよく読むと、交絡因子が多すぎて補助金の影響を調べるのは限界がある、という書きっぷりにもなっています。経営にはいろんな要因がありますし、制度も複雑すぎるのでそもそも調べるのが難しいんだと思いますが、こうした調査の困難さにふれることなく、財務省は「有意差がない」というところだけを抜き出して主張しているような感が拭えないなと思います。
とはいえ、財務省の見解が補助金制度に反映されることはよくあることです。ですので、こうした財務省の見解に基づいて来年度の制度設計が変わる可能性も十分にありますので、気をつけてください。