おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
令和6年能登半島地震で被災された方々に謹んでお見舞い申し上げますとともに、一日も早いご快復、ご復興を祈念いたします。被災された中小企業・自営業への公的支援(主に資金繰り)にはどのようなものがあるか、前例をもとに解説をします。
スポンサーリンク
ご注意事項
注意
この記事は、令和6年に発生した能登半島地震の翌日(1月2日)時点での内容です。記事では、中小企業や自営業者への公的支援(特に資金面での支援)について、過去の災害を参考に予測しています。この記事の目的は、被災した企業に事前の準備を促し、公的支援をスムーズに受けられるように情報を提供することです。ただし、実際の支援策はこの記事の執筆後に、中小企業庁や日本政策金融公庫などから発表されるため、最終的な情報は公的機関から得るようにしてください。
なお、この記事は主に『被災者支援に関する各種制度の概要』(令和5年6月1日,内閣府)を参考に執筆しています。
片付け前に「罹災証明書」の入手のための準備を行ってください
被災された中小企業・自営業の皆様は、まず「罹災証明書」の入手のための準備を行ってください。「罹災証明書」とは、災害が起きたとき、家や建物にどの程度の被害があったかを、市町村(火災の場合は消防署)が示す書類です。この後に説明をする被災された中小企業・自営業への公的支援策では、罹災証明書の提出が必要な支援策があります。つまり「罹災証明書」をスムーズに入手すると、資金繰り支援もスムーズに受けられる可能性があります。
罹災証明書の取得手続きは市町村によっても異なる可能性がありますが、共通していることは、片付け前に被害状況が確認できる写真および住家全体の写真を撮っておくことが望ましいです。通常、罹災証明書の発行は、役所(市町村)が被害等の状況を調査(実地調査)した後に発行されます。大規模な災害の場合には、実地調査は順番待ちになり、罹災証明書の入手が遅くなる場合があります。しかし(被害の程度にもよりますが)、罹災証明書の発行には、自己判定方式という制度もあります。要は写真による判定を行い、役所による実地調査をせずに罹災証明書を受け取れるという制度です。この制度を利用した場合、短期間に罹災証明書が入手でき、公的支援をスムーズに受けられる可能性が高くなります。
以下に、法人における一般的な罹災証明書の発行手順を示します。これは兵庫県神戸市の例ですので、手続き方法は市町村(火災の場合は消防署)によって微妙に異なる可能性があります。必ずご自身の市町村に確認をしてください。
<代表者が申請する場合>
(1)代表者の本人確認書類
(2)法人登記事項証明書・代表者事項証明書等、法人名・所在地・代表者名が確認できるもの
(3)被害状況が確認できる写真および住家全体の写真(自己判定方式の場合)
(4)罹災証明書交付申請書(窓口でご記入いただくことも可能です。)
<社員が申請する場合>(1)社員の本人確認書類
(2)法人登記事項証明書・代表者事項証明書等、法人名・所在地・代表者名が確認できるもの
(3)社員証等社員であることを確認できるもの
(4)被害状況が確認できる写真および住家全体の写真(自己判定方式の場合)
(5)罹災証明書交付申請書(窓口でご記入いただくことも可能です。)
農林漁業の再建資金が必要【農林漁業者】
株式会社日本政策金融公庫、沖縄振興開発金融公庫による資金貸付があります。以下の例は、令和5年台風第13号の際の支援策ですので、融資限度額や融資期間は変わる可能性があります。令和5年台風第13号の場合は、被災から約1週間後に以下の支援策が公開されました。
中小企業事業の再建資金が必要【中小企業者】
小規模事業者経営改善資金(マル経融資)
小規模事業者経営改善資金(通称:マル経融資) は、商工会議所等の経営指導を受けているなどの要件を満たしている方に対して、日本政策金融公庫が無担保・無保証人で融資を行う制度です。
- 貸付限度額 2,000万円
- 貸付金利 令和5年4月3日時点では1.08%
お問い合わせは、最寄りの商工会議所、商工会、都道府県商工会連合会までお願いします。
生活衛生改善貸付
生活衛生改善貸付は、生活衛生同業組合や都道府県生活衛生営業指導センターなどの経営指導を受けているなどの要件を満たしている方に対して、日本政策金融公庫が無担保・無保証人で融資を行う制度です。
- 貸付限度額 2,000万円
- 貸付金利 令和5年6月1日時点では1.09%
お問い合わせは、最寄りの生活衛生同業組合、組合が設立されていない場合は、都道府県生活衛生営業指導センターまでお願いします。
災害復旧貸付
災害により被害を受けた中小企業・小規模事業者等に対して、日本政策金融公庫、沖縄振興開発金融公庫が事業復旧のための運転資金及び設備資金を融資します。
日本政策金融公庫の災害復旧貸付の貸付限度額等は次のとおりです。(以下は令和5年台風第13号の際の条件です)。
なお、平成30年北海道胆振東部地震(直近の震度7の震災)の際には、特に著しい被害を受けた区域に事業所を有する中小企業・小規模事業者等の皆さまに対して、融資後3年間、「災害復旧貸付」の利率を0.9%引下げるという措置が取られました。
災害復旧貸付も、災害救助法の適用、または市町村発行の罹災証明書が必要です。
お問い合わせは、日本政策金融公庫各支店の窓口までお願いします。
セーフティネット保証4号
自然災害等の突発的事由(豪雨、地震、台風等)により経営の安定に支障が生じている中小企業者への資金供給の円滑化を図るため、信用保証協会が通常の保証限度額とは別枠で保証を行います。(信用保証の別枠です。この保証をもとに、民間金融機関から借入を行います。以下の保証料に加えて、借り入れに伴う利息が発生します)
- 融資額の全額を保証(100%)、保証料率は信用保証協会所定(概ね1.0%以内)。
- 無担保8千万円、最大で2億8千万円まで一般保証とは別枠で利用できます。
この信用保証の特例を受けるには、①災害救助法が適用される指定地域で1年以上継続してい事業を行っていること、②災害が理由で売上がある程度減っていること、といった要件を満たす必要があります。お問い合わせは、各都道府県等の信用保証協会までお願いします。
なお、災害救助法の適用状況については、内閣府のホームページをご覧ください。
災害関係保証
災害により事業所、工場、作業所、倉庫等の主要な事業用資産等に倒壊等の直接的な被害を受けた中小企業者への資金供給の円滑化を図るため、信用保証協会が通常の保証限度額とは別枠で保証を行います。
- 融資額の全額を保証(100%)、保証料率は信用保証協会所定(概ね1.0%以内)。
- 無担保8千万円、最大で2億8千万円まで一般保証・セーフティネット保証とは別枠で利用できます。
お問い合わせは、各都道府県等の信用保証協会までお願いします。
この信用保証の特例を受けるには、市町村が発行する罹災証明書が必要です。
既往債務の返済条件緩和等の対応
平成30年北海道胆振東部地震や令和5年台風第13号の際には、被災地の日本政策金融公庫、商工組合中央金庫及び信用保証協会に対して、返済猶予等の既往債務の条件変更、貸出手続きの迅速化及び担保徴求の弾力化などについて、被害を受けた中小企業・小規模事業者の実情に応じて対応するよう、経済産業省から要請が出ました。
小規模企業共済災害時貸付の適用
災害救助法が適用された各市町村において被害を受けた小規模企業共済契約者に対し、中小企業基盤整備機構が原則として即日で低利で融資を行う災害時貸付を適用されました。
(小規模企業共済へ加入している個人が対象です)
- 貸付限度額:原則として納付済掛金の合計額に掛金納付月数に応じて7割~9割を乗じて得た額(50万円以上で5万円の倍数となる額)と1,000万円のいずれか少ない額
- 貸付利率:年0.9%(令和5年9月11日現在)
- 貸付期間:貸付金額500万円以下 36ヵ月 505万円以上 60ヵ月
- 償還方法:6ヵ月ごとの元金均等割賦償還
- 担保、保証人:不要
- 借入窓口:商工組合中央金庫本・支店
罹災証明書があれば、原則、即日貸付が可能です。
この他、自治体独自の施策(利子補給制度など)もありえます
以上は国による被災中小企業支援策でしたが、この他、自治体独自の施策もありえます。例えば、平成30年北海道胆振東部地震で震度7の被害を受けた厚真町では、町独自の中小企業災害復旧資金融資制度(災害融資)と、災害融資に係る利子補給制度(要は借入利息の一部免除)という独自の制度を設けました。国による支援策だけではなく、自治体の支援策もご確認ください。
被災された中小企業の皆さんは、従業員の安否確認や後片付け、取引先との連絡などに追われ、こうした資金繰り支援を受ける余裕がない方もいると思います。日本の中小企業向けの支援策は、書類や手続きが煩雑で、必ずしも被災した企業にとってやさしいものではありません。都道府県の中小企業支援センター(よろず支援拠点)や、商工会・商工会議所、顧問税理士などに相談をしてみてください。直接サポートはしてくれないかもしれませんが、様々なアドバイスをくれるはずです。