おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
ISO45001:2018 箇条6.1.3「法的要求事項及びその他の要求事項の決定」を説明します。この箇条では、法律や顧客の要求などをただ守るだけではなく、プロセスを確立しなさいと言っています。具体例を交えて詳しく解説します。
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箇条6.1.3の位置づけ
まずは箇条6.1.3の位置づけを見てみましょう。
箇条4では、会社が置かれている状況を考えて、労働安全衛生マネジメントシステムを作って運用することを求めていましたね。箇条5では、そのマネジメントシステムを円滑に回していくために、会社のトップがやるべきことを定めていました。箇条6では、会社を安全で健康的な場所にするために問題になりそうなことをあらかじめ洗い出して対策をしたり、目標を作ったりすることを求めています。今回はそのうち、箇条6.1.3「法的要求事項及びその他の要求事項の決定」についてお話をします。
「要求」とは誰のどういう要求か
箇条6.1.3では、我が社に対して労働安全衛生の面で求められている事を明確にしなさいと言っていますが、これは具体的に、誰のどういう要求のことを指しているのでしょうか。
最も基本的なのは法的要求事項で、これは政府や規制機関からの要求になります。具体的には、労働安全衛生法や労働安全衛生規則などがありますが、災害や緊急事態に関しては消防法も関係してくる場合があります。
顧客からの要求としては、CSR調達の可能性があります。特に世界的に活動する企業は、サプライヤーに対して、従業員の労働条件や労働環境のコンプライアンスを強く求める傾向にあります。有名なところではアップルがCSR調達をかなり積極的にやっているんですが、日本企業でもミズノやセブン&アイ、エプソンなども、サプライヤーに労働安全衛生面でのコンプライアンスを要求しています。
株主や投資家はどうでしょう。彼らは最近、財務情報だけでなく、企業のESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みを投資判断の材料としています。つまり「労働安全衛生に配慮した企業に投資する」姿勢がある、ということですね。
業界団体からの要求もありえます。例えば建設業界では、「建災防」という団体が法律以上の安全衛生基準を会員に求めています。
協力会社のうち、我が社の中で構内請負を行う企業などは、我が社に安全な作業環境の提供を求めるでしょうし、企業で働く人や労働組合からも、同じように安全な作業環境の整備が強く求められます。
このように、我が社の利害関係者から、労働安全衛生に関して様々な要求がありえます。企業は、こうした要求を明確にしなさいと、この箇条は求めています。
要求事項に関するプロセスを作る
箇条6.1.3は、要求事項を単に守れと言っているのではありません。要求事項に関するプロセスを作りなさいと言っています。要求事項に関するプロセスとはどういうものでしょうか?一つの例をお見せしながら解説をします。
最初のステップである「要求事項の特定」では、我が社に関係する法的要求事項や、その他の要求事項が何かを、大まかに把握します。
そして次のステップ「要求事項の入手」では、関係する要求事項の詳細を入手します。
続いてのステップ「適用方法の決定」では、その要求事項をどうやって満たすのかを決めます。
次のステップ「コミュニケーションの決定」では、要求事項について、誰とどんなコミュニケーション…報告や周知が必要なのかを決めます。ここまでが箇条6.1.3で求められている部分ですが、要求事項のプロセスはここでは終わりません。
先ほど、要求事項をどうやって満たすかという適用方法を決めましたが、その適用方法をいつ誰が実施するのかという具体的な計画を策定するステップがあります。
そして、その計画に基づいて実施をするというステップがあります。
実施をしたら、結果はどうだったかをモニタリングしたり監視測定・分析・評価するステップがあります。
最後のステップは、監視測定など結果として、問題や変更があったり、改善の余地があったりしたら、見直しをします。
なお、実施から見直しまでのステップは、6.1.3 c)の要求事項とも密接に関連していると言えます。この6.1.3 c)の要求事項をわかりやすく簡単に言うと「要求を満たすことを日常業務に取り入れること、要求は常に最新の状態を維持すること、常に要求を守り、効果的になるようにすること」といえます。
次回はこのプロセスを具体例を使って説明します。