おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
「リスクベース思考」とはどういうもので、どのように企業の日々の仕事に組み込まれて、どういう利点があるのかを解説する連載の3回目です。今回は、リスクベース思考を取り入れることの利点を説明します。
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今回の記事の参考文献(ISO公式資料)
Risk Based Thinking in ISO 9001:2015
マネジメントシステムの簡素化や内部監査の焦点の明確化ができる
個々のプロセスでのリスクベース思考は、さまざまな管理レベルを決めるうえで活用できるという利点があります。例えばですが「教育訓練の程度」や「文書化の程度」「設計・開発の程度」「監視測定の頻度や細かさといった程度」「計測機器の管理の程度」などの、様々なプロセスにおける管理レベルを決める上で活用できます。
もう少し具体的にいうと、航空機や原子力関連の製品の製造など、人命に直結するプロセスでは教育訓練を厚くするという判断ができるでしょうし、YouTubeでISOの情報発信をする程度の、人命には直結しないプロセスであれば、教育訓練の程度はそこそこでよいでしょう。このようにリスクの大小に応じて、管理レベルを決めていくわけですね。ISOの規格を読むと「適切な」とか「適した」という言葉が使われているがあります。そこは、リスクベース思考を活用できる部分として参考になります。
こうしたリスクベース思考を用いると、マネジメントシステムを簡素化したり、内部監査の焦点を明確にしたりする利点がありますね。
より現実に即した意思決定が可能になる
リスクベース思考を採用するその他の利点の一つとして「より現実に即した意思決定が可能になる」ことがあります。
この連載では、「道を渡って車にはねられる」というリスクを例に挙げましたが、こうしたリスクを「道を渡る」前に特定し、交通量や視界などの要因を考慮して、安全な時を選んで渡る計画を立てるという例を挙げました。また「新人がいる工程でのミス増加」というリスクを特定し、新人向けの追加研修やベテラン社員によるサポートを強化する措置を講じる例も挙げました。
この例では、直面するかもしれない「こうなったら困るな」という未来の出来事(=リスク)を、直感でなんとなく特定したのではなく、今自分(自社)の周りの状況や顧客のニーズなどの現実を踏まえて特定をしました。そしてそのリスクに対する評価や取組策も「いまこの状況ではどうか」という事実に基づいて決めていましたね。
このように「ただなんとなくこれはリスクだろう」と漠然とした考えのもとでリスクに取り組むのではなく、事実に基づいてリスクに関する決定が行えるという利点があります。
リスクを最小限に抑えられる
もちろん、リスクを最小限に抑えられるという利点もあります。
例えば、道を渡る際の交通事故のリスクを評価し、交通量が少ない時を選ぶなどの予防策を立てることで、事故の可能性を大幅に減らすことができます。また、工場などで新人作業者が関わる工程においては、事前にリスクを特定し、適切な研修や監督体制を整えることで、ミスを起こす確率を低減できます。このように、リスクベース思考は、事前のリスク評価と対策を通じて、問題発生の可能性を最小限に抑える手法といえます。