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事業再構築補助金第12回公募 一新された審査項目を読む(1)

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おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。

4月23日に公開された事業再構築補助金第12回公募要領では、審査項目がそれまでのものから一新されました。新しくなった審査項目を、数回に渡って見ていきたいと思います。

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事業再構築補助金 公募要領はこちら

(1)補助対象事業としての適格性

このカテゴリーには、以下の2つの項目があります。

①「4.補助対象事業の要件」を満たすか。補助事業終了後3~5年で付加価値額を年平均成長率3.0%~5.0%(事業類型により異なる)以上の増加等を達成する取組みであるか。

「4.補助対象事業の要件」とは、公募要領(第12回 1.0版)のP16~P30までのことを指しています。ここに書かれていることのうち、該当する申請類型(自分が申し込もうと思っているプラン(具体的には「成長分野進出枠 (通常類型)」とか「コロナ回復 加速化枠 (通常類型)」)で要求されているものは、全て満たす必要があります。

また「補助事業終了後3~5年で付加価値額を年平均成長率3.0%~5.0%(事業類型により異なる)以上の増加等を達成する取組みであるか」というのは、平たく言うと「儲かる取り組みであるか」ということですね。ここでいう儲かるとは、付加価値額の増加(営業利益+人件費+減価償却費の和の増加)のことなので、投資と人件費増加(賃上げと雇用増)を満たしつつ、さらに収益性(売上高対営業利益率)が高まることを指します。事業再構築補助金は新製品を新市場に投入することが基本として求められますので、やはり新製品の収益性(≒粗利益率)が既存製品よりも格段に高くなる取組であることが評価のポイントとなるでしょう。

②事業再構築指針に沿った取組みであるか。※複数の事業者が連携して申請する場合は、連携体構成員が提出する「連携体各者の事業再構築要件についての説明書類」も考慮する。

事業再構築指針及びそのガイドラインである事業再構築指針の手引きに沿った内容かどうかが評価されます。細かな要件はたくさんありますが、基本は「今までに作ったことのない製品」を「既存顧客とは異なる顧客層」に提供するというものです。ですので、既存製品の製造プロセスの合理化投資などは、事業再構築指針には沿った取組とは言えません。

なお、事業再構築指針及びそのガイドラインである事業再構築指針の手引きは、この2024年4月に更新されています。基本的には前年度と変わりませんが、「地域サプライチェーン維持・強靱化」という事業再構築類型が新たに追加となったことによる変更です。

(2)新規事業の有望度

①補助事業で取り組む新規事業が、自社がアプローチ可能な範囲の中で、継続的に売上・利益を確保できるだけの規模を有しているか。成長が見込まれる市場か。

一言でいうと「ニッチ過ぎず、かつ成長市場であるかどうか」ということですね。ニッチというのは、すぐに狩り尽くしてしまうような小さな市場ということです。また成長市場であることが評価のポイントですので、今であれば半導体とか二次電池とか、そういう分野の仕事をするのが評価のポイントでしょう。経営戦略としては、衰退市場でトップを狙うというのも立派な戦略なのですが、そうした内容はこの補助金では評価されませんね。

②補助事業で取り組む新規事業が、自社にとって参入可能な事業であるか。

➢免許・許認可等の制度的な参入障壁をクリアできるか。

➢ビジネスモデル上調達先の変更が起こりにくい事業ではないか。

これは反対に言うと「新規参入が困難な取組でないこと」と考えるとわかりやすいです。例えば製造業だと、航空機部品加工という分野は新規参入がとても困難です。JISQ9100やNADCAPといった認証取得の必要もありますし、そもそも何十年も航空機部品製造を続けてきた企業が立ちはだかるので、やすやすとは新規参入できません。(これが上記でいうところの「ビジネスモデル上調達先の変更が起こりにくい事業ではないか」という点ですね)

ただ、ファイブフォースモデル的にいうと、新規参入が容易な分野は競争が激しいことが想像できます。だからあまりにも参入障壁が低そうな分野は、これもまた評価されないと思ったほうが良いでしょう。そういう意味で、上記の審査項目は「自社にとって参入可能な事業であるか」と書いているのだと思います。ということは、理想としては「参入障壁はそれなりに高い分野だけど、うちならば参入できる」ということが、根拠を示して主張できるような事業であることがポイントですね。

③競合分析を実施した上で、顧客ニーズを基に、競合他社と比較して、自社に明確な優位性を確立する差別化が可能か。

➢代替製品・サービスを含め、競合は網羅的に調査されているか。

➢比較する競合は適切に取捨選択できているか。

➢顧客が商品やサービスの購入を決める際に重視する要素や判断基準は明らかか。

➢自社が参入して、顧客が商品やサービスの購入を決める際に重視する要素や判断基準を充足できるか。

➢自社の優位性が、容易に模倣可能なもの(導入する機械装置そのもの、営業時間等)となっていないか。

ここの審査項目は、先程の②の審査項目の裏付けが求められる部分といってもよいでしょう。新分野に存在する競合と勝ち目があるかを、ここに書かれている5つの観点から、根拠をもって記述する必要があります。

しかしこの内容を読んでいると、ファイブフォースモデルを相当意識した内容ですね。ファイブフォースモデルとは、マイケル・E・ポーターの「競争の戦略」で紹介される理論を、フレームワークに落とし込んだものです。簡単に言うと、業界全体の構造を分析する手法のことです。5つの観点の内容は読めばわかると思いますが、この審査項目では新しく進出しようとしている分野の状況を細かに分析することを求めていますので、市場分析はそれなりに手厚く行う必要があるでしょう。

しかしここまで細かい指定があるということは、裏を返せば、大半の事業計画書の市場分析が甘いものになっている、ということなのだと思います。

また個別の観点の最後の点「自社の優位性が、容易に模倣可能なもの(導入する機械装置そのもの、営業時間等)となっていないか。」というのは、ファイブフォースモデルではなく、リソース・ベースド・ビューに基づくVRIO分析のフレームワークに見られるものですね。つまり、自社の優位性は模倣困難なものである必要があります。模倣困難な優位性は、一般的には無形のもの(ノウハウや経験等)ですので、こうしたものが「模倣困難な強み」として挙げられており、その強みが、新規分野へ参入可能であることの根拠になっている、というような筋書きだとストーリーに一貫性が出ます。

次回に続きます。

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