おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
4月23日に公開された事業再構築補助金第12回公募要領では、審査項目がそれまでのものから一新されました。新しくなった審査項目を、数回に渡って見ていきたいと思います。
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事業再構築補助金第12回公募 一新された審査項目を読む(1)
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事業再構築補助金第12回公募 一新された審査項目を読む(2)
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事業再構築補助金 公募要領はこちら
(5)政策点
(5)政策点は、前回(11回公募)からの大きな変更はそれほどありませんが、審査で求められることなので見ていきましょう。
①ポストコロナ時代の経済社会の変化に伴い、今後より生産性の向上が見込まれる分野に大胆に事業再構築を図ることを通じて、日本経済の構造転換を促すことに資するか。
前回の公募と比べると「ウィズコロナ」というキーワードが削除されました。
しかし「ポストコロナ」というキーワードが見られるように、この補助金はやはり「コロナ対策」としての位置づけであることがわかります。ポストコロナというのは、TDBのレポートによると「新型コロナ禍におけるさまざまな経験を受けて、従来の延長ではない生活様式や働き方、価値観などが変化した状況、世界観を表す意味」だそうです。具体的にはオンライン化や公衆衛生に関する価値観の変化、原油・物価・電気代高騰が日常的な世界のことを指すと言えるでしょう。そうした変化と関連した事業再構築であることが望まれているのだと思います。
また「今後より生産性の向上が見込まれる分野に大胆に事業再構築を図る」というのがあります。これは読んで時のごとくですが、中小企業の生産性の低さはかなり以前から(役所が)問題視していますので、儲かっていない中小企業が儲かる分野にシフトして生産性を向上することを期待しているのでしょう。
②先端的なデジタル技術の活用、低炭素技術の活用、経済社会にとって特に重要な技術の活用等を通じて、我が国の経済成長を牽引し得るか。
これは前回と変わっていません。デジタルトランスフォーメーション(DX)とグリーンイノベーションのことを指していると考えられます。デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、デジタル技術を用いて新たな価値を創造する変革です。具体的には、デジタル技術を使って業務効率化などを行うことが含まれます。一方、グリーンイノベーションとは、先端的な科学技術を用いて環境問題、特に低炭素化に取り組む変革です。そうした取組を評価するといことですね。
③新型コロナウイルスが事業環境に与える影響を乗り越えてV字回復を達成するために有効な投資内容となっているか。
これも前回と変わっていません。
この審査項目を素直に読むと、コロナの影響で急激に売上の下がった企業(例えば飲食業や宿泊業など)が、説得力ある事業計画を立案した場合に加点されるものだろうと思います。もしくは「コロナ回復加速化枠」へ申請する企業への事実上の加点項目かもしれません。
この補助金の売上高減少要件はなくなりましたが、それでもまだコロナの影響を受けた企業に対して優遇する意図は残っているように思われます。
④ニッチ分野において、適切なマーケティング、独自性の高い製品・サービス開発、厳格な品質管理などにより差別化を行い、グローバル市場でもトップの地位を築く潜在性を有しているか。
これも前回と変わっていません。経済産業省の施策「新グローバルニッチトップ企業100選」を意識したものと思われます。認定された企業に対する、事実上の加点項目だと考えられます。新グローバルニッチトップ企業の認定要件は厳しく、特定の商品・サービスにおいて、近年で10%以上の世界シェアを確保したことがあるものが対象です。中小企業にとっては困難な要件で、多くの企業が満たせないでしょう。しかし、ここで点数を獲得したい場合は、新グローバルニッチトップ企業100選の評価項目に沿って最大限の記述を行う必要があります。新グローバルニッチトップ企業100選の評価項目は、収益性、戦略性、競争優位性、国際展開の4つの視点から定量項目と定性項目を記述することになっています。事業再構築で海外進出を検討していない企業にとっては、書きづらい審査項目かもしれませんので、無理に書かなくてもよいでしょう。
⑤地域の特性を活かして高い付加価値を創出し、地域の事業者等に対する経済的波及効果を及ぼすことにより、雇用の創出や地域の経済成長(大規模災害からの復興等を含む)を牽引する事業となることが期待できるか。
※以下に選定されている企業や承認を受けた計画がある企業は審査で考慮いたします。
○地域未来牽引企業
○地域未来投資促進法に基づく地域経済牽引事業計画
この審査項目は「地域未来牽引企業」に認定された企業や、「地域経済牽引事業計画」の承認企業に対する、事実上の加点項目ではないかと考えられます。
認定や承認を受けていない企業がここで点数を獲得できるかどうかはわかりません。しかしどうしてもここで点数を取りたい場合は、「地域未来牽引企業」や「地域経済牽引事業計画」の評価項目に沿って最大限の記述を行う必要があるでしょう。
⑥異なるサービスを提供する事業者が共通のプラットフォームを構築してサービスを提供するような場合など、単独では解決が難しい課題について複数の事業者が連携して取組むことにより、高い生産性向上が期待できるか。異なる強みを持つ複数の企業等(大学等を含む)が共同体を構成して製品開発を行うなど、経済的波及効果が期待できるか。また、事業承継を契機として新しい取組を行うなど経営資源の有効活用が期待できるか。
複数の事業者が連携して製品開発などを行う取り組みを評価する審査項目です。この審査項目は一見わかりづらいですが、中小企業庁の部長が昔していた解説によれば、「スイミー戦略」と呼ばれる中小企業同士の連携を指しています。スイミーとは、レオ・レオニさんが書いた絵本の主人公で、教科書にも載っている有名なキャラクターですね。スイミー戦略は、例えば大手メーカーの下請け製造業のような企業が、親会社に頼らず中小企業同士で連携して新たな取り組みを行うことを指します。このような企業に対しては加点が行われると考えられます。
ただし、この審査項目は1社単独の取組の場合、書くべき内容がないかもしれません(殆どの企業は1社単独の取組でしょう)。そのため、この審査項目は無理に書く必要はありません。もし何か言及したい場合は、将来的に複数の企業で連携する可能性に触れることができるでしょう。