おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
日本の製造業が戦後復興するきっかけをつくったことで有名なW.E.デミング博士は「数値目標の設定をやめなさい」と言っています。これはどういうことなんでしょうか?3回にわたって、数値目標のデメリットを解説をします。
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デミング博士の教え
デミング博士が、どういう意図で「数値目標の設定をやめろ」と言ったのでしょうか?デミング博士は、「14個の経営哲学」を残しているのですが、そのうちの11番目で次のように述べています。
原則11a 一般社員に数字でノルマを課すのは止めよ
出来高ノルマは、どこまでも改善し続けるという考え方・行動とは根本的に相容れない。
原則11b 管理者に数値目標を課すのを止めよ
マネジメントが手段を示さずに設定した内部の数値目標は、一種の茶番だ。例を挙げよう。①来年は品質保証コストを10%削減する、②売上高を10%増やす、③来年は生産性を3%上げる――。
(デミング, W.エドワーズ. 『危機からの脱出 I』. 成沢俊子, 漆嶋稔 (訳), 日経BP, 2022, p. 155,164. )
このように「一般社員に数字でノルマを課すのは止めよ」「管理者に数値目標を課すのを止めよ」と言ってますね。
デミング博士は、数値目標を立てても仕事が良くならないどころか、かえって問題を増やすと言っています。マネジメントが手段を示さずに設定した内部の数値目標は、一種の茶番だと、かなり強い言葉で批判してます。
数値目標にはどのようなデメリットがあるか?
数値目標にはどういう問題があるんでしょうか。まずはデミング博士が著書で解説した事例をご覧いただきましょう。ここに従業員が二人いたとします。
この2人に、製品を1時間100台作るという目標が与えられました。この「1時間100台」という数字は、この会社全体の平均生産台数です。従業員のうち一人はベテランで、1時間に120台生産できます。しかし数値目標が100台であれば、100台しか作りませんよね。
一方、もう一人は新人で、1時間に80台しか生産できません。その人は目標達成できないと落ち込んで、もしかしたら上司から叱られる可能性があって、働く人のプライドがずたずたになる恐れがある、とデミング博士は言います。
実際にぼくが見たことのある数値目標のデメリット事例
もうちょっとリアルな例も見てみましょう。これは実際にぼくが見たことのある事例に基づいています。
例えば「製品Aの製造時間を30分以内に短縮」という目標が上からふってきたとします。この目標に対して、「ミスをしても再加工せずにそのまま出荷しよう」と考える人がいるかもしれませんし、「時間のかかる検査は簡単にすませよう」としてしまう人もいるかもしれません。さらには目標が未達だった場合に、記録を改ざんするかもしれません。
こうしたことは営業部門でも起こり得ます。「営業部の売上を昨年比2割増」という目標を上が設定します。今度は結果を人事評価に反映させるというおまけ付きです。昇給や昇格に結びつけてまでもやる気にさせたいようですが、どうでしょうか。
現実は、短期的な目標達成への動機が強くなればなるほど、上の人たちが思う通りの行動をしなくなるものです。厳しい売上目標に対して、架空の売上計上とか、信用リスクのある会社への販売とか、強引な手法で売り込もうとすることが発生する可能性があります。ちなみにデミング博士は、報酬をちらつかせて目標を達成させようとする取り組みを痛烈に批判してます。
次回に続きます。