おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
ISO42001各箇条解説、今回は箇条4.1「組織および状況の理解」を解説します。ここでは3つのポイント「課題の特定」「気候変動が問題であるか判断」「役割の明確化」をしっかりと説明します。
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箇条4.1「組織および状況の理解」の位置づけ
今日説明する箇条4.1は、AIマネジメントシステムを構築する上での、まさに出発点となる部分ですね。ここがしっかりしていないと、後のシステム運用がちぐはぐになったり、リスクを見落としてしまったりする可能性があるので、非常に重要なステップです。
まず最初に何をするのかというと、我が社をとりまく状況をしっかりと調べる、ということです。ここで言う「状況」とは、我が社のビジネス環境や社内の体制、業界の動向、法律や規制のような外部要因など、さまざまな要素を含みます。これらを把握したうえで、AIマネジメントシステムを、我が社のどこに適用するべきかを決めていきます。ここでいう「適用する場所」とは、たとえば、AIを使う特定の部門やプロジェクト、製品開発の一部などが該当します。そしてこの判断を起点として、その後の計画づくりや、実際に現場でどうAIを運用するか、具体的な管理の仕組みづくり(つまり、マネジメントシステムの構築)につなげていく流れです。
箇条4.1の要求事項「課題の特定」
この箇条4.1の要求事項として、ポイントが3つあります。これを順番に解説していきます。
まずはひとつめ。課題の特定です。
皆さんは、なにか目的を達成するために、AIを使うんですよね。その目的を達成することに関係する、内部・外部の課題を明らかにしなさい、というのが、このひとつめのポイントです。例えば、AIチャットボットを導入してカスタマーサポートにかかる人手を減らしたい、というのが、我が社の目的だとします。その場合、AIチャットボットの処理能力や、他社での活用事例などが、関連する課題として考えられますね。
他にはどういう課題があるか、例を見てみましょう。これは、規格の注記に書いていることをもとにして、作成をしたものです。
外部の課題とは、我が社の外で起きていること、例えばAIに関する法律やガイドラインのこと、競合他社の動向などがあります。また内部の課題とは、我が社自身の内部にある課題です。例えば、我が社の経営陣が目指している方向性や、我が社のいまの組織とか管理の仕組みなどがあります。なお、「『課題』というと、解決すべき問題のように聞こえますが、ここでの課題はネガティブなものに限りません。例えば、新しい技術の登場や市場の拡大など、プラスの要素も含みます。
ここで決めた課題は、その後、どのように活用されるのでしょうか。
例えば、「競合が新しいAIサービスを開発した」という外部の課題を特定したとしましょう。そして、我が社も負けずにAIサービスを新規開発しようと決めました。すると、新しく開発するAIサービスは、AIマネジメントシステムの適用範囲に含め、管理されることになりますね。課題はさらに、箇条6で具体的に検討されます。例えば、新しく開発するAIサービスにはどのようなリスクがあるかを検討し、そのリスクを受け入れ可能なレベルにまでおさえるための方法を考えます。さらには開発目標…例えば競合のAIに対抗するために、開発スピードを早めるというような目標を立てます。そして箇条7では、立てた計画を実行するために必要なハードウェアやソフトウェアを用意したり、エンジニアの教育訓練などを行って準備をします。続いて箇条8で、立てたリスク管理策や目標を実現できるよう、現場で開発行為を行います。そして箇条9で、狙い通りに開発が進んでいるかどうかを確認するとともに、会社を取り巻く外部・内部の課題に変化がないかもモニタリングします。変化が認められたら、また箇条4.1に戻って、同じような処置をします。そして最後、箇条10では、箇条9での確認結果を踏まえて、改善すべきところがあれば改善をします。また、評価結果を踏まえて計画を見直し、現場での開発を調整しながら、継続的に改善を進めていきます。AIマネジメントシステムは、一度決めたら終わりではなく、常に最適化を続けることが求められるというわけですね。箇条4.1で特定される課題は、このような形で、その後のマネジメントシステム上で扱われます。