おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
この2月に、ISO14001の改訂案が公開されました。気候変動や生物多様性など、今の時代に対応した内容が盛り込まれます。この改訂案の内容と、今後のスケジュールを、ざっくりと説明します。
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今回のISO14001の目的・背景
今回の改訂案には、大きく2つの目的があります。一つは「今日的課題対応」、もう一つは「補強」です。
今日的課題対応
まず、今日的課題対応についてです。いま、気候変動や生物多様性などの問題が、世界的に特に注目される環境課題となっています。
気候変動とは、主に人間の活動による温室効果ガスの排出によって、地球全体の気温や気象パターンが長期的に変化する現象です。極端な気象、海面上昇、水資源の枯渇など、さまざまなリスクが広がっており、事業活動にも大きな影響を与えるとされています。
また、生物多様性とは、地球上のさまざまな生き物やそのつながりの豊かさのことを指します。森林破壊や過剰な資源利用により、生態系が崩れると、農業や漁業などの一次産業への打撃はもちろん、医薬品や日用品の原料供給が不安定になったり、新たな感染症リスクが高まるなど、ビジネス全体にも影響が波及するリスクがあります。
こうした課題は、多くの業種に関係しており、ISO 14001を使う組織も、これに適切に対応できるよう、規格の中で明記される見込みです。
補強
そしてもう一つが、補強です。すでにこれまで規格が求めていたことを、より明確に、そして、より具体的に示す形で整理される見込みです。
この今日的課題対応と補強によって、企業が迷うことなく、かつ、今日的な課題を漏らさずに、ISO 14001を運用できるよう、手を加えるというのが、今回の見直しの基本的な方向性です。
改訂案の4つのポイント
今回の改訂案で特に注目すべき4つのポイントをご紹介します。
まず1つ目は、箇条番号や構成の調整です。これは、ISOが全体で採用している「調和させる構造(Harmonized Structure)」、略してHSと呼ばれる共通構造に合わせて、ISO14001の見出しや章の整理を行うというものです。例えば、新たに箇条6.3「変更の計画策定」が追加されたり、マネジメントレビューの項目が細分化されます。ISO9001などの他の規格も、そうした章立てになってるので、それに合わせるということですね。
2つ目は、今日的課題対応としての環境課題の明記です。気候変動や生物多様性など、近年特に重要性が増している課題について、箇条4.1や4.2、さらには環境方針の項目などでも、はっきりと記載されるようになりそうです。
3つ目のポイントは、補強としてのライフサイクルやリスク管理の具体化・明確化です。ライフサイクルについては、一部の箇条でより強調されるようになりそうです。またリスク管理についても、箇条6.1が全体的に再構成されるようですね。
そして4つ目は、言い回しや注記、附属書Aの充実です。これまで曖昧に読み取られていた部分を、よりわかりやすく修正したり、補足的な解説を追加することで、実務でのわかりやすさを向上しようとしています。
いろいろあるなあと思うかもしれませんが、新しい要求事項というのはないと言われています。これまで暗に求めていたものを、より明確にするということです。ただ、規格の上で明確になれば、それが外部審査などで問われる可能性が一層高くなることになるでしょうから、この改訂案のポイントについては、再度マネジメントシステムでどう扱うかを考え直す必要はありそうですね。