おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
4月25日に2025年版 中小企業白書が公開されました。白書は中小企業の現状を浮き彫りにするものですが、同時に、政策立案の根拠となるものでもあります。今回は第2部第1章をざっくりと読んでいきたいと思います。
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2025年版「中小企業白書」はこちら
です。
前回までの記事はこちら
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2025年版 中小企業白書をざっと読む(第1部)(1)
おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。 ちょっと出遅れましたが、4月25日に2025年版 中小企業白書が公開されました。白書は中小企業の現状を浮き彫りにするものですが、同時に ...
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2025年版 中小企業白書をざっと読む(第1部)(2)
おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。 ちょっと出遅れましたが、4月25日に2025年版 中小企業白書が公開されました。白書は中小企業の現状を浮き彫りにするものですが、同時に ...
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2025年版 中小企業白書をざっと読む(第1部)(3)
おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。 ちょっと出遅れましたが、4月25日に2025年版 中小企業白書が公開されました。白書は中小企業の現状を浮き彫りにするものですが、同時に ...
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1. 経営力と成長戦略の重要性
要点は以下の通りです(NotebookLMによるAI要約です)
中小企業は、深刻化する人材不足、「金利のある世界」の到来、円安・物価高騰を背景とした生産・投資コストの増加など、厳しい経営環境に直面しています。このような環境変化を乗り越えるためには、経営資源を確保・活用して経営力を高める取り組みや、スケールアップにつながる経営戦略・投資行動が不可欠です。経営者・経営陣の「経営力」が、中小企業の成長・発展において特に重要であるとされています。
ここで「スケールアップにつながる経営戦略・投資行動が不可欠です」と(半ば唐突に)結論が導かれていますが、これは2024年より日本政府(経済産業省・中小企業庁)は、中堅企業に対する支援を手厚くしたことと関連がありますね。
2. 経営戦略における差別化と外部環境への意識
要点は以下の通りです(NotebookLMによるAI要約です)
製品・商品・サービスの差別化は価格競争からの脱却と付加価値向上につながると指摘されています。アンケート調査によると、中小企業が最も重視する差別化要素は「顧客との密着性・コミュニケーション」であり、次いで「高い品質」、「希少価値・プレミアム感」が挙げられています。ただし、業種によって重視する要素に違いが見られ、建設業や運輸業では「特に差別化を意識していない」と回答する割合が高い傾向にあります。
製品・商品・サービスの差別化が重要というのは、これまでの白書とも同じ論調です。これは経営のセオリーなので「そりゃそうだろうな」という結論になります。
建設業や運輸業が「特に差別化を意識していない」と高い割合で答えるのは、一般的に多重下請け構造の業界である「言われたとおりにやる」ことが求められる業界だからだと思います。まあただ「言われたとおりにやる」業界だからといって差別化が全くできないというわけでもないですが。品質の良し悪しやESGへの取組みは差別化要因にもなります。
また、経営戦略策定や新規事業検討において最も重視する外部環境は「競合他社の特徴・動向」です。製造業や情報通信業では「ニッチな市場であること」を重視する割合が高く、大企業が参入しにくい領域での事業展開を志向している可能性があります。建設業や運輸業では「特に外部環境は重視していない」と回答する割合が高いことも確認されています。
これも「そりゃそうだろうな」という内容です。大企業が参入しにくい領域での事業展開を志向しているというのも、「大企業がおいしい領域を占めているので、中小企業はニッチ領域を攻めざるをえない」という背景があります。
製品・商品・サービスの差別化と市場環境への意識の有無別に価格転嫁の状況を見ると、両方を意識している事業者で価格転嫁が進む傾向にあります。特に市場環境を意識することによる影響が大きいことが示唆されており、ターゲット市場における競合他社の動向、市場構造、仕入れ・調達の安定性などを分析し、価格交渉力を有することができる市場環境であるかを見極めることが重要です。
これは、製品・商品・サービスの差別化も重要ではあるけど、市場環境を意識することが、価格転嫁の成否に関係する、ということですね。「市場環境」とは「競合他社の動向、市場構造、仕入れ・調達の安定性など」ということですが、こういうことを知ることがなぜ価格転嫁につながるか、ちょっと説明不足のような気がしますね。
例えば、ある自社の顧客(大手メーカー)に部品を供給している競合他社はどこで、何社くらいあって、彼らは価格についてどのような方針をとっているかについて調べて、分析して、値上げ交渉の余地や値上げ幅を検討することが、価格転嫁につながるというようなことを言いたいのだと思います。(しかし下請け中小企業のような場合は、親会社の意向が強すぎて、分析の結果が必ずしも価格転嫁に繋がらない場合もありそうですけどね。)
この点に関するデータは以下の通りなのですが、まあ正直なところ、この白書の記述には違和感があります。とくに2つ目と3つめのグラフはほとんど変わりがなく、このわずかな差を根拠に「市場環境の意識が影響を及ぼす」とするのは定量的根拠が薄いように思います。あと、n数が違い過ぎていて、差が統計的に有意かどうかの検定がされていない限り、そこから結論を引き出すのは危うい用に思います。
このグラフでは「意識をしているか」どうかしか訊いていませんが、白書の文面には価格転嫁ができた結果を「市場環境そのものの分析力」につなげています。意識しているということと、分析力はイコールではないので、白書のこれはちょっと意図的なものを感じますね。
個人的な見解としては、市場環境を「意識」「分析」することは必要だとは思うし、どんな企業でもある程度はやっているものだと思うが(n数の違いがそれを如実に示す)、それが価格転嫁の成否に直結するかどうかはそう簡単に結論づけられない、という感じでしょうかね。