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ものづくり補助金の加点項目「1%の賃上げ」における「給与支給総額」を考える

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おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。

ものづくり補助金の加点項目に「総賃金の1%賃上げ等に取り組む企業」というものがあります。加点項目なので確実にとりたいところなのですが、これにおける「給与支給総額」について考察をしてみたいと思います。

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そもそもなぜ「賃上げ」が加点項目なのか

最近ではあまり言われなくなりましたが、一時期アベノミクスでは企業の賃上げを重視していたことがありました。このものづくり補助金でも、実施2年目の平成25年度から「賃上げ、人材育成をしている企業は加点」という制度ができました。おそらく、アベノミクスでの賃上げ誘導と連動しているのでしょう。政策の狙い通り、賃上げを実現できている企業には加点する、ということなのだと思います。(なんだか順序が逆のような気もしますが)

加点項目を確認しよう

この「総賃金の1%賃上げ等に取り組む企業」についての加点項目は、次のように表記されています。まずはこれをじっくり確認しましょう。

以下の3つ(①~③)の取り組みのいずれかを実行していると、証明書類とともに提出することで加点されます。

給与総額を上げた又は上げる企業・処遇改善するため、以下のいずれかの取組みを行っている場合は、該当箇所に☑を付し、その内容を具体的に説明してください(該当しない場合は記載する必要はありません)。
また、研修の実施、賃金アップの比較等の証拠書類(源泉徴収票の写し、領収書、賃金台帳、賃上げの従業員への表明を証する書類。又は、給与台帳、決算書類等、企業全体の給与総額がわかる書類でも可)を添付書類として必要部数提出してください。
※ 以下の各年については、決算期ベースの事業年(又は事業年度)を元に算出しても可。
① 企業による従業員向けの教育訓練費支出総額(外部研修費用、資格取得・技能検定の受験料、定時制高校や大学の授業料などに対する企業による補助総額)が給与支給総額の1%以上である企業
② 以下のいずれも満たす賃上げを実施している企業
・ 平成29年の給与支給総額が、28年と比較して1%以上増加
・ 平成30年の給与支給総額を29年と比較して増加させる計画
③ 平成30年の給与支給総額を29年と比較して1%以上増加させる計画を有し、従業員に表明している企業

ものづくり補助金における「給与支給総額」とは何か

この「給与支給総額」というものが、なかなか扱いづらい言葉です。明確な定義のある用語ではなく、どのようにも解釈できるからです。実際にインターネットで検索をしてみると、時間外労働手当は含むという定義があったり、含まないという定義があったり、ゆらいでいます。

そんな中でも、補助金で加点を得るためには対策を講じないといけないのですが、比較的補助金に近い分野の定義を参考にしましょう。ものづくり補助金と同じく、経産省・中小企業庁のラインで実施されている補助金施策に「ふるさと名物応援事業補助金」というものがあります。その資料に、「給与支給総額」についての定義がありますので、それを参考にします。「ふるさと名物応援事業補助金」の定義は次の通りです。

①給与支給総額は、当該年において従業員に支払った又は支払う予定の給与(役員給与は含まず、パート・アルバイトへの給与を含みます。また、通常の賃金のほか、残業手当・賞与を含みますが、退職手当は含みません。)総額を記入してください。

いかがでしょうか。これは僕の推測ですが、賃金台帳の「総支給額」をイメージしているのではないかと思います。

また、一般的に「総支給額」というと、控除前の額を指すでしょう。ご存知の通り、給与は額面通りそのまま全額を支給するのではなく、所得税、住民税といった税金、健康保険料や厚生年金保険料、雇用保険料などの社会保険料等を、企業が総支給額から源泉徴収して納付することが法律で決められています(つまり、天引きです)。これらの源泉徴収前の額だと捉えるほうが自然ですね。

したがって、ものづくり補助金の加点要素でいう「給与支給総額」は、僕は次のように定義をしています。

  • 各種控除前の総支給額であり、
  • 役員給与は含まず、
  • パート・アルバイトへの給与を含む、
  • また、通常の賃金のほか、残業手当・賞与を含むが
  • 退職手当は含まない

これを証明する書類としては賃金台帳を持ち出すのが、一番しっくりくるかもしれません。賃金台帳で一般的にみられる項目として「総支給額」という項目がありますが、それが上記の定義にはほぼ当てはまるからです。

ものづくり補助金の加点証拠書類として「賃金台帳」がイメージされているもう一つの理由

ものづくり補助金の加点証拠書類としては「賃金台帳」がイメージされているのだろうと思うもう一つの理由があります。公募要領に記載されている下記の表現なのですが、ちょっと見てみましょう。

  • 平成29年の給与支給総額が、28年と比較して1%以上増加
  • 平成30年の給与支給総額を29年と比較して増加させる計画
  • 平成30年の給与支給総額を29年と比較して1%以上増加させる計画を有し、従業員に表明している企業

何か気がつくことはありませんか?ここで求められているのは「平成29年」「平成30年」という暦の上での年であって、「年度」ではありません。賃金台帳では一般的に、年度ではなく、1月~12月分の賃金を記録します。というわけで、やはり給与支給総額を参照する書類としての王道は「賃金台帳」なのだと思います。

(似た性質のものとして、源泉徴収簿でも可能かもしれません)

しかし、賃金台帳でなければダメということでもない

だからといって、賃金台帳でなければダメということはありません。公募要領にも「源泉徴収票の写し、領収書、賃金台帳、賃上げの従業員への表明を証する書類。又は、給与台帳、決算書類等、企業全体の給与総額がわかる書類でも可」と書かれています。決算書類等とあるので、損益計算書などでも代用は可能でしょう。

例えばですが、貸借対照表(販管費の明細や製造原価報告書)でいうと、給与支給総額は「給与手当」「雑給」「賃金」「賞与」「福利厚生費」「法定福利費」あたりだと考えるのが自然かもしれません。これを2年度分比較をする、という方法もあるとは思います。(こちらは暦の上での年ではなく、年度での比較になりますが)

従業員数の変動をどう考えるか

この加点要素を検討しているときに悩ましいのは、従業員数の変動をどう考えるか、ということです。従業員が増えれば「給与支給総額」は当然に増えますし、反対に減れば「給与支給総額」は減少します。ベースアップはしたけれども、定年退職者が出てしまったので、総額としてはダウンした、という企業もあるのではないでしょうか。そのような場合は、「1%の賃上げ」には該当しないのでしょうか。

これには答えがありません。何が加点として認められ、何が認められなかったのかは事務局(中央会)からフィードバックがないのでなんとも言えません。ただ、何も主張しないよりも主張したほうが加点の可能性がありますので、何かは主張したいところです。考え方の一つとしては、前年と当年とで、両方の年に在籍した従業員で比較をする、という方法があるかと思います。ただしこれが事務局(中央会)や審査員に受け入れられるかどうかはわかりません。でも、何も書かないよりはきっとマシですよね。

一度このあたりの話を某県の中央会の担当者に聞いてみたところ「合理的な範囲内で、お好きなように計算してみてください」と言われたことがありました? 僕はこの方式で柔軟に対応をしていますが、僕自身の支援実績(採択率)が8割程度であることから、これでもある程度は考慮されているのではないか……という手ごたえみたいなものはあります。

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