決めたことを守るというのは、当たり前のようでなかなかできないことです。最近でも、神戸製鋼や日産自動車など、企業の様々な不祥事が明らかになっていますが、これは「決めたことが守られていない」ために起こっていることです。
決めたことが守られる組織を作るには、どうすればいいのでしょうか?
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そもそも、なぜ決めたことが守られないのか
そもそも、なぜ決めたことが守られないのでしょうか?僕の経験則から、次のような点が挙げられると感じています。
- 他の同僚が誰もやっていない
- その決まりごとを守れば、結果がでる(上手くいく)と信じていない
- 決まりごとを守らなくても、怒られないだろうと思っている
- それは自分ではなく、他人が守るものだと思っている
- 忙しくて守る余裕がない
- 誰も見ていない。管理していない。
- 一回くらいやらなくても大丈夫だろうと思っている
- 決まりごとを守らないほうがメリットが大きい
こういう背景から決めたことを守らないのです。僕は「決まりごとを守らないほうがメリットが大きい」というのが、要因として大きいのではないかと思っています。例えば、決まりごとを守らなければ、それに費やされる時間を節約できる、といってものです。神戸製鋼の一件でも、規定水準を満たさないものを検査で合格にすれば、作り直しの手間や、顧客に説明する手間は省けるというメリットがあったといえます。さらには、手間を省き、収益を上げれば、自分たちは評価されるというメリットもあったでしょう。
決まりごとを破ることで得られるメリットがあるので、何度も決まりごとを破ってしまいます。そうして「決まりごとを守らなければ、メリットがあるのだ」ということを学習していくようになります。すると組織の中では、決まりごとを守らない人が多数派となり、わざわざマジメに決まりごとを守っている人も「ばかばかしい」と思うようになり、決まりごとが守られなくなってしまいます。
スピード違反の心理と一緒
これは、車のスピード違反の心理と同じです。誰でも、スピード違反で捕まると罰金だと知っていますし、最悪の場合は事故で死ぬかもしれないということも知っています。しかし、ほとんどのケースでスピード違反をしても、捕まることも死ぬこともないので、スピード超過をやめられない。もっというと、スピード超過をして早く目的地に着いてしまったり、スピード超過をして気持ちよく走れたという「いいこと」があると、それを学習し、行動が強化されてしまいます。
「決めたことを守らなければ、実はいいことが起きる」という循環を断つ
こういった循環で「決まりごとを守らない」ことを学習し、強化されているのであれば、この循環を断つ必要があります。最もシンプルな方法は、やらないとどういうことになるのかを理解させることです。自動車免許の更新の際には、事故映像などを見せられることがありますよね。こうして啓蒙していく方法が一つです。
そして、上司が管理・監視することも必要です。スピード違反の例で言うと、パトカーによるパトロールや、オービスの設置などがありますね。ちなみにスピード違反の取り締まりの場合、取り締まりレベルが低いと、事故抑制効果も低くなるそうです。かといって取り締まりレベルは、ある一定のレベルで頭打ちとなり、効果は薄くなるようです。ここから学べることは、上司もそれなりの労力をかけないと意味がないということですね。
忘れられがちな「決めたことを守るための行動に対する障がいを取り除く」ということ
決めたことをやり抜くために、障害となるこを取り除いてあげることは、おろそかにされることが多いです。例えば、決まりごとそのものが繁雑であれば、それが簡単に済むようにやり方を見直しするといったことです。
神戸製鋼の報告書でも「当社は(中略)経営のスピードと効率化を図るため、より下位の組織に権限を委譲するとともに、責任を求め、自律的運営を促進してきた。このように権限の委譲を推進する一方で、経営自らが責任をもって工場の困りごとを解決する姿勢を見せなかったため、組織の規律は各組織の「自己統制力」に依存する状況となった。」と報告されていますが、ルールを守る上で困っていることがトップに報告され、トップもその状況に対して速やかに手をうつという場や仕組みが必要です。
売上や利益額で評価をしない
売上高や利益額という財務的な数値で現場の従業員を評価すると、うまくいかないことが多いです。神戸製鋼の一件も、収益重視の社風であったことが報告書でも述べられていました。
もちろん、企業にとって財務的な数値は大切です。しかし財務的な数値は「遅行指標」といい、行動からある程度の時間がたって数字に現れてくるものである上、行動以外の要因にも左右されるために、現場の人々の動機づけになりにくいという面をもっています。決まりごとを守って信頼に応えていくことは、長期的には必ず財務的にも良い影響は生まれますが、数日で現れてくるものではないですね。
したがって、ルールを守ったかどうかの評価は、財務的な数値ではなく、その人の行動の成否を評価することが、行動の定着には望ましいでしょう。(例えば、ルールを守るための改善提案数が何件であったかなど)
決めたことを守るというのは、口で言うのは簡単ですが、実際には難しいものです。人間と組織の行動の複雑さを理解した上で、様々な角度から対策を講じなければなりません。