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生産性とマルチタスクに関する考察

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おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。

複数の作業を同時並行的に行うことを「マルチタスク」と言います。一見、生産性が高そうに感じますよね?しかし「マルチタスクでは生産性が上がらない」という結論の研究がたくさんあります。どうしてマルチタスクでは生産性があがらないのでしょうか?

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そもそも「マルチタスク」とは何か

もともと「マルチタスク」の概念は、複数のアプリケーションを同時に実行するコンピューターの能力のことを指していました。そこから転じて、人が複数のことを同時に行う作業についても「マルチタスク」と呼ばれるようになりました。人の行う「マルチタスク」の例としては、電話をしながらPCで文書の編集をしたり、電子メールへの返信をしたりするようなことを指します。

マルチタスクに関する近年の研究について

マルチタスクについては様々な研究がされています。僕が知る限りですが、学術研究として出どころが明確なものをご紹介します。

カリフォルニア大学アーバイン校の研究者は、事務職のマルチタスクについての研究を行いました。ある作業中に電話や電子メールへの応答などで作業が中断される状況を作りました。そこから元の作業に戻るまでどの程度時間がかかるか計測したのです。計測の結果、平均で25分かかることがわかりました。これは事務職ではよくある状況ですよね。一度物事が中断すると、元の作業に戻るにはそれなりの時間がかかるようです。

脳科学分野の研究でも同じような結果が出ています。fMRIを使用して複数のタスク処理に対する脳の反応を検証した研究があるのですが(Vanderbilt大学の心理学者であるRené Maroisが実施した研究など)、Maroisは脳が一度に複数の刺激に反応することを余儀なくされたときに発生する「反応選択のボトルネック」の証拠を見つけました。つまり、複数タスクの切り替えが時間のロスにつながり、マルチタスクが時間のロスになることが分かったのですね。

脳の切り替えがうまくいかないのであれば、マルチタスクによってミスが誘発される可能性もありそうですよね。ミシガン大学の心理学者デイビッド・マイヤーは、マルチタスクをすることはストレスとなり、ミスの発生につながると指摘しました。長期的には(ストレスホルモンにより)健康問題を引き起こすうえ、短期記憶の喪失にもつながると指摘しました。デイビッド・マイヤーはもともと、トレーニングをすれば効果的にタスクスイッチングできるようになるだろうと楽観的だったそうですが、当初の仮説とは異なる結果が出たようですね。

ただしマルチタスクとストレスや精神的満足については、多様な研究結果があります。オハイオ州立大学のコミュニケーション助教授である研究研究者のZheng Wangは、実験の結果から「マルチタスクでは生産性はあがらないが、精神的な満足感がある」と結論づけています。マルチタスクでは生産性がさして上がっていないのですが、複数を同時にこなした(うまく仕事をやり遂げた)という満足感があるということでしょうかね。

マルチタスクに関する研究は、もちろんここに挙げたものばかりではありませんが、おおむねマルチタスクと生産性の関係について否定的な結論ではないかと思います。

本来業務をしながらゴミを拾うという簡単なことでも意外とできない

マルチタスクについて僕の経験もお話ししましょう。ある企業(介護福祉業)で5S活動の支援をしたときのことです。介護福祉業はシフト制で、労働集約的な仕事である上、業界としても慢性的な人手不足であるため、あらかじめ決めた時間に清掃や整理整頓をするということが(製造業などと比べて)難しい業種です。そこで「まずは通常の介護業務をしながら、手の空いた際に清掃をしよう。清掃の時間がとりづらいならば、廊下や食堂などで落ちているゴミを拾うだけでもいいよ」として5S活動をキックオフしました。

ところが、現場を見てまわっても、業務をしながら清掃をしたりゴミを拾うという行為を見かけることがほとんどありません。その施設のマネージャーに確認をしても「やる人はやっているけれども、やらない人はやらない」というお決まりの回答でした。「気が付いた時にゴミを拾うだけなんて、簡単じゃないの?」という気もするのですが、やはり脳のモードが介護業務モードの時は、ゴミを拾うというモードに切り替えることが困難なので、ついつい忘れてしまったり、覚えていたとしても本来業務を優先してしまうのだと思います。

そこで、あらかじめその日の個人ごとのスケジュールに、1日5分間だけ清掃をする時間を盛り込むようにしました。従業員が一斉に清掃するのではなく、個人ごとに設定をしたのですね。そうするとちゃんと清掃をするようになったのです。作業と作業の区別を明確にして、次の作業に移る際に、頭の切り替えのための間を置くことは大切だなと僕自身も実感しました。もちろん個人差はあるでしょうが、作業中にゴミを拾うという簡単なことであっても、マルチタスクをこなすことに困難が伴うのだと思います。

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