おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
4月28日、参議院本会議において、いわゆる「フリーランス新法」(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が成立しました。当社も一人法人なので「特定受託事業者」に該当するのですが、結構重要な法律なので、法案の全文を読んでいきたいと思います(第4回目)
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フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)の全文を読む(1)
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フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)の全文を読む(2)
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フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)の全文を読む(3)
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フリーランス新法第三章「特定受託業務従事者の就業環境の整備」について
フリーランス新法の第十二条~第二十条にかけては、フリーランスが働きやすい環境を、発注者側が整備し配慮することを求めています。詳しくは後述しますが、労働関係法規によく似た条文があります。フリーランスは、見かけ上は雇用関係になくても、雇用者と労働者の関係に似た関係性がある場合があります。そのような点に配慮した条文になっているのだと思われます。
以下、フリーランス新法の第十二条~第二十条を解説します。
第十二条 募集情報の的確な表示
第十二条 特定業務委託事業者は、新聞、雑誌その他の刊行物に掲載する広告、文書の掲出又は頒布その他厚生労働省令で定める方法(次項において「広告等」という。)により、その行う業務委託に係る特定受託事業者の募集に関する情報(業務の内容その他の就業に関する事項として政令で定める事項に係るものに限る。)を提供するときは、当該情報について虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示をしてはならない。
2 特定業務委託事業者は、広告等により前項の情報を提供するときは、正確かつ最新の内容に保たなければならない。
発注者は、広告等において、フリーランスを募集する時は、ウソや誤解を生じさせるような情報を表示してはいけません。また、情報は正確かつ最新の内容に保たなければなりません。
これは2022年10月1日に施行された職業安定法の改正内容によく似ています。職業安定法の場合は求職者(求人企業と雇用契約を結ぶ正社員・パート・アルバイト等)の保護を目的としていますが、フリーランス新法はもちろん、雇用関係のないフリーランスの保護を目的にしています。
ここでいう虚偽の表示とは、例えば実際の報酬よりも高い報酬額を掲載するなどを指していると思われます。また誤解を生じさせる表示とは、委託内容をあいまいに表示をするようなことを指していると思われます。
第十三条 妊娠、出産若しくは育児又は介護に対する配慮
第十三条 特定業務委託事業者は、その行う業務委託(政令で定める期間以上の期間行うもの(当該業務委託に係る契約の更新により当該政令で定める期間以上継続して行うこととなるものを含む。)に限る。以下この条及び第十六条第一項において「継続的業務委託」という。)の相手方である特定受託事業者からの申出に応じて、当該特定受託事業者(当該特定受託事業者が第二条第一項第二号に掲げる法人である場合にあっては、その代表者)が妊娠、出産若しくは育児又は介護(以下この条において「育児介護等」という。)と両立しつつ当該継続的業務委託に係る業務に従事することができるよう、その者の育児介護等の状況に応じた必要な配慮をしなければならない。
2 特定業務委託事業者は、その行う継続的業務委託以外の業務委託の相手方である特定受託事業者からの申出に応じて、当該特定受託事業者(当該特定受託事業者が第二条第一項第二号に掲げる法人である場合にあっては、その代表者)が育児介護等と両立しつつ当該業務委託に係る業務に従事することができるよう、その者の育児介護等の状況に応じた必要な配慮をするよう努めなければならない。
発注者は、長い間一緒に働くフリーランスが、妊娠、出産、育児、介護をしながら働くことができるように、必要な配慮(例えば時間や仕事量を調整してあげること)を求めています。第二項は、長い間一緒に働くフリーランスでなくても(単発や短期の仕事を依頼するフリーランスであっても)、育児介護に関しては同じような配慮をすることを求めています。(単発・短期の場合は、妊娠、出産に関する配慮までは求めていない)
この条文も育児・介護休業法で、業務と家庭生活の両立を求めているものとよく似た条文です。
第十四条 業務委託に関して行われる言動に起因する問題に関して講ずべき措置等
第十四条は長いので、2つのパートにわけて解説をします。まずは最初のパート(第一項)です。
第十四条 特定業務委託事業者は、その行う業務委託に係る特定受託業務従事者に対し当該業務委託に関して行われる次の各号に規定する言動により、当該各号に掲げる状況に至ることのないよう、その者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講じなければならない。
一 性的な言動に対する特定受託業務従事者の対応によりその者(その者が第二条第一項第二号に掲げる法人の代表者である場合にあっては、当該法人)に係る業務委託の条件について不利益を与え、又は性的な言動により特定受託業務従事者の就業環境を害すること。
二 特定受託業務従事者の妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものに関する言動によりその者の就業環境を害すること。
三 取引上の優越的な関係を背景とした言動であって業務委託に係る業務を遂行する上で必要かつ相当な範囲を超えたものにより特定受託業務従事者の就業環境を害すること。
フリーランスに対してセクハラ、マタハラ、パワハラ等をしないよう、適切に対応しなさいと求めています。これらの条文と似た法規は、労働者との関係でも存在します(男女雇用機会均等法11条、労働施策総合推進法30条の2、育児・介護休業法25条1項等)。これは労働関連法規でもそうなのですが、適切に対応をしなさいというニュアンスであり、明確に禁止をしているわけではありません。
しかし「その者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」を求めています。具体的には厚生労働省令で定められるのかもしれませんが、似た条文を持つ男女雇用機会均等法11条等を参考にすると、フリーランスがセクハラ等を受けた際の相談窓口を、発注者側で設けるなどの必要があるかもしれません。 (全企業が設置義務を負うようになった「ハラスメント相談窓口」を、フリーランスにも使えるようにする、みたいなイメージなのかもしれません)
第十五条 指針
第十五条 厚生労働大臣は、前三条に定める事項に関し、特定業務委託事業者が適切に対処するために必要な指針を公表するものとする。
前三条(十二条~十四条)に関しては、厚生労働大臣が指針を公表するそうです。厚生労働大臣がやるというところに、フリーランスが持つ労働者性に対応をしようという意図が感じられるような気がします。
なおこの記事の執筆時点(2023年5月)では、まだ指針は公表されていません。令和3年3月26日に策定された「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」とは別の指針が公表されるのだと思われます。
第十六条以降の解説は次回に続きます。