おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
10月2日、日本経済新聞は、中小企業向けの「持続化給付金」に追加で3,140億円の予算をあてると経済産業省が発表したことを報じました。記事によるとこの追加予算は、「家賃支援給付金」向けの予算の一部を割り当てることになるそうです。家賃支援給付金の予算余りの要因を分析します。
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『持続化給付金、3140億円予算追加 家賃支援財源を流用』
日本経済新聞記事の該当部分を引用します。
経済産業省は2日、新型コロナウイルスの影響で売り上げが減った中小企業向けの「持続化給付金」に追加で3140億円の予算をあてると発表した。給付総額は約5.3兆円となる。想定を超えるペースで申請数が増えているため、飲食店などの家賃を支援する給付金向けの財源を回す。
(中略)家賃支援給付金の対象には当初、250万社を想定していたが、申し込みがあったのは65万社にとどまる。経産省の担当者は「今後申請が増えたとしても余ると判断した。家賃支援の給付に支障はない」と説明している。
(10月2日日本経済新聞より)
家賃支援給付金申請件数・給付件数の現状
家賃支援給付金の申請と給付についての現在の状況は、経産省が定期的に更新をして発表をしています。11/5時点の申請件数・給付件数の現状を見てみましょう。
家賃支援給付金申請件数の現状
10月2日の日本経済新聞が報じているように、累計の申請件数は65万件程度です。9月下旬からは週間で2.5万件程度の申請件数で推移していることがわかります。家賃支援給付金の申請期限は2021年1月15日ですので、このペースで推移したとして、最終的な申請件数は100万件に到達するかどうかといった水準になるのではないかと思われます。
家賃支援給付金給付件数の現状
一方、審査が終わり、給付された件数の現状はどうでしょうか。こちらは累計で40万件を超える水準です。審査体制・能力も充実してきたためか、給付件数も大きく伸びている週が見られます。家賃支援給付金は、最初の給付が行われた8月4日の時点では、申請29万件に対して給付2万件であり、申請数の1割にも達していませんでした(日本経済新聞電子版 2020/8/19 23:00より)。それが現在では60%を超える給付率になっています。
家賃支援給付金の予算はどの程度余りそうか?
家賃支援給付金の対象には当初、250万社を想定していたところ、このペースだと100万社程度に着地しそうです。つまり想定の40%程度しか活用されないということになります。
家賃支援給付金の総額は2兆242億円です(下図参照)。そのうち、942億円でリクルートに支給事務委託を行っていますので、企業への給付分は1兆9,300億円になります。これが250万社想定の予算額だとすると、1社あたりの給付額を77万円程度と見込んでいたことになります。
実際、8月19日の日本経済新聞の記事によると、その時点での給付額は200億円を2万者に給付したということでしたので、1者あたりの給付額は約100万円程度でした。初回支給時(8/4)の時点での1者あたりの給付額は92万円でしたので(当社調べ)、1者あたりの給付額はやはり100万円近辺であることが推察できます。
ここから見ても、推定最終給付対象100万社×100万円+委託費492億円と計算をすると、最終的な予算消費額は1兆492億円となり、元の予算のほぼ半分になると思われます。確かにここから3,140億円を持続化給付金に回しても、家賃支援給付金の運用には問題はなさそうです。
家賃支援給付金の申請はなぜ低調なのか?
どうして家賃支援給付金の申請は低調なのでしょうか?
その理由の一つに、売上減少比較期間が今年5月以降という条件があるでしょう。家賃支援給付金の基本的な給付対象は、2020年5月~12月の間で、前年(2019年)の同月の売上と比べて50%以上減少したか、連続する3カ月で(同期間比で)30%以上減少した事業者です。5月は緊急事態宣言が解除され、事業者のとって最も苦しい時期を脱した時期です。売上が徐々に回復していく中で、前年同月・同期比で50%以上減少したというケースが経産省の想定以上に少なかったという点が挙げられるでしょう。
もう一つ考えられる理由は申請要件と必要書類の多さ・複雑さです。9月21日の西日本新聞が報じているように、不動産契約が継続していることを証明する書類を整えることが困難なこと、そして家主との折り合いが悪くこれらの書類を入手することが困難であるといったケースがあります。
この先、家賃支援給付金の申請数が劇的に伸びることは考えにくいでしょう。余った予算をどう使うかという点や、このコロナ禍の中で家賃支援給付金の給付条件設計が本当に適切であったのかという点は、議論し検証される必要があるでしょう。