おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
事業再構築補助金では、付加価値額目標が未達の場合に補助金を返還するというペナルティがある可能性が、中小企業庁公式の文書にも書かれていました。これについて「事業再構築補助金の概要」資料で、新たな情報がありました。
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「ミラサポPlus」で示された事業再構築補助金ペナルティの可能性
付加価値額増加の要件を達成できなかった場合、補助金の返還等のペナルティはあるかどうかという点は、中小企業庁が公開した「ミラサポPlus」と「基金設置法人募集要項」で示されていました。
1月14日に、ミラサポPlusでは「よくあるお問合せ(FAQ) 」が公開されましたが、そこには次のような記述がありました(強調筆者)。
なお2月25日現在の「事業再構築補助金に関するよくあるお問い合わせ」(経産省サイト)では、補助金返還ペナルティに関する記述は削除されています。
「基金設置法人募集要項」で示された事業再構築補助金ペナルティの可能性
ミラサポPlusだけではなく、1月28日に中小企業庁が公開した「基金設置法人募集要項」の28ページにも、次のような記述があります。
事業計画において求める事業終了後 3~5 年での付加価値額が年率平均3%以上増加すること等の目標を達成できなかったときは、補助金額の一部の返還を求める場合がある
基金設置法人募集要項に書かれているのは「補助金額の一部の返還を求める場合がある」ということしか書かれていません。どういう場合には返還が要求されるのか(またはどういう場合には返還が求められないのか)という詳しい条件は、この文章だけではよくわかりませんでした。
「事業再構築補助金の概要」で示された事業再構築補助金ペナルティの可能性
一方、2月15日に公開された「事業再構築補助金の概要」の8ページでは、もう少し詳しく、事業再構築補助金ペナルティの可能性について言及されています。
ここでははっきりと「卒業枠」と 「グローバルV字回復枠」という申請類型において、目標未達の場合に補助金返還を求める予定であることが示されています。
「卒業枠」と 「グローバルV字回復枠」というのは、どういうものでしょうか?事業再構築補助金の通常枠には、その目的や企業規模に応じた4つの申請類型があります。その中でも「卒業枠」というのは、資本金又は従業員を増やし、中小企業から中堅企業へ成長する事業者向けの申請類型であり、中小企業の中でもかなり規模の大きな企業が対象となる類型です。
一方「グローバルV字回復枠」は、中堅企業(中小企業基本法における中小企業の定義を超える企業であり、資本金10億円未満の会社)が、海外展開を行う場合の申請類型です。
このように、かなり規模の大きな企業や、目的(中小企業の範囲を超えるほどの拡大を目指すか、または海外展開を目指すか)が限定的な企業に限る申請類型です。この2つの類型に申請する企業は、補助金返還のペナルティを考慮に入れなければならないでしょう。
事業再構築補助金通常枠や特別枠にはペナルティはあるか?
この補助金に申請を検討しているほとんどの企業は、おそらく「中小企業(通常枠)」か、もしくは「特別枠」での応募になると思われます。通常枠・特別枠では、目標未達による補助金返還ペナルティはあるでしょうか?実は、これは、まだ「ある」とも「ない」とも言えません。確かに「事業再構築補助金の概要」では、卒業枠とグローバルV字回復枠についての言及はありましたが、通常枠・特別枠については何も触れられていません。通常枠・特別枠にはペナルティがないから触れられていないのか、それとも通常枠・特別枠のペナルティはまだ検討中なのかもわかりません。
これについて、自民党の鬼木誠衆議院議員は、自身の動画の中で次のように語っています。
これらの条件がもし未達成だったらお金を返さないといけないんですか?と心配するお声も聞こえてまいりますが、中小企業の通常枠の規模でありましたら、そこまで心配しなくていいと思います。ただ事業計画上はしっかりとこの目標が達成できているということが必要でございますので、しっかり計画を作る段階で、どういう経営再建が見込まれるのかということをしっかりと作り込んでいただきたいと思います。
(動画の5:31ごろから。強調筆者)
「そこまで心配しなくていい」という表現もなかなか微妙ですね。通常枠や特別枠にペナルティがあるかどうかは、今後公表される公募要領等で明らかになると思われます。ところで当社の見解としては、可能性は低いのではないかと考えます。特に特別枠に関しては、緊急事態宣言発令にともなう飲食店に対する協力金や、飲食店取引先事業者に対する一時支援金を補完する施策だと言われています(2月15日日経ビジネス記事)。協力金や一時金の補完する位置づけであるものに対して、返還を求めるようなことをする可能性は考えにくいのではないかと思います。
一方、通常枠でも返還ペナルティの可能性は低いと考えます。50,000者以上を採択する見込みである通常枠に関して、目標未達である場合に返還を求めるようなルールにすると、事務局の事務処理が相当煩雑になるのではないかと思います。返還は、採択者数が400社ないしは100社と限定されている「卒業枠」「グローバルV字回復枠」だからできるのではないか、という推測を当社はしています。
ただしこれらも当社の推測の域を出ません。最終的には、今後公表される公募要領等で確認するしかないでしょう。
ただし「収益納付」にともなう補助金返還ルールは適用されると思われます
上記のように、目標未達による補助金返還の可能性は限定的ではないかというのが当社の見立てです。一方「収益納付」にともなう補助金返還ルールは、全ての交付企業に適用されると考えています。収益納付とは、下記のような場合に補助金の一部を返納する制度のことで、補助金適正化法という法律で定められているものであり、事業再構築補助金だけではなく、ありとあらゆる補助金に適用されているルールです。
「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」等の規定により、補助事業(補助金の交付を受けて行う事業)の結果により収益(収入から経費を引いた額)が生じた場合には、補助金交付額を限度として収益金の一部または全部に相当する額を国庫へ返納していただく場合があります(これを「収益納付」と言います)。
(平成29年度補正小規模事業者持続化補助金資料より引用)
ここでいう「収益」とは、あくまでも補助事業の結果による収益のことです。つまり、補助金の申請書に書いた「事業再構築の取り組み」に限定されることでしょう。したがって、会社の決算で利益が出たか(黒字決算であったか)とは関係はありません。会社全体は利益が出ていても、補助金の申請に記載した事業(=申請書に書いた「事業再構築の取り組み」)で収益が生じていなければ、返納の必要はおそらくないでしょう。「事業再構築補助金」の場合は、事業終了後5年間にわたって年次報告の義務が課される予定のようですが、その年次報告でどの程度の収益が生じたかを申請する必要があって、その内容に基づいて収益納付の有無が判断されるものと思われます。
建屋や機械装置等の目的外利用も補助金返還対象になると思われます
収益納付だけではなく、補助金の申請書に書いた「事業再構築の取り組み」以外の用途で建屋や機械装置等を利用する場合も、補助金返還対象になると思われます。
これも補助金施策には一般的に適用されるルールなのですが、「ものづくり補助金」では実際に返還となった事例があります。2020年11月10日の朝日新聞記事によると、「減塩のめんたいこを開発する」という目的で補助金の交付を受けた企業が、実際には減塩ではない従来品の製造に設備を使っていたことが発覚し、補助金870万円を返納しています。
事業再構築補助金でも、事務局による監査や会計検査院による監査が行われます。こうした監査で、目的外利用が発覚した場合には不正受給として返還となります。返還になるだけではなく、上記の事例のように報道で晒し者にされて社会的信頼の失墜にも繋がりますので、絶対におやめください。
事業再構築補助金の全体的な解説については下記をご覧ください
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10分でわかる!事業再構築補助金(概要・書き方・記入例)
【9/21更新】令和3年度補正予算「事業再構築補助金」の6次公募が開始になりました。2年目を迎え、制度が大きく変わった事業再構築補助金ですが、このページではの全容を10分でわかるようにまとめて解説します。
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