おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
ISO9001:2015箇条4.3「品質マネジメントシステムの適用範囲の決定」は、これから品質マネジメントシステムを作り上げていくにあたり、自社のどんな製品・サービスに対して、および自社のどんなプロセス(いわば業務・仕事)に対して、マネジメントシステムを適用するかを決める部分です。
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箇条4.3「品質マネジメントシステムの適用範囲の決定」の位置づけ
まず最初に箇条4.3「品質マネジメントシステムの適用範囲の決定」の位置づけをみておきましょう。箇条4.1では、社内外の課題を挙げなさいと言っています。そして4.2では、利害関係者、これには顧客だけではなく、仕入先や協力会社、従業員、地域などがありますが、こうした利害関係者が自社にどんなことを求めているか、期待しているかを挙げなさいと言っています。そして、この4.1や4.2で挙げたことを考慮して、今日のテーマ、箇条4.3でマネジメントシステムの適用範囲を決めるという流れです。
ここから見てもらったらわかりますが、何の製品サービスに、そして自社のどのプロセスにマネジメントシステムを適用するかというのは、課題やニーズなどをもとに決めるという戦略的な決定が求められるわけですね。決して認証書を得るためだけの理由だとか、自社にとって簡単で都合がいいからといった理由で、適用範囲を決めてはならない、ということです。
4.3「品質マネジメントシステムの適用範囲の決定」の規格要求事項
4.3「品質マネジメントシステムの適用範囲の決定」を詳しく見ていきたいと思います。これが規格要求事項です。
4.3 品質マネジメントシステムの適用範囲の決定
組織は、品質マネジメントシステムの適用範囲を定めるために、その境界及び適用可能性を決定しなければならない。この適用範囲を決定するとき、組織は、次の事項を考慮しなければならない。
4.1に規定する外部及び内部の課題
4.2に規定する、密接に関連する利害関係者の要求事項
組織の製品及びサービス決定した品質マネジメントシステムの適用範囲内でこの規格の要求事項が適用可能ならば、組織は、これらを全て適用しなければならない。組織の品質マネジメントシステムの適用範囲は、文書化した情報として利用可能な状態にし、維持しなければならない。
適用範囲では、対象となる製品及びサービスの種類を明確に記載し、組織が自らの品質マネジメントシステムの適用範囲への適用が不可能であることを決定したこの規格の要求事項全てについて、その正当性を示さなければならない。適用不可能なことを決定した要求事項が、組織の製品及びサービスの適合並びに顧客満足の向上を確実にする組織の能力又は責任に影響を及ぼさない場合に限り、この規格への適合を表明してよい。
まずa)、b)、c)を考慮にいれて適用範囲を決めなさいと言っています。これは先程お話したように、課題やニーズ・期待、そして自社がどういう製品・サービスを提供しているのかということを考慮する、ということです。結論めいた事を言うと、適用範囲は自社の提供している全製品・全サービスを含み、そして自社の全部門、全拠点を含むというのが、一般的な解釈です。どこか一部の製品・サービスだけを適用範囲に含むとか、もしくは製造部門だけを適用範囲に含んで、営業部門や総務部門などは適用範囲に入れない、という判断はダメと一般的には解釈されます。
製品・サービスを今提供しているということは、少なくとも利害関係者からの期待やニーズがあるということですから、そういう期待やニーズのあるものを除外することはできませんよね。課題に関しても同様で、どうやって売上をあげていこうか、どうやって競合に打ち勝っていこうかという課題はどんな会社にもあると思いますが、この課題に取り組む上で「この製品やサービスは関係ありません」とか「この部門は関係ありません」ということは基本的には言えないと思いますね。だから全製品・全サービスを含み、そして自社の全部門、全拠点を含むというのが、一般的な解釈になるわけです。
次の要求としては、適用範囲は文章化した情報として利用可能な状態にして、維持しないといけないとなっています。一般的には品質マニュアルか、それに相当するものに適用範囲を記述するのが一般的ではないかと思います。また、ここで決めた適用範囲については、認証機関が発行する認証書でも記載がされます。その認証書は、取引先やお客さんが視るわけですが、認証書に書かれている適用範囲を見て「ああ、この会社ではこの範囲まで品質マネジメントシステムを適用しているんだな。だったら、この会社に発注をしてもいいな」と安心するわけですね。
また規格には「適用範囲では、対象となる製品及びサービスの種類を明確に記載し」とあります。例えばですが、当社、私の会社、マネジメントオフィスいまむらを題材にするとこういうイメージの表現になるわけです。
経営戦略・事業戦略に関するコンサルティングサービス、研修・セミナーサービスの営業、設計、サービスの提供、納品、アフターサービスの実施、およびそれを支える一連の業務
そして最後の点も重要です。「組織が自らの品質マネジメントシステムの適用範囲への適用が不可能であることを決定したこの規格の要求事項全てについて、その正当性を示さなければならない」とあります。もし製品やサービス、もしくは自社のプロセスのどれかを適用範囲に含まない、除外するという場合は、その正当性を示す必要があるということですね。製品サービス、プロセスだけではなく、例えば「うちの会社は設計開発をやっていません。お客さんからもらった図面通りに、お客さんの指定の加工方法や設備で、ものづくりをするだけです」というような場合は、箇条8.3の設計・開発を除外することも可能といえば可能ですが、その理由をちゃんと説明できなければダメということです。もちろん「面倒くさいから」みたいな理由ではダメで、外部審査員はもちろんですが、利害関係者が納得するような理由でなければダメでしょう。
適用範囲は認証審査の際に外部審査員の見解なども訊いた上で判断をするのがよい
結構適用範囲を決めるって難しいんです。実際は、認証審査の際に、外部審査員の見解なども訊いた上で、判断をするのがいいのかなと思います。もちろん新たに製品やサービスが開発された、という場合は、これも適用範囲に含める必要が基本的にはあります。