おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
ISO9001:2015年版の各箇条解説、7.2力量の説明です。端的に言うと、ちゃんと必要なスキルや資格をもった人に作業をさせなさいよということで、スキルが足りなければ教育訓練しましょう、というものです。
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ISO9001における「力量」の意味
ここでいう「力量」ってどういう意味なんでしょうかね。実はこれは用語集ともいえるISO9000で定義が決まっています。ISO9000によると、「意図した結果を達成するために、知識及び技能を適用する能力」とあります。単なる知識や技能ではなくて、ちゃんと結果を出したり成功に導いたりするように、持っているスキルをうまく使う能力、とでもいいましょうか。つまり、単なる能力や技能ではなく、不良の削減や不良の未然防止を実現し、組織として目指すゴールを達成するために必要な能力・技能だと解釈できるのかもしれません。
ISO9001:2015 7.2の規格要求事項
では規格要求事項を見ていきたいと思いますが、7.2力量の規格要求事項が言おうとしているのは、まずは仕事をする上で必要な力量と、その人(作業者)が持っている力量にギャップがあるかどうかを確認し、力量不足だなと認められた場合には、そのギャップを埋めるための教育訓練をしたり、力量を持っている人を採用したり配置転換したりしなさいよ、といっています。
まずはa)から見ていきますが、業務で必要な力量を明確にしなさいと言っていますね。これは製品・サービスを良品として作り上げるために使うべき能力、経験、知識、技能のことを意味しています。製造業だと、切削加工をする人は段取りの能力、セッティングの能力、プログラムの作成能力や、加工中の異常状態に気づく能力などがあるでしょうかね。新しい機械を買ったり、新しい加工方法を採用した場合は、業務上必要になる力量が変わるかもしれませんので、そうした変化の都度、力量の明確化が必要になるのでしょう。
b)は力量不足ならば教育訓練をしなさいと言っています。これはかんたんですね。
c)はどうでしょうか。該当する場合には、という条件付きなんですが、必要な力量を身につけるための処置をとり、とった処置の有効性を評価する、とありますね。教育訓練が役に立ったかどうかを評価しなさいということなんですが、これは例えば研修を受けたあとに理解度テストなどをやっている企業がまずまずありますね。ただ、理解度テストをやっていればいいかというとそうでもなくて、後日現場で確認しないといけない場合もあるでしょう。例えば、ミスの多い工程で、ミスを減らすために作業手順を変えたとします。変えた作業手順について勉強会をやりました。勉強会のあとにすぐに理解度テストをやってみんな80点以上取れました。これでよかったね、となりますかね?有効性を評価するのであれば、後日現場にいって、ちゃんと教わったように新しい手順でみんな作業をやっているかどうかの確認をするほうがベターかもしれませんし、もしかしからその新しい手順でもミスが全く減ってないということが、後々わかるかもしれませんよね。そうした確認もやってくださいよと言っているのがc)ですね。
そしてd)ですが、力量の証拠として適切な文書化した情報を保持するとあります。これは記録をとっておけ、ということですね。これは必要とされる力量を、たしかにこの人は持っていますよという証拠の記録のことを指します。一般的にはスキルマップを作るという企業が多いように思いますが、教育訓練の記録などもこれに該当するかもしれません。
また書類を作らないといけないの?面倒くさいな!と思うかもしれませんが、ここの記録はとても重要です。2年ほど前に自動車メーカーで、完成検査を無資格者にやらせていたという不祥事がありました。このときのように、お客さんや行政機関などは、不良などが発生したときに、お客さんや場合によっては行政機関は、本当に力量ある従業員に作業をやらせていたのか?と疑うケースがあります。そういうときに口頭だけで「ちゃんとこの人は力量があるんですよ」と説明しても説得力がありません。これこれこうした訓練を何年何月何日に行い、当社のスキルマップでも力量あると評価しています、という証拠書類になります。お客さんや利害関係者に納得してもらうための材料でもあるので、しっかりと記録をとっておいていただきたいと思います。
つまり何かあったときにちゃんとやっていると説明するための証拠書類になるということですね。力量の記録をちゃんととっておくと、他にもっといいこともあるんですよね。
スキルマップのようなものを作っていると、「次はこの人にこういう力量を習得してもらいたいな」と将来的な教育訓練の計画を立てる上でも役立ちますし、「次はこれに挑戦してみてはどうかね?」と上司が部下に勧めるためのコミュニケーションのツールにもなりえます。力量関係の書類は、ISOのためだけの書類にとどまらず、いろんな活用方法が考えられますので、しっかりと作っていただければと思います。