おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
環境法令解説シリーズ、今日は省エネ法と温対法について、その違いを中心にざっくりと解説をしたいと思います。省エネ法と温対法ってよく似ているんですけれども全く違う法律です。今日はの主だった違いについて解説をしたいと思います。
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法の成立・目的・対象となる物質の違い
省エネ法と温対法の違いを、こうした表で比較しながら解説をしていきたいと思います。
まず左側が省エネ法なんですが、これは正式名称が「エネルギーの仕様の合理化等に関する法律」といいます。昭和54年に始めて制定されたものでした、オイルショックを契機に作られた法律ですね。一方の温対法は、地球温暖化対策の推進に関する法律」といいます。これは平成10年に制定されたものでして、1997年12月に京都で開催された気候変動枠組条約第3回締約国会議(いわゆるCOP3)をきっかけとしてできた法律です。
できた経緯が違うので、目的も違うんですよね。省エネ法の目的は、エネルギー使用の合理化・電気需要平準化であるのに対して、温対法の目的は、温暖化防止・温室効果ガスの排出抑制です。ところで、温対法は、2021年6月に改正されたときに「2050年までの脱炭素社会の実現」を基本理念として法律に位置付けられました。
対象となる物質も微妙に違います。省エネ法では、燃料(石油製品・天然ガス・石炭製品)、燃料を熱源とする熱・電気であり、エネルギー全体を対象としているのに対し、温対法では、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素等の温室効果ガスを対象としています。
適用対象事業者と対象者の義務の違い
法の適用対象となっている事業者は、似ている部分があります。まず省エネ法は、エネルギーを使用する者全ての事業者に努力義務があります。当社みたいな一人株式会社でも、努力義務の対象なんですよね。そのうえで、一定規模以上の事業者には、努力義務のほかに、果たさなければならない義務が課せられます。一定規模以上とは、原油換算で、年度あたり合計1,500kl以上を使用する事業者(特定事業者といいますが)、こうした企業には義務があります。
原油換算で年度あたり合計1,500kl以上というのは、法人格が基本になっています。なので、子会社も別の法人格を持っているならば、別事業者扱いですね。ただし、役所の認定を受ければ、子会社等も含めて一体的に義務の履行を行うこともできます。というように、事業者(法人格)単位の全体で1,500kl以上使用するというのが、特定事業者にあたる原則なんですが、特定事業者の中でも、個別の工場・事業場のエネルギー使用量によって、管理の義務がさらに異なってきますので注意をしてください。
温対法の対象事業者も、実は省エネ法上の特定事業者などが対象になっています。それだけではなく、非エネルギー起源のCO2及び6種の温室効果ガス排出事業者(二酸化炭素換算で年3,000t以上使用して、かつ、常時使用する従業員が21人以上の事業者)も対象です。非エネルギー起源のCO2ってなんだ?って思いますが、これは工業プロセスの化学反応で発生・排出されるものや、廃棄物の焼却で発生・排出されるものなどが該当します。
対象事業者の義務を見てみましょう。省エネ法のほうが義務が多くあります。どういう事業者なのかによっても義務は変わるのですが、特定事業者等の場合は、エネルギー管理者等の専任義務、エネルギー使用状況等の定期報告義務、中長期計画の提出義務などがあります。一方、温対法は温室効果ガス算定排出量を事業所管大臣に毎年報告する義務があります。温対法は報告義務だけですね。
報告書提出先と罰則の違い
報告書の提出先も微妙に異なります。省エネ法の場合は、経産大臣と事業所管大臣に提出する必要があります。温対法は事業所管大臣だけでOKですね。実は、省エネ法の定期報告書の中でも、温室効果ガスの排出量の報告が求められているんですよ。なので、エネルギー起源二酸化炭素しか排出してません、という企業の場合は、省エネ法の定期報告書を経済産業大臣と事業所管大臣に提出すれば、これを温対法上の報告とみなしてもらえます。別々に提出する必要がないということですね。ただ、エネルギー起源だけではなく、非エネルギー起源のCO2も排出している場合は、省エネ法の定期報告書だけではだめで、温対法の報告書の提出も必要ということです。このへん、ちょっとややこしいですね。
罰則も当然にあります。省エネ法のほうがきつい罰則がたくさんありますね。一部だけ紹介しますが、エネルギー使用状況届出書、定期報告書、中長期計画書の未提出・虚偽の報告の場合は、50万円以下の罰金。エネルギー管理統括者、エネルギー管理企画推進者、エネルギー管理者、エネルギー管理員を専任しなかった場合は、100万円以下の罰金。そしてエネルギーの使用の合理化への取組が著しく不十分であり、国による勧告、公表、命令に従わない場合は、100万円以下の罰金等、様々な罰則があります。一方、温対法は、温室効果ガス算定排出量の報告違反(つまり虚偽の報告したり、または報告しなかった場合には、20万円以下の罰金となっています)