おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
8月29日、金融庁は、2023事務年度の金融行政における重点課題および金融行政に取り組む上での方針を、「金融行政方針」として公表しました。この資料を読むと、金融機関による中小企業の支援のあり方について金融庁がどう考えているのかがわかります。2回にわたって解説をします。(今回は「2.事業者の持続的な成長を促す融資慣行の形成」を解説)
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【2023 事務年度金融行政方針】金融機関による中小企業支援の方向性を読む(1)
おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。 8月29日、金融庁は、2023事務年度の金融行政における重点課題および金融行政に取り組む上での方針を、「金融行政方針」として公表しまし ...
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(1) 経営者保証に依存しない融資慣行の確立
経営者保証は、スタートアップの創業や思い切った事業展開、円滑な事業承継、早期の事業再生等の阻害要因となっている面がある。金融機関による経営者保証への安易な依存をなくし、事業者の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に繋げていくべく、「経営者保証改革プログラム」(2022 年 12 月公表)の実行を推進する。
具体的には、金融機関が保証契約締結時に事業者・保証人に文して保証契約の必要性等を個別具体的に説明した件数や、金融機関における「経営者保証ガイドラインの浸透・定着に向けた取組方針」の公表状況等を把握していく。
くわえて、金融庁に新たに設置した「経営者保証ホットライン」に寄せられた事業者からの声等も踏まえ、必要に応じて、金融機関に対する特別ヒアリングを実施する。
経営者保証の改革は長年続いてきていて、最近では経営者保証だけではなく、物的担保や第三者保証の割合も減ってきていると聞いてます。こうした融資慣行が変化してきているのは、長年の取り組みの成果といえるでしょう。その方向性を変えることなく、今後も進めていくという内容です。
(2) 事業全体に対する担保権の早期制度化
幅広い事業者に対し、その持続的な成長を促すような資金提供が実施されるためには、不動産等の有形資産担保や経営者保証等に安易に依存するのではなく、事業者の実態や将来性を的確に理解し、その特性に着目した融資を行う必要がある。
こうした観点を踏まえ、金融審議会「事業性に着目した融資実務を支える制度のあり方等に関するワーキング・グループ」報告(2023年2月公表)では、事業者の知的財産・無形資産を含む事業全体に対する担保制度(事業成長担保権)の創設や、金融機関における人的投資や態勢整備等の検討の必要性が示されている。本報告を踏まえ、関係省庁とも連携し、関連法案を早期に提出することを目指すとともに、事業成長担保権の制度趣旨に関する金融機関や事業者等の理解促進に取り組んでいく。
「不動産等の有形資産担保や経営者保証等に安易に依存するのではなく、事業者の実態や将来性を的確に理解し、その特性に着目した融資を行う必要」というのは、いわゆる事業性評価融資のことでしょう。昔はリレーションシップバンキングなどと言っていましたが、東日本大震災やリーマンショックによって金融円滑化法が制定されると、鳴りを潜めてしまいました。その後、復活の兆しもありましたが、コロナ禍でまた鳴りを潜めた感があります。経営者保証改革と違い、こちらは長年の取り組みにも関わらず、あまり成果が上がっていないような印象があります。
現行の担保制度に限界があることも理由ですが、事業性評価融資を進めるには、金融機関担当者がコンサルのような役割を果たす必要があり、これも結構難しいのだと思います。コンサル歴20年弱のぼくでも、無形資産の価値や事業の将来性、経営者の姿勢などについて評価をするのは難しいもんですよ(お前なんかと一緒にするなと言われそうですけど)。
今回の事務年度金融行政方針を見ていると、どうも金融機関における人的投資や態勢整備等に関しても、何らかの手立てが講じられるようにも読めます。果たしてどうなっていくんでしょうかね。