おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
日本の製造業が戦後復興するきっかけをつくったことで有名なW.E.デミング博士は「数値目標の設定をやめなさい」と言っています。これはどういうことなんでしょうか?3回にわたって、数値目標のデメリットを解説をします。
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前回までの記事はこちら
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まだ数値目標なんて立ててるの?数値目標の落とし穴(1)
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数値目標が不正を招く
数値目標がマイナスに働くと、不正行為につながることがあります。例えば2023年に起きたビッグモーターの不祥事は、過度な収益目標が現場のプレッシャーとなって、不祥事につながったと言われています。
㈱ビッグモーターに対する特別調査委員会調査報告書(2023年6月26日)には、次のような報告がなされていました。
アット(車1台あたりの修理費用)を基準としてBP部門の営業目標を設定し、買取・販売部門と同様の利益至上主義ともいうべき経営方針をとることは、根本的に誤っているといわざるを得ない。
㈱ビッグモーターに対する特別調査委員会調査報告書(2023年6月26日)
また2024年には、豊田自動織機が自動車エンジンの認証試験に関する不正を起こしたことが明らかになりました。開発に関する数値目標が満たせなくなったので、試験データの改ざんを行ったようです。
こちらも㈱豊田自動織機に対する 特別調査委員会調査報告書(2024年1月29日)の一部を見ていただきましょう。
排出ガスの測定値が規制値や開発目標値を満足できないなどの問題状況に直面することとなり、その時点で既に再度の劣化耐久試験を行うなどの時間的な余裕はなかったため、(中略)試験データの書換え等の不正行為が行われた。
㈱豊田自動織機に対する 特別調査委員会調査報告書(2024年1月29日)
このように、目先の目標達成に強く動機づけられると、法律や職業倫理といったものでさえも蔑ろにされてしまうんですから、目標というのは本当に怖いものです。
数値目標を上から目標を下に展開して、現場に押し付けることはもってのほか
とはいえ「数値目標は必要じゃないか」という声があるのも確かでしょう。数値目標は、場合によっては株主などの外部の利害関係者によって求められる場合もあります。経営者としてはその目標を受け入れざるをえない場合もあるでしょうね。ただデミング博士は、このように無批判に、上からの目標を下に展開して、現場に押し付けることがダメだと言っているのだと私は解釈しています。
こうなってしまうと現場第一線の人が全ての責任を負うことになってしまいます。そしてプレッシャーから逃れるために、手抜きや不正に走ってしまうわけです。このように数値目標を何も考えずに現場に展開するのは、現場担当者の「誇り」を損なう障害物になると、デミング博士は言っています。
なおデミング博士は「数値目標をやめろ」と言っていますが「数字を一切使うな」とは言っていません。数字は、生産性や品質向上を妨げる要因を分析することなどに使うべき、と言っています。
これはどういうことでしょうか?次回(明日)に解説します。