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「多重チェックでエラーは防げる」の誤解

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おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。

先日、ツイッターで「トリプルチェックの弊害」という投稿がバズっていました。チェックを多重にする(ダブルチェック、トリプルチェック)ほどにエラーの検出率が高くなると思いがちですが、これには誤解があります。

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「トリプルチェックの弊害」

バズっていたのはこのツイートですね。

トリプルチェックが有効でない理由を、非常によく表した投稿だと思います。この投稿のようにチェックを3人で行うと、一人当たりの責任が薄くなります。責任が薄くなると「自分でなくても誰かがやってくれるだろう」という気持ちになり、チェックに対するモチベーションが低下します。

このことは心理学実験でも明らかにされており「社会的手抜き」とか「リンゲルマン効果」「フリーライダー(ただ乗り)現象」と呼ばれます。

多重チェックに効果がないという科学的な証明はあるのか

心理学上の理屈の上では「社会的手抜き」というのはあり得るでしょうが、実際に多重チェックに関して、効果がないという科学的な証明はあるのでしょうか。これについては下記のような研究(島倉大輔・田中健次(2003):人間による防護の多重化の有効性、「品質」、33、〔3〕、104-112。)があります。

実験では、複数人が間仕切りのある机に一列に並び、封筒に印刷された宛名などを順に確認する作業を課しました。封筒にはわざと印刷ミスのあるものを混ぜておきます。確認作業は、封筒に印刷された郵便番号、住所、氏名の3項目を、あらかじめ配布されている住所録と照らし合わせて、正しいかどうかをチェックするものです。被験者は多重度1(1人のチェック)から、多重度5(5人のチェック)までの5段階のグループに別れ、各グループ20組で実験しました。

もちろんこれは1つの実験例であり、2重が一番良いと結論付けることはできません。重要なことは、状況によっては3重、4重にすることが逆効果になる可能性もあるということです。

「多重チェックでエラーは防げる」に関する僕の経験

5年ほど前に目標管理制度の推進支援をしていた会社でのことなのですが、そこの営業部の目標に「作業指示書の記入ミス減少」という目標がありました。製造部門に出す指示書を、その会社では注文を受けた営業担当者が記入していました。ところが記入ミスが多く、製造部門から「ちゃんと書き直せ」と突き返されたり、誤ったまま製造をしてしまい、不良品となるケースがありました。その企業では対策として、作業指示書のトリプルチェックをしていました。

ところが、トリプルチェックをしても記入ミスは防げません(製造部門までミスのまま流出してしまう)。もっとチェックを手厚くし、四重チェックようと思っていると営業部門長が言いました。しかしそこまでチェックを手厚くすると、本来の営業をする時間がなくなるというジレンマがありました。その時、以前より多重チェックに意味はあまりないと思っていた僕は、ここぞとばかり「騙されたと思って、シングルチェックに頻度を落としませんか?」と提案しました。

当然、営業部門長やその会社の社長から、チェック回数を減らすことに懸念の声が上がったのですが、「実験的に1カ月でもいいから」ということでシングルチェックにしてみました。シングルチェックでも流出する記入ミスの割合は変わりませんでした。チェックの手厚さが対策にならないとわかったこの会社では、別の方法(指示書の簡素化、定型化、教育訓練の充実)などに目を向けるようになりました。

多重チェックには負担が伴います。時間も人手もかかりますし、チェックが終わらないと次工程に進めないという点では、チェック自体がボトルネック化する可能性があります。人手不足のこの時代では、多重チェックをする余裕がそもそもありません。それを押し切ってまでも多重チェックにすると、負担により工程にゆがみが生じるだけではなく、エラー流出そのものも増えてしまいかねません。

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