おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
4月28日、参議院本会議において、いわゆる「フリーランス新法」(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が成立しました。当社も一人法人なので「特定受託事業者」に該当するのですが、結構重要な法律なので、法案の全文を読んでいきたいと思います(第2回目)
スポンサーリンク
過去記事はこちら
-
フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)の全文を読む(1)
おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。 4月28日、参議院本会議において、いわゆる「フリーランス新法」(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が成立しました。当社も ...
続きを見る
第三条 特定受託事業者の給付の内容その他の事項の明示等
第三条から第十一条は特定受託事業者に係る取引の適正化(「フリーランス」に仕事を委託する場合の取引条件はなにか)についての章です。第三条は長いので、いくつかのパートにわけて解説をします。まずは最初のパートです。
第三条 業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより、特定受託事業者の給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面又は電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって公正取引委員会規則で定めるものをいう。以下この条において同じ。)により特定受託事業者に対し明示しなければならない。
ここでは主語が「業務委託事業者」です。第二条の定義では、「業務委託事業者」は「フリーランス」に業務委託をする事業者、そして「特定業務委託事業者」は「業務委託事業者」のうち従業員を有する事業者という定義でした。したがって第三条は、フリーランスに業務委託をするフリーランスも義務を負います。
「公正取引委員会規則」というのは、2023年5月現在ではまだ定められていないのだと思われますが、おそらく下請法における「第3条の書面の記載事項等に関する規則」のようなものが定められるのだと思います。そこでは、書面にどんな事項を明確に記載しなければならないのかが明記されると思われます(下請法でいうところの、いわゆる「三条書面」)。
ただし、これらの事項のうちその内容が定められないことにつき正当な理由があるものについては、その明示を要しないものとし、この場合には、業務委託事業者は、当該事項の内容が定められた後直ちに、当該事項を書面又は電磁的方法により特定受託事業者に対し明示しなければならない。
第三条の続きです。これは下請法にも同じような記述がありますが、発注時に発注内容が定まらない正当な事由がある場合は、決まっている事項だけを記載した当初書面を交付し、内容が定まった後に追加して補充書面を交付すれば良いということです。
2 業務委託事業者は、前項の規定により同項に規定する事項を電磁的方法により明示した場合において、特定受託事業者から当該事項を記載した書面の交付を求められたときは、遅滞なく、公正取引委員会規則で定めるところにより、これを交付しなければならない。ただし、特定受託事業者の保護に支障を生ずることがない場合として公正取引委員会規則で定める場合は、この限りでない。
続いては第三条第二項です。これは下請法にはない、フリーランス新法の独特の条文ですね。要は、発注者が電磁的方法(メール等)により明示を行った場合でも、フリーランス側から「書面でちょうだい」と求められたときは、原則として書面で交付する必要がある、というものです。これはおそらくですが、クラウドソーシングサービスのように、ネットで記載事項の明示が完結するような場合を想定しているのだと思われます。そうした場合も、フリーランス側からの求めがあれば、発注側は書面を発行しなければならない、ということでしょうね。このあたりは発注側にとっては負担の種になりそうです。
第四条 報酬の支払期日等
第四条 特定業務委託事業者が特定受託事業者に対し業務委託をした場合における報酬の支払期日は、当該特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず、当該特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日(第二条第三項第二号に該当する業務委託をした場合にあっては、特定受託事業者から当該役務の提供を受けた日。次項において同じ。)から起算して六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。
まず第四条第一項です。主語が「特定業務委託事業者」ですので、フリーランスではない(つまり従業員がいる)発注者側に対する義務です。
これは下請法にも同じ条文があります。フリーランスが納入したものは、発注者側で社内検査をする・しないにかかわらず、受け取った日から60日以内に支払期日を定め、支払わないといけないということです。起算日や「毎月末日納品締切、翌月末支払い」あたりにするのが安全だろうと思います。
なおこの条文は検査をする・しないに関わらず適用されるので、検収締切制度をとっている発注側は、知らぬ間にフリーランス新法に違反しやすいので気をつけなければなりません。また、自社の事務処理遅れやフリーランスからの請求書の提出の遅れも理由にはならないでしょう。
2 前項の場合において、報酬の支払期日が定められなかったときは特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日が、同項の規定に違反して報酬の支払期日が定められたときは特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日から起算して六十日を経過する日が、それぞれ報酬の支払期日と定められたものとみなす。
これも下請法と同じですが、支払期日を定めなかった場合は、発注側がフリーランスから物品等を実際に受領した日が支払期日と定められたものとみなされます。また支払期日を、物品等を受領してから60日を超えて定めた場合は、発注側がフリーランスから物品等を受領した日から起算して60日を経過した日の前日(60日目)が支払期日と定められたものとみなされます。
3 前二項の規定にかかわらず、他の事業者(以下この項及び第六項において「元委託者」という。)から業務委託を受けた特定業務委託事業者が、当該業務委託に係る業務(以下この項及び第六項において「元委託業務」という。)の全部又は一部について特定受託事業者に再委託をした場合(前条第一項の規定により再委託である旨、元委託者の氏名又は名称、元委託業務の対価の支払期日(以下この項及び次項において「元委託支払期日」という。)その他の公正取引委員会規則で定める事項を特定受託事業者に対し明示した場合に限る。)には、当該再委託に係る報酬の支払期日は、元委託支払期日から起算して三十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。
これは下請法にはない条文です。再委託について定めています。例えばuber eatsの配達員はこの条文が関係しますが、飲食店が元委託者、uber社が特定業務委託事業者、配達員が特定受託事業者(フリーランス)という関係ですね。この例を使って説明すると、uber社から配達員への報酬の支払期日は、元委託に係る対価の支払期日(つまり飲食店からuber社への支払期日)から起算して30日の期間内で、かつ、できる限り短い期間に設定する必要があります。
4 前項の場合において、報酬の支払期日が定められなかったときは元委託支払期日が、同項の規定に違反して報酬の支払期日が定められたときは元委託支払期日から起算して三十日を経過する日が、それぞれ報酬の支払期日と定められたものとみなす。
第三項で、再委託先への支払期日(例えばuber社から配達員への支払期日)が定められなかった場合、支払期日は元委託に係る対価の支払期日(つまり飲食店からuber社への支払期日)から起算して30日目とみなす、ということですね。
5 特定業務委託事業者は、第一項若しくは第三項の規定により定められた支払期日又は第二項若しくは前項の支払期日までに報酬を支払わなければならない。ただし、特定受託事業者の責めに帰すべき事由により支払うことができなかったときは、当該事由が消滅した日から起算して六十日(第三項の場合にあっては、三十日)以内に報酬を支払わなければならない。
第五項は、定めた期日までに支払いなさい、と言っているだけですね。「特定受託事業者の責めに帰すべき事由により支払うことができなかったとき」というのは、例えば天災などがあるでしょうかね。(天災の程度にもよるでしょうけど)
6 第三項の場合において、特定業務委託事業者は、元委託者から前払金の支払を受けたときは、元委託業務の全部又は一部について再委託をした特定受託事業者に対して、資材の調達その他の業務委託に係る業務の着手に必要な費用を前払金として支払うよう適切な配慮をしなければならない。
これは前払金については下請法には明記がありませんが、この条文は建設業法第24条の3第2項(下請代金の支払)によく似ています。建設業は多重請負構造になっていて再委託が当たり前のように行われているから、建設業法の条文を引いてきたのでしょうか。