おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
ISO45001:2018各箇条解説シリーズ、今回は箇条8.1.4「調達」について説明します。会社で調達や外注を行う時に、安全や健康面でリスクが生じる場合があります。そのようなリスクに調達段階でどのように対処すべきなのでしょうか?
スポンサーリンク
動画でも解説しています(無料・登録不要)
前回までの記事はこちら
-
ISO45001:2018 8.1.4 その調達や外注が事故の原因に?調達プロセスの安全対策(1)
おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。 ISO45001:2018各箇条解説シリーズ、今回は箇条8.1.4「調達」について説明します。会社で調達や外注を行う時に、安全や健康面 ...
続きを見る
-
ISO45001:2018 8.1.4 その調達や外注が事故の原因に?調達プロセスの安全対策(2)
おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。 ISO45001:2018各箇条解説シリーズ、今回は箇条8.1.4「調達」について説明します。会社で調達や外注を行う時に、安全や健康面 ...
続きを見る
箇条8.1.4.2「請負者」
続いて8.1.4.2です。この規格要求事項は、請負者に関するものですね。
請負者とは、我が社にサービスを提供する外部の組織のことです。例えば清掃業者やメンテナンス業者、廃棄物の収集運搬業者のほか、我が社の機能やプロセスの一部を外注する機械加工業者や熱処理業者なども請負者に含まれます。こうした請負者は、我が社の現場に出入りする可能性が高いので、事故を防ぐ管理が必要なんですね。
最初の一文では、危険源を特定し、リスク評価をして、請負者と調整するよう求めています。。請負者に関する危険源はa)からc)に記載されていますが、具体的に見てみましょう。このa)~c)は、下の図をイメージしながら読んでいただくと、理解がしやすいでしょう。
まずa) 組織に影響を与える請負者の活動及び業務です。このケースでは、請負者である清掃業者がモップで床を拭くことで、濡れた床という危険源となり、従業員が滑って転ぶリスクがあります。
次のb)は、請負者の働く人に影響を与える組織の活動及び業務です。このケースでは、組織内で稼働中の機械設備という危険源となり、清掃員が機械に巻き込まれるリスクがあります。
そしてc)は、職場のその他の利害関係者に影響を与える請負者の活動及び業務です。これも濡れた床という危険源によって、来客が滑って転ぶというリスクがありますね。
このように、請負者の活動が引き起こす危険源やリスクを特定して管理することが求められています。
8.1.4.2の後半では、ポイントが2つあります。まず、我が社が請負者を選んで仕事を頼むとき、その業者と従業員が、我が社の安全ルールをきちんと守ることを確認する必要があります。具体的には「清掃中は『滑りやすいので注意』と書かれた看板を立てる」といったルールを請負者に伝えたり、その通りに実施しているかどうかを点検することが考えられます。
次の点は、請負者を選ぶときには、安全のための基準をしっかりと決めて、その基準に従って業者を選ぶことが求められています。例えば、清掃業者が定期的に従業員に対して安全教育を実施しているか、過去の事故歴や安全パフォーマンスが良好かといった点が基準になるでしょう。
ISO45001における外部委託と請負の違いは何か?
よく「外部委託と請負の違いは何か?」と聞かれます。規格にある用語の定義には、以下のように定義をされています。
請負者:合意された仕様及び契約条件に従い、組織にサービスを提供する外部の組織(3.7)
外部委託:ある組織の機能又はプロセスの一部を外部の組織が実施するという取決めを行うこと(3.29)
簡単に言えば、我が社の機能やプロセスの一部を外注するのが外部委託で、サービスを提供するのが請負です。つまり、外部委託業者は請負者でもありますが、すべての請負者が外部委託業者とは限りません。ここはとてもわかりにくいんですが、実務上は、請負と外部委託をほぼ同じものと考えて、すべての外部から受けるサービスを管理の対象にして、8.1.4.2と8.1.4.3の両方を含めた管理をするのが望ましいと思います。ただし、どの程度の管理をするかは、リスクなどに応じて個別に決めるのがよいでしょう。
外部委託と請負の違いについては、以下のリンクのISOのTC283の見解を参考にしてください。(余計にわかりにくくなるかもしれませんが……)
箇条8.1.4.3「外部委託」
この定義を踏まえて、箇条8.1.4.3を読んでいきましょう。
最初の一文では、外部委託した機能やプロセスで労働安全衛生上の問題が起きないように管理することを求めています。そして次の一文では、我が社が他の会社に仕事をお願いする際、その仕事が、法律や我が社のルールに適合して、安全に働けるようにすることを求めています。
ポイントは二つあります。一つ目は、法的要求事項に整合していることです。たとえば、建設業では労働安全衛生法が発注者や元方事業者の責任を定めており、これらを守る必要があるということです。二つ目は、労働安全衛生マネジメントシステムの意図した成果を達成するために、安全を守る計画や手順書を作成し、教育やチェックをするなどして、管理することですね。
最後に、外部委託先の管理方法やその程度を決める必要がありますが、これは労働安全衛生上のリスクや外部組織の能力に応じて決めることになります。そして、決めた管理方法や程度は、手順書やチェックリストに落とし込んで明確にするのがよいでしょう。