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事業再構築補助金の根抵当権についての解釈を事務局に聞いてみた&個人的考察

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おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。

事業再構築補助金公募要領26ページに「根抵当権」に関する記述がありますが、業界界隈ではちょっと議論になっています。ネットにはいろんな情報がありますが、僕は僕で事務局に確認をしてみましたので、その結果を共有します。

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そもそも「根抵当権」とはなにか

まず「抵当」というのは、お金を借りる際の担保のことで、一般的には不動産が担保になるケースが多いです。「抵当権」というのは、お金を借りた人が返済できないときに、担保の経済的価値(土地の価格等)から優先的に弁済を受ける権利のことです。

抵当権には大きく分けて「普通抵当権」と「根抵当権」の2つがあります。普通抵当権は、1つの融資の契約に対して1つの抵当権の設定をするものです。例えば普通抵当権を設定して土地を担保にお金を1千万円借りたとします。この1千万円は返済すれば抵当権は抹消されます。同じ土地を担保にしてもう一度融資を受けようと思えば、また別の融資の契約を結び、抵当権の設定をする必要があります。一方で根抵当権は、上限額(極度額といいます)までであれば何度でも融資の契約を結ぶことができるというものです。例えば、土地に根抵当権を設定して、上限額(極度額)3,000万円の設定がされた場合、その範囲内であればいくつ融資の契約をしてもOKです。根抵当権の場合、融資を完済しても根抵当権は抹消されません。

なぜこんな違いがあるかというと、普通抵当権を設定する場合、契約・抵当権の設定都度、登録免許税を払わないといけないし、手続きも何度もしないといけないので、一括で抵当権を設定したほうが何かと便利だからだとよく説明をされます。僕も多くのケースを知っているわけではありませんが(というか製造業のケースしか知らない)、一般的に抵当権を設定するとなると、根抵当権を土地や建物に設定しているケースのほうが多いのではないかと思います。

事業再構築補助金公募要領26ページ⑦には何が書いてあるか

上記の基礎知識を頭に入れた上で、事業再構築補助金公募要領26ページ⑦にはどんな事が書いてあるか見てみましょう。

補助事業により建設した施設等の財産に対し、抵当権などの担保権を設定する場合は、設定前に、事前に事務局の承認を受けることが必要です。補助事業遂行のための必要な資金調達をする場合に限り、担保権実行時に国庫納付をすることを条件に認められます。なお、補助事業により整備した施設等の財産に対して根抵当権の設定を行うことは認められません。

まず前段の「補助事業により建設した施設等の財産に対し、抵当権などの担保権を設定する場合は、設定前に、事前に事務局の承認を受けることが必要です。補助事業遂行のための必要な資金調達をする場合に限り、担保権実行時に国庫納付をすることを条件に認められます」というのは、普通抵当権のことを指していると思われます。普通抵当権の場合は補助事業遂行のための必要な資金調達をする場合に限って担保設定が可能です。ただし担保権実行時、つまり銀行が土地や建物を回収したり、不動産競売にかけられたりする時には、補助金を返さないといけないということですね(いくら返すのかまでは公募要領には書かれていません。なにかで決められているのかもしれませんが、そこまで調べていません)。

そして問題の後段の部分です。「なお、補助事業により整備した施設等の財産に対して根抵当権の設定を行うことは認められません」とあります。これを素直に読むと、補助金で取得する建物や機械装置等に根抵当権を設定してはいけない、と解釈したくなるのが普通ではないかと思います。しかしここからが問題で、この一文を素直に読むだけでは実は不十分です。(詳しくは下記に説明します)

事務局に電話して聞いてみた

まずは事務局の見解を確認しましょう。僕が事務局コールセンターに電話をして聞いてみました。9/14 9:00に電話をし、○○氏が対応をしてくださいました(名前は伏せますが、応対は記録されているはずなので、日時と氏名がわかっていれば何かあったときにトレースできるはずです)。僕が聞いたことと、それに対する回答は下記の点です。ただしこの質問と回答は、こちらの意図したことがどの程度相手に正しく解釈されたのかによるので(当方の伝達能力のまずさも含めて)、同じ質問をしたとしても別の人が答えた場合には違う回答になる可能性を考慮に入れてください。

1.補助金で取得する建物をたてる土地に根抵当権が設定されていると交付決定できないのか?(建物には根抵当権はつけない)

回答→交付申請までに土地の根抵当権を外す必要がある。外すことができないと建物は建設できない

2.交付申請するのが機械装置等だけの場合、根抵当権が設定されている土地・建物に、抵当権を設定しない機械装置を設置することは問題ないか

回答→この場合は根抵当権・抵当権に制限はない。設備の導入は可能

3.補助金の申請企業が賃貸物件に入っているとする。賃貸物件の持ち主(オーナー)が、その物件(申請企業が入居している物件)に根抵当権を設定している場合も、建物建設や改修は交付決定できないのか?

回答→交付申請までに根抵当権を外す必要がある。

4.根抵当権の設定の有無は、申請時に申告する必要があるのか。それとも中間検査等の別のなにかの方法で確認されるのか

回答→最初の申請の際に事業計画書に記載する必要がある。(「いまのところ根抵当権はついているが外す」とか、「土地・建物には根抵当権がついているが機械装置にはつけない」等を記載すべきとのこと)

というわけで、根抵当権が設定されている土地(補助金の対象ではない)に、根抵当権をつけない建物を補助金で改修・建設していると交付決定をしないとハッキリと回答されました。「こんなこと公募要領や交付規定に書いていないじゃないか」と思いますが、これの理由として推測されることは後述します。結論からいうと「よくわかりません」という回答なのですが。

ただ、公募要領のかきっぷりだけでここまで想像して解釈できる人は、相当に法律や融資業務、登記業務に熟知している人でしょうから、誤解がないようにはっきりと公募要領や交付規定に書くべきことだと思います。

なぜ「根抵当権」がダメなのか

そもそもなぜ補助事業により整備した施設等の財産に対して「根抵当権」を設定するのがダメなのでしょうか。このヒントは補助金適正化法という法律にあります。補助金適正化法第22条では明確に、「補助金等の交付の目的に反して担保に供すること」を禁じています。

補助事業者等は、補助事業等により取得し、又は効用の増加した政令で定める財産を、各省各庁の長の承認を受けないで、補助金等の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供してはならない。 ただし、政令で定める場合は、この限りでない。

(補助金適正化法第22条)

補助事業で購入する資産に根抵当権の設定をするのは「補助金等の交付の目的に反する可能性がある」と言えます。例えばですが、補助金で購入した建物に根抵当権を設定したとして、その補助事業とは関係のない運転資金などの調達や、別の設備資金の調達にも使えるわけですからね。その点では、補助金で購入した建物や設備等に根抵当権を設定するのが「補助の目的外」というのは理解できなくはありません。根抵当権がついている建物を改修(=増築)した場合は、増築部分が建物としての独立性を有しない場合には、抵当権の効力は増築部分にも及ぶという判例もありますから、これも「補助の目的外」に該当する可能性は濃厚そうです(ただし改修部分が独立性を有する場合はまた違った話になるのではないかと思いますが)。

根抵当権が設定されている土地(補助金の対象ではない)に、建物を補助金で建設・改修することまでダメとするのも、よく理解できないんですよね。土地と建物の共同抵当が一般的だから、という理由かもしれないけど、一律にダメとまで言える根拠(それも法的根拠)がよくわかりません(僕が知らないだけだろうと思うので、今度弁護士にちゃんと聞いておきます)。競売になったときのことを想定しているのかもしれませんが、万が一競売で土地とともに補助事業の対象物である建物まで売られてしまうような場合には(民法389条)、普通に補助金の制度でもある財産処分の申請をして、国庫納付すればいいだけでは?という気もします(今度弁護士に聞いておきます)。だから競売だけではない何か他にも理由があるのだろうと思いますが、アホな僕にはこれ以上はわかりません(前述のように土地と建物の共同抵当が一般的だからという理由か、もしくは「いろいろケースがあってややこしくてめんどうくさいから一律にダメ」という理由なのか)。

また、根抵当権のついた土地・建物に、抵当権のない機械装置を設置することはいいの?というのも気になるかもしれません。機械装置は、民法370条でいうところの付加一体物ではないということなんでしょうかね(これも今度ちゃんと弁護士に聞いてみます)。

しかし事業再構築補助金の事業の目的(公募要領P1)は「ウィズコロナ・ポストコロナの時代の経済社会の変化に対応するため~の支援」なのですから、中小企業が生き残りをかけた取り組みを支援するということを優先してほしいと個人的には思います。コロナ禍という緊急事態において、適正化法という平時の法律を杓子定規に適用せずに、中小企業の実態にあわせて例外を政令で定め、少しでも多くの企業を支援すればいいじゃないかって思います。

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